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炎上、命あっての物種

 迎賓館には令嬢たちが集まっていた。

「安心させねばなるまい」

 王様と女王が馬車から降りる。ニーバンとツヨーイ侯爵が一緒に、和解した証として話すことになった。

 アカリーヌたちは入り口で馬車に乗り手持無沙汰だ。

「オーボチャマも観念するはずじゃ」

「王様がご判断なさるまえに、説得したいですね」

(反乱を起こしたのだから、ただじゃ済まないと思う。せめて自分から謝ってもらえばね)

「いまならのー。火遊びで済まされるでー」

「反抗期じゃな。ちと遅いであるが」

「行こう。嘘がばれたと知ったら考え直すはず」

「そやなー。男衆がいないほうが、警戒もしやへんだろうしなー」

「よし。行くのじゃ」

 御者へ合図するが、聖女とイザベルが小走りで近づく。

「オリエ様がお屋敷に待機していると」

 イザベルがキャリロン王女に言う。

「良い、領地持ちではない。それで分かったんじゃな」

「洗脳されてたと話してます。それで、アーホカ様は金に執着しすぎになったと」

「洗脳か。それで、変なことを」

(意識の実体化なんて話が飛びすぎてる)

「誰が洗脳したんやろうなー」

「旅の商人らしいです。ハーマベ王国の出身とか」聖女が言う。

「ザコかしら」

(いやいやいや、そういう技を持っているとは思えなかったし)

「ザコはハーマベ王国でも多い名前じゃが。心当たりはあるのかアカリーヌ」

「市場によく顔を見せるハーマベ王国の乾物問屋の隠居でございます」

「隠居さんがハーマべ王国からわざわざかー。怪しいなー。」

「まずは、アーホカ様を説得しましょう」

(ザコに会ったら確かめようと思う。ま、正直にいうかしらね)

 聖女とイザベルが馬車であとから続き、ボンクラ地方の荒れ地へ向かった。


 流刑地の木造の門が開け放たれている。赤茶色で光を反射する斑点が無数に広がるが、煉瓦造りの平屋へ向けて通路を作るように灰色で乾いた剥き出しの土が続く。

(ぅわっ。斑点はコクロッチだよ。魔女様がおっしゃってた、殺虫剤がまかれてなかったら、近づけなかったよ)

「誰か来てるでー」

「荷馬車じゃな」

「黒いマント。魔女様でございます」

(様子を見にきたんだ。でもどうして近くまで)

 魔女は堀の前で何か話していた。

「これは、サンマじゃな」

 いちはやく漂う匂いに気付いたらしいキャリロン王女。テラスから立ち上る煙がみえて、食欲を刺激する香りが漂う。

「贅沢やなー。朝一番に、漁港から持ってきたんかー」

「サンマ。へえー。乾物なら食べたこともあるけど」

 金色の馬車から降りて、魔女の横へ並んだ。

「火は使うなと忠告した。コクロッチは燃えるから危険だ」

 魔女は何度も忠告したと話す。

(あらら、ほんとだ。焼いてる網が燃えている)

 サンマが破裂するように音を立てて煙が漂う。燕尾服のイーバヤがサンマを菜箸でひっくり返す。

「ほら飛んでる」アーホカが燃えながら羽ばたくコクロッチを指さした。

 イーバヤが昆虫をハエ叩きで追っ払い。床に落ちたところを、ばんばん叩いて火を消した。

「サンマは。焦げるから。早く」

 皿を持って急かすアーホカ。

 オーボチャマ元王子はサンマを咥えると、骨を引き抜いて堀へ投げ捨てた。それで、訪問者に気付いたらしい。

「来てくれたのじゃな」オーボチャマ元王子が嬉しそうにテラスの淵まで近づく。

「各王国へ招待状も出した。きょうは正午から建国祝いじゃ」

「なにを勘違いしておる」キャリロン王女は諭すように話す。

「ツヨーイ侯爵へ嘘をついたそうじゃな。もう和解してるぞ。オーボチャマ、目を覚まされよ」

「ばれたか。しかし、もう遅いぞ。キャリロンを救うために建国すると、周辺15か国へ賛同を得ておる」

「それで、私に居てほしかったんじゃな。あいにくじゃ。各国の王様へ真実を伝えるでな」

「どうしてもか。梯子を」

 イーバヤへ合図する。

「女が揃っても敵うまい、シニンに口なしじゃ。言い訳はいくらでもあろう。行け」

 燕尾服のイーバヤが剣を振り回して橋を渡る。アーホカも目を釣りあげて続く。

「キャリロン。命乞いをせい、助けてはやろうぞ」

 オーボチャマ元王子も剣を取り、橋を渡るが、立ち止まる。

「ニーバンか。アーホカ引き返せ」

 急いで戻る。

「あんたは戦いなさい」

 アーホカが追い返すようにイーバヤへ剣を向けて小突く。

 ひゃい、へんな返事で、剣を振り回して橋から降りて向かってくるイーバヤ。

「あぶない、あぶない」

 避けながら、周囲を4人で囲んだ。縄を持って御者も加わる。

「任せろ」ニーバンが白馬で来た。

(ここは、任せよう)引き下がる5人。

「わわわっ」イーバヤは慌てて橋を戻る。

 グーチョクが馬でテラスへ跳ぶ。

「騙しおったな」

 オーボチャマ元王子へ剣を向けるが、テーブルが燃え上がる。

「戻るのじゃ」キャリロン王女が叫ぶ。

「承知」グーチョクは暴れる馬の手綱を強く曳きながら、テラスから戻って来た。

「イーバヤ来い。消せ」

 オーボチャマ元王子がテラスの隅へ避難して叫ぶ。

「いやだ。もういやだ」

 イーバヤは剣を放すと座り込んだ。

「オーボチャマ、諦めて出てこい」

 ニーバンは声をかけて橋を渡る。

「柵が燃える。ニーバン危ない」

 注意を促した。一気に火は燃え広がっていく。

「遅いか」急いで戻って来たニーバン。

「熱い熱い」

 アーホカが喚きながら橋を渡るが、オーボチャマ元王子も剣を持ち、あとを追う。

「もたもたするな!」

 アーホカを突き落として走る。

「この鬼が」グーチョクとニーバンが堀へ飛び降りた。

「屋敷が燃えたぐらいで終わらないんじゃ」

 オーボチャマ元王子が剣を振り上げる。

「どっちが早いかじゃな」

 キャリロン王女はナイフを投げるような構え。

(ただじゃすまないよー)

 隙をついて走る。

「なんだ」気づいて振り向くオーボチャマ元王子。

「蹴とばして」すでに右足は振り回された。

「あげる」兎皮の靴が男性の股間へめりこんだ。

「んがっ」苦悶の表情で身体が固まったような相手。

「危ないのー」ハルナが指でオーボチャマ元王子の腰や腕を突く。

「お、くっ」崩れてうずくまる。

「アーホカ様はどうなったかのー」

 見ると堀から半身だしている。御者が引っ張り上げた。

「お二人様はあがれますかな」

「おう、大丈夫」

 ニーバンの声がすると、手の甲が堀の淵にみえて、ぐいっ、と顔を出した。

「グーチョク様。いかが」

 這い上がると屈んで堀へ手を伸ばす。

「グーチョクは痩せないといかんぞ」

 キャリロン王女がちょっとは安心したように堀を覗く。

「お気遣い感謝いたします」

 ニーバンへ引き上げられながら、つい人命救助が先だと、と呟く。

(そうなんだ。ニーバンも、敵味方はないって感じかな)



 そういうわけで、7人に囲まれて座る3人。

「周辺15か国が味方じゃ」オーボチャマ元王子は強がる。

「剣を向けおったな、謀反じゃ。もう私でも救えないぞ」

 アーホカも諦めていない。

「フンヌウ様が金で釈放なさる。魔王エーアイ様をおなどるな」

「フンヌウ商会も取り調べるようにハーマベの父へ伝えるでな」

「知っております。温情を」

 イーバヤは内情も聞いているらしい。

「フンヌウ商会は、まえの王国をつくるつもりで、トーナリーノ伯爵を買収したと教えられました」

「言うな」オーボチャマ元王子は遮りたいらしい。しかし、イーバヤはなるべき罪を軽くしたいようだ。

「人さらいもして、流刑地に庶民を集めたと。避難してる人たちから訊けばわかります。それに、王子様とこの女はできております」

「喋るな!」アーホカが遮る。

「興味深い話であるな。イーバヤは庶民じゃ、罪も軽くなろう。話されよ」

「はい。ありがとうございます」

「蹴飛ばし姫を引き込むため、化粧品など販売いたしてたのが、この女。王子様へ近づいて王女様と一緒に仕事をしたのでございます」

「最初からの企みじゃな。こことフーモト地方をわがものにしようとしたんじゃな」

「はい。トーナリーノ地方と併せて交通の要所を支配するのがフンヌウの目的」

(なるほどね。でもさー、蹴飛ばし姫って私のことだよね。ちょっと待って。まえから、私が狙われていたと)

 寒気がしてきた。

「私が悪かった」アーホカも観念したように話す。

「不倫の慰謝料は払わせていただきます。国外追放になさってかまいません」

「当然じゃがな。もとより、愛のない男である。裁判で王様がお決めなさるであろう」

「私だけが悪ものか」オーボチャマ元王子は怒る。

「妖鬼姫への献金がなければ、わたしもこのままで大金は稼げたはずじゃ。アーホカが献金を強要したのであろう」

「わかりません。妖鬼姫は会ったことございますか」

「いや。フンヌウ様が預かっておる。しかし妖鬼姫と言ったではないか」

「睦言ですよ。あほらしい」

 相手にしないふうに言う。

(お金と恋はこじれると醜いわねー。それでも一段落かな)

 フンヌウと妖鬼姫という謎の人物。それを捕まえないと、美容術もゆっくり始められない。

(あれっ。なにか忘れてるような。オリエ様にはあとから会いに行くとして、元王子様が何かおっさ、おっしゃってた)


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