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美容コーナー開店の準備

 セルフダイニングは早めに必要となった。

 仮設住宅から、ちゃんとした家づくりも始まる。

(木材や銅製の柱も必要だし、列車は役に立ったよね。働く人たちのために食事をする場所が欲しいからさ)

「仕方ないんじゃが。ここが最適でもあろう」

 キャリロン王女が折り畳み椅子に座って言う。市場の広場へテントを設けていて、一緒に座っている。

「狭いけどなー、便利でっせー。男爵家の屋敷が近いしのー」

 ハルナはダニエルとの距離を考えてもいるような口ぶり。

「美容術の店となるとねー。やっぱり離れた場所かなー」

(ほんと、いますぐにでも始めたいけど。ここじゃ無理かー。ま、賑やかなのはいいね)

 

 忙しく走り回るミテルシが近づく。

「そのレストランとか、いつできます? 食材が。それに、男は料理はしたくないようで」

「ご飯だけ食べるとか。ちょっと美容術とは違うよねー」

(バランスを取った美容食が目的だけどねー。男には期待できないかなー)

 昼食は軽く済ますことも多いし、食事で美容は考えないのが男性だろう。

「しばらくの辛抱じゃ。これも良いヒントじゃな」

「やっぱりレストランとして調理も必要かもな」

「メイドたちを雇うしかあらへんなー。どうや、アカリーヌ様、金銭面も母上様に頼めんかー」

「そうじゃな。国の事業なら王様が応援してくださるはずじゃが」

「ニーバンだ。ご祝儀がある」

「アカリーヌ女王様にも使う権利があるでー」

「いや、そういうのは」考えなおす。

「うん。美容術に繋がるし」

(これが金の使いどころというものかな。給与だから、わるいことでもない)

 元王子のような溜めるだけには、悪いこともするだろう。


「賑やかやんか」サナエが来た。

「馬車より早い車らしいやんけ。侯爵領も近くなるやんか」

「人を乗せれば遠くまでもすぐじゃ。船もエンジン付に改造する話じゃな」

「ますます近くなりよるなー」

「フーモトに住む予定でしょ」

「まだ早いなー。温泉宿をダニエル様が計画されてるしなー」

「早い方がいいやんか。内助の功やんか」

「そうじゃ。だからアカリーヌが先に籍を入れないと、小姑になるぞ」

「そうやでー」

(ぅわぅわ。三人から見つめられてもねー)

 いまは美容術のことでやりたいことが多い。

(話題を変えよっと)

「そういえばさー。ボンクラ地方の住人はあまり増えないみたいだよ。フーモトが気に入ったみたいだし」

「そうであるな。ニーバンがイチタロに話したらしいが、ステーションを計画してると聞いてるぞ」

「なにか、言ってたね。エンジンで仕事をする関係者が集まるとか。列車で大きなことをやるつもりだよ」

 


 建築材料を運ぶだけではない列車。観光みたいな人々もくるが、違う用事で来たのがソフィー。

「ごきげんよう、お集まりで。田舎も良い場所ね、皮肉じゃなくてよ」

「はい。分かってますよ。それで、きょうは何かご用事で」

「女が綺麗になりたい思いは止まりませんのよ。フーモトでお店を開店してもよろしくてよ」

「場所が空いてれば。私からはなんとも」

(お願いじゃないね、この人の性格からして。と、いうことは。父か母に了解を得たってことか)

「仮住居をしばし使わせていただけますのよ。ご覧になりたいなら良くてよ」

(美容椅子とかも準備したのね)

「手早いですね」

「この機会を逃すのも損ですのよ。ひいきしてくださる方を早くつかんだほうがよくてよ」

「見学させていただきます」

「それほどおっしゃるなら、案内しましてよ」

(あくまで、私がお願いしたかたちにしたいんだよ。すぐに店なんてできるかしら。ま、施術をさせるつもりかもしれない)


 そういうわけで、ちょっと離れた仮設住宅へ。玄関にポーチみたいなのが設けられていて、待合室のつもりらしい。

「教え子たちはすでに習得してますのよ。感想を述べて構いませんのよ」

(そういうことか。やってみせて、評価するだね)

「やはり慣れた手つきで好い感じ。お客様役の方も気持ちよさそうですね」

「お世辞はよろしくてよ。蝶の舞う妖精の指を目指してよろしいかしら」

「そうだね。もっと軽やかに。うんとね。マッサージは長くしなくても良いかな。優しく撫でるだけ。鶏の羽で触れるのは参考になりますよね」

「褒めてくれるとは、有難く思ってあげましょう」

(粘土美容術を例に出して分かったみたいね)

 ソフィーの優越感を刺激したのは確かだろう。


 そういうわけで、コミュニティーセンター完成までの間は、仮設住宅でマッサージをしたり、教えたり。

(リン波を送る場所が、ちょっとずれてるけど、良いか。ソフィーは分かると言ってたし)

 リンパ管に沿ってやるのが正式だが、真似ただけではポイントを探せないだろう。

(詳しくは教えられないって。そうか、ちゃんと場所を確かめながらしないとね)

 いままで、リン波念力の結果を確認はしてないとも気づく。

(なるほど。教え子って、こういうときに役のたつんだよきっと。でもさー。ソフィーのところへ教えたらどうなるだろう)

 商売をするなら、同じレベルのサービスは控えさせたい。自前の教え子を募集するしかないはず。

(ちょっと待って。なにか忘れてるな、わたしゃあ)

 庶民のなかでワイワイ騒ぐ。その光景がアカリーヌの最終到達点。

(いいんだよ、教えて。王女様もいってた不器用な人もいるけど、蝶の舞う妖精の指を操れる人もいると思う。やっぱり、セルフケアかー。それで、羽を使いたいなら良いじゃん。エリカのお喋り美容術も、舞台女優の演技指導。それって、みんなの憧れるスタイルに近づける方法でしょ)

「それでも、自分の顔でもいいから、施術するわずかな時間がファンタジーの世界なのよ」

 思わず呟く。女性が肌を調えるのは、異性のためではない。

 女性だけの遠慮なし、隠し事なしの美容術対決が始まった。


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