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4話 メイガスの教育(2)

「……剣帝、か」


 父さんの持っていた固有ジョブの事だ。

 この世界ではジョブと呼ばれる、本人に適した職業が産まれながらにして与えられる。例えば一番に多くいる剣士ならば見習い剣士として産まれる事が多いはずだ。でも、父さんはその例外として産まれながら剣帝として生誕した。

 王国として喜ばしい事だったと聞いている。

 父さんは若くして努力家であり、持ちうる才能もかなりのものだった。そのせいで幼い頃から戦争に駆り出されて酷使されたと教えられたからね。その影響で与えられた二つ名は【優しき残虐者】だそうだ。まぁ、僕も否定はしないよ。


「……ステータス」




 ____________________

 名前 ローラン・A・リーディス

 職業 職人LV35

 年齢 10

 HP 350/350 MP 1500/3500

 物攻 150

 物防 250

 魔攻 1550

 魔防 1250

 速度 100

 幸運 100

 固有スキル

【並列試行】【掲示】【工房】

 スキル

【剣術LV3】【隠蔽LV10】【隠匿LV10】

 魔法

【下級魔法LV6】【上級魔法LV3】【空間魔法LV7】

 ____________________




 何度も見た、代わり映えのしない能力だ。

 魔力面でのステータスは確かに高い。でも、それは年齢からしての話だ。僕は嫌という程に魔物達と戦ってきた。恐らくは数万では済まないだけの敵を倒してきたというのに……他は代わり映えしないままなんて本当に僕は、無能だよ。

 まぁ、その分だけ他に回せたからマシだけど。

 レベルやステータスが思うように上がらない代わりに手をかけたのは魔道具の作成だ。そして、魔法の練度を高める事や純粋な技術力を高める事ばかりを注視していたからなぁ。なのに、想定よりは伸びないあたり本当に自分の無能さを呪う限りだよ。


「……一応、後であげるか」

「何を、と聞いても宜しいですか」

「僕の手作りの花束だよ。良い物を与えてくれた配下には返すのが上に立つ者の道理だろ」


 僕の職業は【職人】、生産物に対して大きな補正をかけるという分かりやすい能力だ。確かに職人は固有ジョブではあるものの……それは普通の人間からすれば外れの職業でもある。だって、他の職業に比べてステータスの恩恵は少ないからね。

 でも、そのおかげで父さんは父さんとして生を真っ当出来たんだ。そして母さんの病を治してあげる事だって出来た。だから、この職業を憎みはするけど悔やみはしない。きっと、死ぬ時には与えられてよかったと笑えるはずだ。

 そんな僕から見て……皆が疲れて窶れている。

 上に立つ者達が肥えに肥えている時点で苦労は下の者が請け負っているのだろう。そこも含めて馬鹿らしいとしか思えない。だって、思い返せば自分以外の王族の男子は声太っていた。女性が美しいのは嫁に出すためだろうが……生温った体に鞭を打たせるべきと思うのは僕だけではないはずだ。


「なるほど、カーネーションとは私には勿体の無い花ですね。そういったものは母上に渡すものではないでしょうか」

「でも、僕の父さんに最後まで仕えた貴方へ、感謝を込めて送るには必要なものではありませんか」


 当たり前だろうが、僕達の隠語でしかない。

 カーネーションとは、褒美としては削ぐわない程の代物を指している。普通の家庭ならば母への恩に勝る物なんて無いからな。その点から良い花だと思っている。そして、今回、メイガスの前に出したのはポーションのセットだ。

 どれもがラベリングをしてあるから使用用途を間違えるなんて事も無いだろう。体力、魔力、持続回復も含めて一つにつき、一ダースを用意しておいた。定価として売るなら良い金銭にはなるだろうが僕からすれば端金だ。


「十全な君の力を期待していますよ。国のためではなく、僕のために持ちうる力の全てを行使してください。それが初めて貴方に与える、王命です」

「……は、全てはローラン様のために」


 ここまで出来る能力者を渡す気は無い。

 いいや、その力を価値無く漂わせるだけの事は僕の性分からして不可能だ。かといって、こういった輩に休めと言って休むとも思えない。なら、こうやって疲労自体を根本的に無くせる物を渡した方が健康面でも楽だろう。だって、この世界には魔法があるのだから。

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