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恋と美容術で男爵令嬢は天下を取りに行く  作者: 乙巴じゅん
6章・美容対決で企むもの
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ソフィーとの取引き

 音沙汰がないと思ったら市場へソフィーが4人の女性を連れて来た。まえと同じような服だし、制服のようなものらしい。

「些細な幼い勝負ごとで、勝ったとお思いなのね。良いですけど。美容術で真の勝負は外にあるということをご存知かしら?」

(素直に祝えないなら言うなって。なんでまた)

 ダニエルから定期的に来るとは聞いていた。わざわざ会いに来る意味がわからない。

「わたしも、始めたばかりですし。きょうは仕事のお仲間ですか」

「あら、わたくしの美容術の教え子たちですのよ。ええと、蝶の何とかという奥義も、後世に伝えなければ消えてしまうでしょうね」

(施術しながら教えてはいるが、自分自身でやる方法だし、施術のやりかたまでは上手く説明できないけど)

「なるほどね。伝える、教えるべきということね」

「あら、なかなか物分かりはよろしいようですわね。その奥義の秘密と引き換えに、手を貸して差し上げてもよろしくてよ」

(なるほど。蝶が舞う妖精の指の方法を知りたいのかしら。粘土美容に興味もあるし、聞いてみよう)

「指を動かすということですね。こう、軽く触れるには、力も必要だと」

 魔女に教わったように、自分の腕を摩ってみせる。

「おやまあ、そのやり方ですね。存じておりますから。しかし、その程度の水準で満足なさるとは、少々意外ですのよ。まあ、素人のレベルとしては上出来と言えましょう。褒めてあげてもよろしくてよ」

(なんだ、知ってるのか。ま、ここは持ちあげて置こう)

「ありがとうございます。それで粘土美容って、泥をパックみたいに塗るとか」

「愚かなお考え、あっ、ご免なさいな。まあ、どうしても知りたいというのならば、このワタクシが教えてさしあげますわ」

 連れに、持っている袋から何かを出すように指示する。

(準備してるじゃん。教えたくてたまらないって感じだよね。アーホカとは別の意味で、自慢したがり屋なんだー)

 思いながら見ていると、ソフィーは鶏の羽と、粘土の入った箱を手にした。教え子の腕で試すように施術する。

 なるほど。ファンデーションみたいな使い方だが、鶏の羽で柔らかくマッサージするように動かす。

(勘単に肌へ軽く触れられるんだ。うん、大地の恵みにわるいのは無いって魔女様もお話されていたし)

 塗ったくるパックとは違うやりかただ。

「流行る化粧品は軽薄短小ですのよ。ふむ、よろしいでしょう。施術には何が必要か、素人のために、このワタクシが教えて差し上げましょう。ちゃんとお聞きなさいな」

(喋りたいんだよ。まえから、何かを教えたがってたし)

「ソフィー先生からご教授いただければ、さいわいです」

「まあ、その奥ゆかしさは認めましょう。嫌いではありませんよ」

 やはり、店を構えるのが大切だと話すソフィー。こじんまりした待合室でお茶を飲み、ファッション雑誌を読みながら順番を待つ。この雰囲気だけでもお客様はお気に入りにするらしい。

「教え子たちには、些細な部分でも褒めてやることですわ。やって見せて言って聞かせるのはお判りでしょうけどねー」

「はい。褒めるのですか。やはり、一方通行でしたね」

(確かに、リン波念力をおくる方法を言うだけだったからね。それで、ちゃんと教える場所として店が必要なんだ)

「反省とは殊勝ですわね。好ましい心がけでしょう。仕事を信頼して任せるまでが師範としての勤めですのよ。師範の役目まで、あなたに望みはしませんけど」

(望まないなら、教えないでしょ。自慢したいだけかしら)

「はい。やはり店でじっくり施術をすることですか」

「おわかりかしら。それからが美容術の勝負ですのよ。お客様に選ばれるようにがんばりなさいな。それでこそ、ワタクシのライバルとして認めてさしあげてもよろしくてよ」

「はい。そうですか。美容術というか、店の対決だと」

「物分かりがよろしいですわ。勝敗を決めるのはお客様。商店街の美容コーナーは遊びですのよ」

(美容術の勝負は外にあるとは、そういうことか)

「いまは修業中ですので、いつの日か」

「お忘れになったかしら。お手伝いできましてよ」

(なんだ! なにかをお願いしたいなら言えば良いのにね。もしかして、場所を貸してあげるとか。いやいや、いまは美容術対決をしてるし。そうだ、空いている)

「美容コーナーで。空いてるところもあるから。よろしかったら、先生の教え子へリン波念力をお伝えさせていただけるかもです」

「ぜひにと頼まれたら、ワタクシも大らかですのよ」

(なるほどね。わるくいえば、技を盗む。ま、美容術はお互いに良いとこどりで良いと思う)

 粘土美容からは、店舗展開と社員教育が学べるということらしい。

 ソフィーとしても、アンテナショップとして美容コーナーは続けたかったはず。これはお互い、今すぐに役立つ有益な取引になった。




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