2話 悪巧み
「ここがローラン様の居室となります」
「……次期王と言う割には狭い部屋ですね」
「……致し方ありません。他の部屋はご兄弟様が占領しておりますから」
なるほど、所有権はアチラ側にあると、ね。
ただ、そういう言い方はあまり良いものとは言えないな。確かにベットと机や椅子で大半を占拠された部屋ではあるよ。でも、トイレやシャワー室がある分だけまだマシだ。寝て休めるだけの広さがあれば気持ちとしては楽でいられる。それに言いたい事だって分かってはいるんだ。
「メイガス、占領じゃなくて使用中ですよ。確かに部屋を多く取るのは客人の饗しのためには問題かもしれません。ですが、それで僕の親族を愚弄していい事にはなりませんよ」
「……は、大変、申し訳ございません!」
「いいよ、今回は僕しかいないんだ。許そう」
気持ちは分かる。だから、額にキスをした。
この場を監視するのは不可能だ。声を無視していたのは聞かれても良いようにするため。僕を連れて来るために無理をしたとは限らないからね。その点からして四人の誰もが疑われていたとしても仕方の無い事だ。
なら、与えられた期間を使って監視を解く。
僕は僕で優秀な子息を演じ、その者を育てる存在として四人が着く。そうなれば他の者達であろうとも手を出せはしなくなるはずだ。もっと言えば狙うべきは父さんを殺した者達への報復だろう。それを皆が望むとなれば無視出来るような強さは僕には無い。
「ねぇ、僕を連れて来た人達を呼べるかな」
「……何故でしょうか」
「うーん、今の僕では王としての資格が足りないと思ったからだね。剣を収めて、魔法を収めて、そして法や秩序を収める。そのためには最善の存在がいるじゃないですか」
良い言い訳、全てがそうだが物は言いようだ。
最初から父さんを殺したヤツらを野放しにする程の優しさは持ち合わせていない。皆が来た時に母さんは確かに泣いたんだ。愛している存在が、それでいて自分達を迎え入れるために不条理と戦っていた父さんだからね。僕だって泣きそうなのを我慢していた。
「僕は……僕のしたい事をするだけですからね」
「……承知致しました。お疲れとあらば今日はこの程度で終わりましょう」
気持ちが伝わってくれれば十分。
僕は……ただ、僕の中にある左右されない物が伝わってくれればそれでいい。その中には自分を雑に扱おうとしている君だって含まれているんだ。助けると決めたからには無視する気なんて少しもない。
「僕を……見ていてね」
「は、仰せのままに」
含みを持たせたのは分かっているよな。
父さんに教えた、僕の信じた者達だけに行うように伝えた言い方だ。詳しく話すのならば主語の後と述語の前、父さんには接続詞の前後に二秒間の余裕を持たせるように言ってある。知らない相手にも言うようにしていたからバレる手では無いだろうな。
だって、父さんは……そういう手を多用する。
ゆっくりと話して見せて、次の語を時間をかけて口にしているんだ。違うのは前後を確実に二秒間にするかどうかでしかない。僕が悪知恵を与えた人が簡単にバレるとでも思っているのか。
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