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「竹取の」  作者: mofmof
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「竹取の」第2夜<既朔>

挿絵(By みてみん)

 朝目が覚めると朝日がカーテンの隙間から差し込んでいた。わたしはベッドから起き上がるとそっと窓に近づいて、恐る恐るカーテンを開いてみた。はたしてそこには昨日の奇妙な生き物はもういなかった。

 夢だったのかな。……に、してもリアルな夢だったなぁ。とても幸福な夢とは言えない。

 時計を見るとまだ6時前だった。昨日半端に終わらせた、単語チェックの続きをしよう。にしても、昨夜のあれは何だったのだろう。夢にしてはリアルすぎるし、わたしにその手の創作能力があるとは到底思えない。特にSF好きって訳じゃないし、発想力だってある方じゃないし。

 翻ってあれが現実だったとしたら、ファンタジーすぎる。月面人とか言ってたような気がするけれど、つまり宇宙人ってこと? あり得ない。わたしは妄想を一蹴して、単語帳を開いた。

 けれど、なかなか集中することができなかった。どうしてもあの生物の姿が脳裏から離れない。わたしは頭を掻いた。

「顔洗ってこよう」

 わたしは階下に降りて、洗面所に向かった。階段を下りると、パパに鉢合わせした。パパもまだパジャマ姿だった。ちょうど玄関から新聞を取りに行った帰りだった様子。片手に新聞紙を持って寝癖のついた天パーの髪をかしかし掻いていた。

「おお、瑠璃。おはよう」

「おはよう」

 わたしはそっけなさそうに返事した。パパは嫌いじゃないけど、思春期特有のアレというか、パジャマ姿で鉢合わせした恥ずかしさというか、そのまま洗面所に駆け込んだ。

「随分早いんだな」

 パパはそのまま廊下に居座った。新聞を広げる音がする。洗面所の扉は閉まったままだったので、籠もった声が聞こえてきた。それなりに娘に気を遣っているつもりなのだろうか。数年前までなら、そのままづかづかと洗面所に入ってきて、お喋りと続けただろうけれど、何年か前にわたしがここでキレたことがあって、それ以来、わたしの部屋にも無断で入ることはなかった。

「英検」

 それでも、別に仲が悪いという訳でもなく、わたしはフツーに返事をする。

「そっかー。日曜なのに、大変だな」

 わたしはカチューシャで前髪をまとめてあげ、蛇口を捻った。額のニキビが少し増えてきたのが気になる。昨日チョコ食べ過ぎたせいかな。さっきまで目覚ましに軽く水を浴びる程度にするつもりだったのだけれど、わたしは洗顔料を取り出して泡を立て始めた。駅前に新しくできたコスメショップで買ってきたばかりのもので、自然の成分だけですから肌にいいんですよとにこやかに応対してくれたお姉さんが勧めてくれたものだ。説明書の通りに液体を手に取り、両手で撫でていくとすぐにふわふわの泡になった。

「パパこそ、今日日曜日なのに早いのね」

 わたしは泡を立てながら、扉の外で新聞を読んでいるパパに聞いてみた。いつもなら日曜日は昼間で寝ているのが習慣だから、お互い珍しい光景ではあるのだけれど、特に何かの返事を期待していた訳ではないけれど、そこでウロウロしているということは、何か話したいことがあるのかも知れないと思って、話を合わせてみた。

「ああ。今日は接待ゴルフなんだ。7時には家を出なきゃならない」

「そう。日曜なのに、大変ね」

 大量の泡をせっせと作りながら、わたしはオウム返しに答えた。撫でれば撫でるほど泡が立つ。少し楽しくなってきた。

 と、なんとなく作っていた泡が、まるで生き物のような形になって、夕べのあの月面生物のように見えてきた。

「ああん…もう」

 せっかく忘れかけてきたのに、またあの記憶が蘇った。わたしはその泡を両手で潰してそのまま顔に撫でつけた。

「ん?どうした?」

 パパの心配そうな声が聞こえたが、あわあわの顔では返事ができない。

「んーん」

 というのが精一杯。

「大丈夫か?」

 と言ったきり、パパは黙った。愛娘が心配なのは分かるけど、こんなとこで何かあったりはしないから、あんまり心配しすぎるのも困ったもので。わたしは急いで洗顔料で顔を洗って、水で洗い流した。その間、廊下ではウロウロする家主の物音がしているのをわたしはイライラしながら聞いていた。

「もう、大丈夫だってば!」

 さっぱりと泡を洗い流してからわたしはそう言った。タオル掛けからタオルをとってさっさと顔を拭いてから、カチューシャをつけたまま洗面所の扉を開いた。

「どうぞ」

 廊下でウロウロしている熊のような巨体にそう声を掛けた。パパは背中を丸めながら、

「あ、ああ……」

 と言って、所在なげにわたしと入れ替えに洗面所に入っていった。歯ブラシを取り出して歯を磨く音がした。

「あら?どうしたの?」

 わたしの声を聞いてか、ママが居間から顔を出した。

「あら珍しい、こんなに早くに」

 パパがゴルフに行くので、ママも早くに起きたのだろう。エプロン姿だった。

「目さめちゃって」

 わたしはタオルで顔を拭きながら答えた。

「英検、何時からだっけ?」

「1時。12時半に駅前で待ち合わせしてる」

 英検の会場は駅前にある市民会館で行われることになっている。ちーちゃん達とは余裕をみて30分前集合にしていた。それにしても、早く起きすぎた。

「パパと一緒に朝ご飯食べちゃう?そしたら、ママ助かるなぁ」

 部屋に戻っても集中できそうにないし、そうしようかな。

「わかった。食べる。ちょっと着替えてくるね」

「さんきゅー!」

 ママは陽気にそう言って、また居間に引っ込んだ。今朝はベーコンかな。香ばしいにおいがした。

 階段を上がりながら濡れた前髪を拭いた。

 わたしの家はいわゆるオーソドックスな日本の一般家庭。サラリーマンのパパとOL兼業主婦のママとわたしの3人暮らし。パパは自動車販売の営業マンで、ママは近くのスーパーでパートだけれど、マネージャーを任されている。わたしは今年3年生になったばかりの高校生。身長158センチ、背の順だと丁度真ん中くらいで、勉強も中の中。英語がちょっと得意なくらい。得意って言ったって、学年で上位に入ったことはない。高校も地元では中レベル。1年、2年の成績も「3」が綺麗に並ぶくらい中程度。引っ込み思案ではないけれど、特に社交的ってわけでもない。容姿だって、お世辞にも美人とは言えないけど、ブスと言われた記憶はない。極端に太ってはいないと思うのだけれど、二の腕と太ももがちょっと気になる程度にはスレンダーとは言えない。中学まで三つ編みにしていた髪の毛も、高校に入ってからはロングボブにした。中学の頃から視力が下がってきたから眼鏡を勧められて、でもなんとか裸眼で頑張ってみたんだけど、ついに去年から両親から強制的に眼鏡を与えられた。

 つまるところ、日本中のどこにでもいるような、極々フツーの女子高生なのがわたし、竹泉瑠璃たけいずみるり

 部屋着に着替えて居間に戻ると、パパは先に朝食をとっていた。今日はベーコンハムエッグ。わたしも食卓の席に着いた。そう言えば、3人揃ってゆっくり朝食なんて久しぶりかも。

「英検の準備はどうだい?」

 パパは新聞から目を離さずにそう聞いた。

「パパ、新聞逆さ」

 わたしは居間に入るときに慌てて新聞を取り上げたパパを目撃していた。さっき冷たい態度をとったから気にしてるのかしら。

「ああ…。そ、その…クロスワードパズルがな…」

 なんて、慌てて誤魔化したつもりみたい。

「どうかしら……あんまり自信ないけど。半々くらいかな。受かるかどうか。2級は高校卒業までにとれればいいって思ってるから、あんまり気にしてない」

「そうか。パパも、2級とったのは高校卒業してからだからなぁ。はっ、はっ、は」

 慰めているつもりなんだろうか、パパは乾いた笑いをした。

「ママは高校卒業する前にとったけどね」

 二人とも学生時代は英語がそこそこ得意だったと以前から聞いていた。ただ、得意と言っても、他の教科に比べればという程度だったみたい。ただ、若い頃は海外旅行に何度も行っていたこともあって、日常会話とかには不自由しないらしい。子供の頃、旅行のアルバムを何度も見せられたのを思い出した。

「そう言えば、今日はどなたとゴルフなの?」

 所在なさげにしているパパにママは助け船を出した様子。パパは新聞をテーブルに置いてにこやかに笑った。

「先日、うちの最高級車を買ってもらった作家さんだよ。浦城光太郎っていう」

「ああ、あの文豪さん?」

 ママは喜んでみせた。そう言えば、今年の春に久しぶりに臨時収入が入ったからって、お小遣いを奮発してくれたっけ。その人のおかげだったんだ。

「そうそう。『教会の秘密は地下にある』で有名な」

「ミステリー作家だったっけ?」

 わたしもその題名は聞いたことがある。確かわたしが子供の頃に映画化されたような気がする。

「そうそう。でも、ミステリー以外にもSFも沢山書いていて、古典文学をモチーフにしたものとか有名だよ。『源氏の君』とか、『竹取の翁の謎』とか」

 竹取の…。また嫌なことを思い出した。

「ああ、『源氏の君』は読んだことあるわ。舞台が未来で、光源氏が主人公のお話だったわよね? でも、結構昔の作品じゃない? 浦城光太郎っていくつの人なの?」

「それが意外に若いんだよ。そうだな…俺より5つくらい上くらいかな」

「ええ?そんなに若いの?わたし、確か高校生か大学生になったばかりの頃よ、それ読んだの」

「学生時代にデビューしたって聞いたことがある」

「へぇ、そうなんだ?」

「そんな有名人が、この近くに住んでるなんて、知らなかったわ」

「俺も来店の時は全然知らなくってさ、商談中に名前を聞いたら聞いたことあるなって調べたら、浦城光太郎だって分かって、驚いたよ

 盛り上がっている夫婦を横目にわたしは、コーンスープを冷ましていた。猫舌のわたしにはちょっと熱すぎた。

「ねぇ。あのさ…竹取の翁…って、かぐや姫の話?」

 本当はそんなこと聞くつもりじゃなかったのだけれど、ついつい聞いてしまった。

「そうだよ。かぐや姫のお話だよ。ただ、あれは、SFだったからね、全然違う話だけど。瑠璃、興味あるのかい?」

 パパは嬉しそうにそう聞いた。

「ううん…べつに」

 ようやく冷めたコーンスープに口をつけながら、わたしは答えた。これ以上は触れない方がいい。

「『竹取の……』って、どんな話だっけ?」

 わたしがうっかりその話にのってしまったので、今度はママが興味を示した。

「確か……竹取のおじいさんがかぐや姫を追って月に行くとかそんな話じゃなかったかな。実はかぐや姫が置いていった不死の薬を飲んで、月面旅行ができる時代まで生きていたとか、そんな話」

「若返ったおじいさん役を、キムジュンがやってた映画だっけ?」

「そうそう、それ!」

「結構映画化されてるわね」

「人気作家だからね。印税も凄いんだろうよ。今回の商談でも、すぱっと、現金払いだったからね」

「そんな凄い人にゴルフ誘われたの?」

「いや、誘ったのはこっちだよ。さすがに断ると思ったんだけど、快諾だったのさ。ゴルフ好きだとは聞いていたけど、車の営業マンなんかの誘いを受けるとは思わなかったな」

「じゃあ、頑張って、2台目も狙っちゃえば!」

「いや、さすがにそれはないだろう。でも、まあ、うまいことこうやって関係切れなければ、何年か後には……もしかしたら……」

 パパは顎に手をやって考え込んだ。パパの会社は外車を扱っているお店だと聞いたことはあるけれど、そんな有名人が来るようなところだったとは知らなかった。

「さて、そろそろ出かける準備するか」

 パパは意気揚々と立ち上がって。寝室に入っていった。

「パパ、ご機嫌ね」

 わたしはこっそり、ママに言った。さっき何か、物言いたげに廊下をウロウロしたりしてたり、食卓についてもそわそわしていたのは、その自慢をしたかったからなのかも知れない。それならそうと言えば良いのに。でも、自らそれを自慢しないパパは嫌いじゃない。

 わたしが朝食を食べ終わった頃、パパはゴルフバッグを背負って寝室から出てきた。体格がいいだけに見た目だけはプロゴルファーのようだった。スコアは知らない。

「いってらっしゃい」

 わたしが声を掛けると、パパは嬉しそうに微笑んで玄関に向かった。わたしは珍しく誇らしげにしているパパを見たのは本当に久しぶりだったかも知れない。わたしもそんなパパにほだされたのかも知れない、珍しく玄関まで出て行って、パパを見送った。何年ぶりだろう。

「頑張ってね」

 ママと一緒に手を振って見送った。


 朝食を片付けると、ママはスーパーに出勤するために準備を始めた。わたしは自室に戻って昨日の続きを始めた。夕べのことは忘れたわけじゃないけど、少し気持ちに余裕ができたような気がして、単語帳に見入った。それから11時過ぎまでそこそこ集中できた。ママが出て行ったのさえ気がつかなかったくらい。朝から順調な滑り出し。意外に今日はいけるかもって思ってた。

 けれど、部屋着からお出かけ着に着替えるまでに時間を要した。今日は私服であの人と会うと思うと、なかなか組み合わせを決めるのに手間取った。別にデートなわけじゃないから、そんなにおめかししていくわけにいかないけど、その辺のコンビニに行く時のようなラフな格好でも困る。できるだけ派手にならずに、でも嫌われない程度に。派手目は避けて、でも地味にならないように。元々派手ではないタイプだから、地味すぎると存在感がなくなっちゃうから。結局迷いに迷って、水色のブラウスにデニムのハーフパンツにした。快活さを出しつつ、清楚な感じを残したつもり。

 気がつけば、12時を少し過ぎたところ。お昼ご飯を食べてる時間はなさそう。ダッシュで向かえばなんとか間に合うくらいかな。急いで鞄に筆記用具と単語帳を詰めて、あ、っと、日差しも強そうだから、帽子も被って。急いで階段を下りようとして、一つ段を飛ばした。危ない危ない。お気に入りのローヒールパンプスを履いて、急いで鍵を掛けて家からダッシュした。

 ちーちゃんと亮くんはすでに駅前に着いていた。

「ごめーん、遅くなった」

「全然。まだ3分前だよー。わたしたちも今着いたばっかりー」

 ちーちゃんこと、京茅衣子けいちいこはわたしの姿を認めると、手を振りながらいつものように間延びした言葉遣いで返事した。

「初めから余裕で集合だからな。そんなに急がなくてもよかったのに」

 亮くんこと、段逆亮だんざかりょうは、トレードマークの黒縁の眼鏡を左手の中指で押し上げながら、いつものようにクールに言った。クールで端的な言葉だけれど、どこかで優しさがにじみ出ていた。わたしが額に汗をかいて来たのを見て、そう言ってくれたみたい。

「そもそも、女の子が遅刻してくるのは当たり前だし」

「えー、そんなことないよー。わたしはそんなに遅刻したりしないよー」

「ちいは、遅刻しない代わりに迷子になるからな。人一倍目的地に着くまでに時間がかかる」

「それでもちゃんと時間通りに着くからいいじゃなーい」

 ちいちゃんと亮くんは従兄妹同士。同じ年だけれど、亮くんの方が2ヶ月早生まれなのと、性格的にお兄さん役みたい。わたしはちいちゃんとは小学生の頃から仲良しで、高校までいつも一緒の大の親友。中学は隣の学区だったのが、高校が一緒だったこともあって、それからはいつも3人で行動することが多い。亮くんはうちの高校ではトップクラスの優等生で、どうして上のクラスの高校に行かなかったのか不思議なくらい。

 前にその質問をしてみたら、

「近いから」

 というのが理由だと言う。

「受験票持ってきたか?」

 亮くんは、わたしたちにそう聞きながら、自分の受験票を差し出した。今日2級を受験しようと言い出したのは亮くんだった。もちろん彼は余裕で受かる範囲だった。わたしもちいちゃんも英語は嫌いじゃなかったし、受験勉強にもなるからと二つ返事で応じた。特にわたしは、亮くんが受験の為に一緒に勉強しようと言ってくれたから、断るわけにはいかなかった。つまり不純な理由で本日の受験日を迎えたわけで。

「うん、持ってきた」

 わたしは、筆記用具の入ったケースに入れてあった受験票を取り出して亮くんに見せた。

「もちろんあるよー」

 ちいちゃんも、同じく鞄から票を取り出した。

「じゃあ、行くか」

 亮くんは踵を返して、駅前から市民会館に向かった。わたしたちもその後に着いて行く。まばらだけれど、高校生か大学生らしき男女がわたしたちと同じ方向に向かっていた。ある人は単語帳を眺めつつ。ある人は耳にイヤホンをしながら、ブツブツと英語らしき言葉をつぶやきながら。

「ねー、試験終わったらさー、帰りにミッシュハウス寄っていかない?」

「いいねー」

 ミッシュハウスというのは、駅前にあるアイスクリーム屋さんで、わたしとちいちゃんのお気に入りのお店だった。

「おいおい、もう試験終わった後のことかよ?」

 亮くんは振り返って呆れた顔でそう言った。

「だってー、頭いっぱい使ったら、糖分消費されるんでしょー?消費されたら、補充しなきゃー」

「糖の種類が違う。脳で消費されるのは、炭水化物から変化した糖質であって、砂糖の糖類じゃねぇ。砂糖取るだけじゃ、ただ太るだけだぞ」

「えー、そうなのー?」

 亮くんはとっても物知りだ。学校のお勉強もできる上に、雑学にも詳しい。でも、それを偉ぶらないことろが、好感度高いの。学校の生徒達は、いつも偉そうにしてるように言うけど、それは学年トップをひた走る亮くんへのやっかみであって、亮くんが他のみんなに偉そうにしている所はみたことがない。むしろ、普段学校では控え目なくらい。言葉が少ないってこともあるから、少し誤解されやすいってこともあるけど。

「まあでも、どうせ二人とも昼飯食ってないんだろ?どこかで昼飯食っていくか」

「そーそー。そうしよう。で、デザートはミッシュハウスでね」

「竹泉も弁当持ってきてないんだろ?」

 亮くんは、わたしの薄っぺらい鞄を見ながらそう言った。

「うん、でも、朝ご飯はちゃんと食べてきたから、終わるまでは全然大丈夫だよ」

「そうそう。朝ご飯大事。朝からブドウ糖がちゃんと脳内を駆け回れば、試験もばっちり。な、ちいもちゃんと見習えよ。お前、また朝昼抜きだろ?」

「えー、なんで知ってるのー?」

「昼前におばさんに電話したら、まだ寝てるって言ってた」

 そんな話をしている内に、わたしたちは市民会館に到着した。受験票を受付で提示して、会場図を渡された。残念なことに、3人ともにバラバラの部屋になっていた。

「じゃあ、また後でねー」

 わたしたちはそれぞれの部屋に移動した。

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