えっ、女王ですか
「アカリーヌ」声をかけたのは母のアリス。
「ロリコン子爵ですか。話したいことがあります」
「いいけど。もっと大変なことが分かったの」
「承知しております」マームだ。
成り行きを見ていて、アリスへ連絡もしたらしいし、騎士をいち早く呼んでくれてもいた。
「もしかして。あれ」
「あれです。私が魔女との付き合いは長いのよ」
(そうだよね。それじゃあ、竜の目の涙を準備したとか)
「聖水の代わりがあるんじゃな。まず、席を準備いたせ」
キャリロン王女も気付いたらしい。
「女王様やでー」
公道をみると、4頭立ての馬車が停まり、降りてくる女王。屋台のまえから椅子とテーブルを運んで来る間にも、松並木の下へきた。
「これは。わるさした者か」
「フンヌウじゃ。ご祝儀を集めて持っておった」
「それはちょうど良かった。まずは、裁判を行います」
馬車へ合図すると、降りてきたのは聖女とイザベル。
「ご準備はできております」
イザベルは衣装ケースをうやうやしく抱えていた。
「それより先に、聖女様に立ち会っていただくことがあります」
「このものは罪びとか」
フンヌウに気付いたらしい。
「オーボチャマが話してた悪者です」
「フンヌウか。ハーマベ王国も捜してました。では、アノ水。聖水はございますか」
アリスへ問う。
「はい。マーム水筒を」
言われてマームがうやうやしく水筒と竹のコップをテーブルへ置いた。
「宣誓なされ」
型どおりフンヌウは立ちあがり嘘はつかないと宣誓した。
「フンヌウは、ロリコン子爵でもあると聞いた。誘拐は何度いたした」
「いえ、未遂で、10回に7回は失敗。いや、あの。3割なら、違います。各国から誘拐、してます、せん」
「誤魔化しおるな、なんじゃ。フンヌウ、私に剣を向けたのは、王族への反乱じゃ。ハーマベ王国の掟では極刑じゃな」
「お許しを。流刑で、せめて監禁」
「大丈夫じゃ。正直に語ればアトゥカラ王国の裁判じゃ。終身刑で済まそうぞ。そっちが望むスローライフじゃ」
「白状いたします。なんでも喋ります」
誘拐と、貸金業者も営み、あくどい取り立てもやったらしい。
「そうやのー。これから妖鬼姫と会うんかー」
「屋敷が燃えたので、直接お渡しに」
「どこの誰、妖鬼姫って」
「イケスカナイ王朝の末裔でございます。先代フンヌウの娘オリエ様」
「オリエじゃとな。接の子ではないんじゃな」
「あの方が托卵させたそうでございます。催眠という妖術を操ります」
「洗脳の話は逆か。アーホカというものは術にかかったのであるか」
「気性の荒い女で、妖鬼姫様が精神コントールなさってると聞いてます」
「一人だと、歯止めが利かないんだ」
(あの横暴ぶりも納得するよ)
取りあえずはフンヌウを迎賓館へ連れていくことになる。大金の入った荷馬車も騎士が乗り持っていく。
「そうだ。アカリーヌ様」王女が呼ぶ。
「はい?」
(さま、と呼ばれたら、ほんとコソバユイ。おじょーさま、はもう慣れてるけど)
お嬢様、は代名詞と考えていた。
(でも、女王様から、様、と呼ばれるなんてなにごと?)
「新王国のことです。ニーバンが王様になることで話が収まりました」
「肩が凝るとかおっさって、おっしゃってませんか」
「これで、落ち着くはずじゃ。アカリーヌ。分かるであろう」
「そうやなー。それで衣装ケースかー」
「ニーバンが王様なら、良い国になると思います」
「そうです。各国の王様たちも歓迎してお待ちしてますよ」
「なにを。お待ちでございましょうか」
「女王様のお出ましです。ニーバンがアカリーヌ女王だとご紹介してましたが」
「はあー、そうですか。えっ。じょおー、さま。オジョウサマなら分かるけど」
「アカリーヌ女王様じゃ。歓迎するぞ」
「ええなー。まだ付き合うてなかったかー」
「まだ。あの心の準備が。まだ婚約とかの話も」
(結婚がなんとかは話していた。だけどねー。イチャイチャラブラブもないんだよー。それに、おうじょって王女でしょ。なに。どっきりかしら)
「急ぎますから」イザベルが衣装ケースを差し出す。
「儀式の準備をしてます。王国名と名前を銅板に刻めば、正式に女王様です」
「早う決めないとなー。15か国の反感を買うでー」
「また戦争じゃな」
「それは嫌だ」
「時間もないゆえ。いまはマントだけです。参りましょうアカリーヌ女王様」
そういうわけで、銀色のマントを羽織り、迎賓館に向かった。




