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この物語はフィクションです

作者: 青木弘樹
掲載日:2011/01/15

作:青木弘樹


佐々木ケンジ:主人公

佐々木ケンイチ:ケンジの兄



 俺は今、大金を持って路上に立っている。天気は晴れ。

 どうも、こんにちは。俺は佐々木ケンジ。29歳。といっても、あと3日で30歳になるが。

 フリーターで、とくに将来の夢もなし。

 両親はいない。二つ上の兄がいるが、ここ数年、連絡も取っていない。兄の名前がケンイチ、そして俺がケンジ。まあ名前なんざぁどうでもいいが、もう少しひねってほしかったと思う今日この頃。

 29歳でフリーター、つまり人生の負け組み…あんたそう思ったろ?甘いな。じゃあ今から言うことをよく聞けよ。

 さっきも言ったが俺は今、大金を持っている。額にして数百万だ。紙袋に入っている。偽札なんかじゃない。ほら、これでも負け組かい?

 まあこれだけじゃあ何のことだか分からないだろうから、きっちり丁寧に説明してやろう。今後はその日の飯に困ることもない、あんたとは違う人生を歩むことになるんだからな。

 どこから話そうか迷ったが、小学生時代までさかのぼってみよう。え?そんなにさかのぼるな?まあそう言うなよ。たぶんあんたとはもう会わないだろうから、ちょっとしたストーリー、ある男の生い立ちってやつを聞いてくれよ。

 小学生の頃、俺は足が速かった。学年で一番速かったのさ。そして学校全体では二番だった。じゃあ一番は誰かって?それは俺の兄さ。歳の差がハンデになったなんて言い訳はしない。悔しいが兄が学校一番で、俺が二番ってわけ。

 まあ兄が卒業してからは、俺が一番で、俺が卒業した後の事は知らないけどな。

 給食は残さず食べた。時にはまずいおかずもあったが、食べ物を粗末にする奴は人間失格だ。だから残さず食べた。食は生物の基本であり、もっとも大事な要素だからな。

 中学の俺はサッカー部だった。足の速さを活かしたプレイヤーとして名をはせた…というような漫画のようなことはなかった。まあ…それが人生だ。

 部活自体、2年の途中でやめたしな。とりあえず勉強に専念して、そつなく生きてたよ。音楽をよく聴いていたっけな。

 高校では軽音楽部に入った。ギターをやりたかったんだが、途中からベースをやっていた。あの低音に魅せられのさ。ベースは目立たないポジションだが、ベースのないロックバンドなんか、醤油をかけない玉子かけご飯と同じだ。ベースが芯を支えてる。それが真実だ。

 まあ個人的には、玉子かけご飯に醤油がなくてもいけるクチだが。

 軽音楽部は3年の途中でやめた。就職活動のためだ。大学には行ってない。勉強はもうたくさんだった。まあ頭も良くなかったが、とにかく暗記と数字だけの世界にはうんざりだったんだ。

 就職したのはカラオケボックス。最初の一年はアルバイト扱いだったが、後に社員に昇格。昇格っつっても、健康保険だの、厚生年金だのがつくだけ、ボーナスはなかった。給料は増えたが、労働時間も増えた。まあ…世の中そんなもんだ。

 そして7年くらい経って店は倒産。店長は行方不明。給料は最後の分までちゃんともらえたけど、まったくついてないぜ…。

 倒産する半年くらい前に、かなりかわいいバイト店員が入ってきたのにな。噂じゃその子は今キャバ嬢らしいが、詳細は知らない。

 その後はいろいろバイトを転々とした。

 なんとなく、やる気が出なかったから正社員にはならなかった。

 欲しい物はそこそこ手に入れたし、そんなに物欲もなかった。例えばテレビは今持ってるのは22インチ。どいつもこいつもでかいテレビを欲しがるが、結局飽きるんだよ。それに後々処分するとき困る。だからドデカイのは買わなかった。部屋も狭いしな。

 そして…ここからが本題。ここからがお待ちかね、メインだ。

 一ヶ月前のことだ。俺は競馬でもやろうかと競馬場に向かった。それまでギャンブルといえばパチンコあるいはパチスロ。競馬はやったことがなかった。

 その日は何となく当たる気がしたんだ。そして狙いをつけた馬に賭け、なんと!1万円が10倍の10万円まで膨れ上がった。ビギナーズラックってやつかな。

 その一週間後、パチンコに行ったら7万円も勝った。

 そのまた一週間後、パチスロで5万円勝った。

 そして…今から二日前、俺は夢を見た。競馬で大穴を当てる夢だ。夢の中では20万円の軍資金を20倍に膨れ上がらせる俺がいた。つまり400万円だぜ。

 これはきっと神様のおぼしめしだ。不幸な俺にゴッドブレスが吹き荒れたんだ。

 そして…今から一日前…つまり昨日だな。俺は競馬に出かけた。帽子をかぶり、サングラスをして。

 夢の中で見たあの美しい馬に俺は賭けた。少し手が震えたが20万の軍資金を賭けたんだ。


 そして……


 負けた…。


 そして…今…俺は、大金を持って路上に立っている。

 人がたくさん集まっている。

 パトカーが3台いる。警察官は10人以上か。

 俺はついさっき銀行強盗をしたんだよ。けど警察に通報され、あっけなく取り囲まれてる。銃でもありゃあ少しは抵抗できるが、あるのは小さなナイフのみ。それとスッカラカンの財布のみ。

 まあいっか。刑務所に入ったら、その日の飯には困らない。

 まあつまり、そういうことさ。


「動くな!」

「手を上に上げろ!」

 テレビでよく見るシーンが俺の目の前で繰り広げられている。嘘みたいだ。

「分かった、分かったよ。じゃあこの(袋に入った)金はどうすりゃいい?」

「袋は床に置け!そして手を上げろ!」

「分かったよ…」

 俺は現金の入った紙袋を床に置いた。

「よし!そのまま手を上げるんだ!」

 警察というのは同じ事を何度も言う。うるさいやつらだ。

「…」

 数人の警察官が銃を構えたままゆっくりこちらに近づいてきた。しかし、その時!

”ヒュン!”

 ものすごい速さで、帽子にサングラス、マスクをした男が俺に走りより、紙袋を奪い、これまたものすごい速さで去っていた。

「!!」

「…」

 一瞬の出来事に、誰も対処できなかった。

 そいつは路地へと消えていった。警察はあわてて追いかけたが、どうやら捕まらなかったらしい。

 俺は捕まり、当然有罪となった。刑期は懲役5年。銀行強盗にしては短かった。


 後で分かったことだが…その男は俺の兄だった!俊足は健在だった。

 兄は俺が捕まった一年後、万引きで捕まったらしい。

 その時に、あの日のことも発覚したらしい。 


 兄よ、今度は二人で何かやろうぜ。

 なにかでかいことをさ。


 いや、やっぱ真面目に働くべきか?

 真面目に働いて、いいことあるか?

 あの競馬の夢は幻だったのか?

 結婚しても、半分は離婚してるってか?

 中小企業の社長が100万の金を資金繰り出来ずに困っている。

 大企業の社長が100億の借金踏み倒して海外へ高飛び。

 世の中どうなってる?それが資本主義の正体か?


 つか、まあ…

 どっちにしても…要するに…この物語はフィクションなんです。

 けど、もしかしたらノンフィクションかも…なわけない!(タモさん風に)



 おしまい☆



 

  





  





ありがとうございました。他の作品もよかったら見てください☆

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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリーが文句なく面白い。文章も簡潔でムダがなくうまいと思います。 [気になる点] 「なにかでかいことをさ」で終わりになってればストーリー評価で5点をつけたかったです。
[一言] 構成が上手いと思いました。後半に入って大金の意味がガラっと変わり、オチもおもしろかったです。 前半の語りは、主人公のキャラが作り込まれていて、読みやすく引き込まれました。
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