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恋と美容術で男爵令嬢は天下を取りに行く  作者: 乙巴じゅん
6章・美容対決で企むもの
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初めての勝利

 オイリー肌に有効なのは何か。椿油でもいいが、もっとさっぱりとしたのがいい。オイルのほかに保湿作用の有るもの。

「乳液。いや、美容液。保湿かー。そうかヘチマ水」

 しかし値段が高いらしいし、いまさら、ちょうだいといえない。ハルナが提案する。

「野菜コーナーが置いてくれはる果物とかは、肌にえーでー」

「経皮吸収より食べた方がいいよね。オイリー肌も良くなるかしら」

「すぐにはなー。五日間の勝負でっしゃろー」

 効果がすぐに表れるわけもない。

「サナエ様には果物を勧めるとして、猪は豚肉と同じで、案外肌にも良いらしいよね」

 それは物知りの母に聞いた。

「サナエさまはなー。やはり酒のせいやろう。それに、なにか忙しそうやしなー」

 話しているところへコマチが籠をさげてやってきた。

「アボカドの栽培に成功しました。いま野菜コーナーへ卸したところ」

 それで、宣伝のつもりも有るらしい。

「おつきあいの印。食べてちょうだい」

「おめでとう、ありがとう。アボカドといえば」

 アーホカが高価な輸入品といって使っていた。

「国内でも作られよるんやねー」

 ハルナも感心したようにうなづく。それより、とコマチ。

「夏風邪が流行るの? 咳止めのヘチマ水が、あっちに」

 アーホカのところへ目をむけて気づいたらしい。

「化粧水ですよ。値段は高いらしい」

「原液は安いのよ。ただ同然。うちで作ってるから」

「作れるの。企業秘密って」

「そりゃーねー、化粧水とか薬には、ほかの成分も入れてるはずだから」

「そのままでは使えないとか」

「うちの卸してる老人施設では、そのまま痰を切るのに使ってた。ふーん。化粧水としても使える」

 なにか考えるふうだ。

「そうらしい。仕入れできるかしら、いますぐ」

「アカリーヌ様の頼みなら。美容術対決に関係してるのかしら」

「オイリー肌は、さっぱりと仕上げたいからね」

 ハルナも便乗する。

「こっちにも頼んますなー。卸は多い方がよろしいやろー」

「おおきに。樽ごと持ってくるね。割引して20マニーで」

 樽で2千円なら、ほんとただ同然。ま、竜の涙が、たたの湧水だし、これが商売だろう。


    ・


 ヘチマの水に警戒したのはアーホカ。

「どうせ安物でしょう。美容には値段が高くて良いものを使う心理効果もあるのよ」

「それなら、秘伝の、蝶が舞う妖精の指がありますから」

 アカリーヌは良い施術が美粧用品よりも、相手を満足させると考える。

 対決が始まると、まずはアボカドをサナエへ渡して、食生活のバランスを話す。母から教えてもらったことが半分ではある。

 王女は、それに反応する。

「食事が美容に良いということじゃな。アボカドも国産で採れる。良いことじゃ」

 当たり前のように、一個を手にした。試食用に置いてあるからかまわない。

「経皮吸収より、いいでなー」

 ハルナが口を挟む。アーホカは自分のやり方に自信もあるらしく、横に首を振る。

「コラーゲンを吸収させてぷりぷり肌にできるオイルは高いぞ。手に入らんだろう」

 イザベルが首を傾げる。

「コラーゲンは肌から吸収できないはず。オイルとして使ってるわけではないのか」

「魔王エーアイの情報は確かだ。紫外線対策も為されてる」

 アーホカは神話時代のインターネットについて言っているようだ。シラベルがちょっと笑ってからいう。

「情報には間違いも多い。コラーゲンの分子は経皮吸収されないし、食べた方が効果もある」

「猪はどうかな」

 サナエが気になるようにきく。イザベルが、過ぎたるは及ばざることなり、という。

「よい食材だが、食べすぎると太る」

「それはいやだな」

 美容術のながれは、いっきに食生活へと意識が変化した。アカリーヌは料理の経験が少ない。

「果実や肉など、提案できるようにがんばらなきゃ」

 それにアーホカも対抗意識をもやす。

「すでに私が果物を提供しているからね。どうやらアカリーヌは、ヘチマ水もなんでも、二番煎じだな」

「バランスでしょ、たぶん。2番でいいわよ、お客様が綺麗になれば」

「先駆けするのが栄誉を得る。この勝負も私が勝つ。隠し技があるけど、教えないからね」

「いいもんね。あれこれ肌をいじるのは美容として逆効果だから」

 ビンタ美容術は仕上がりのかたちで評価されたし、コラーゲンの正体がわかっても、油断はできない。オイリー肌なのは相手も知っているだろう。オイルは控えめだ。


 最終日にアーホカの秘密アイテムは現れた。

「パウダーファンデーションかー。いいの?」

 イザベルの方をうかがうと、シラベルと顔を合せてうなづきあう。

「持ち歩いてるんやが、使うか」

 サナエはいうが、施術者が塗らないとまずいだろうし、経験がない。王女のようすを見ると、腕を組んだまま見守っていた。

(どうだろう。正直なかただから、なにか満足はしてないかも)

「とりあえず、あとから。いまはこれで勝負よ」

 勝負に勝って千マニーは欲しいが、肌の刺激を最小限に抑える方針は曲げたくない。


 

 やがて検査が始まる。シラベルは眼鏡をかけなおして、アーホカのゲストを調べた。

「綺麗に整ってる。化粧は上手そうだ」

「常識よ」

 アーホカが得意げに笑顔でこたえるが、続けるシラベル。

「しかし、蛇足だな。イザベルどう思う」

「今回のテーマはオイリー肌へのアプローチだ。見栄えを良くする作戦だな。比べてオイリー肌の改善を食生活で変えるのはゲストの協力も必要だ」

 王女へ意見をうかがうように顔を向けた。

「施術も妖精の指として進歩した。今回はアカリーヌの勝ちじゃ」

 拳を握りガッツポーズのアカリーヌ。

「猪を食ってもいいんやな」

 サナエが握手を求める。

「酒は控えた方が」

「酒量は減らそうやんか。これから祝杯だワインを一緒に」

「ワインはちょっと。そうだ甘いのを食べにいきましょう」

 誘うからには、なにか話もあるのだろうと考えた。


    ・


 商店街の奥にはスイーツパーラーがあった。甘いのを食べすぎるのは好ましくないが、たまにしか食べられない贅沢品だ。

「ニーバンがな、来るはずや。あれで恥ずかしがりややんか」

「恥ずかりやですかー。そうなんだ」

 どこまで親しいか、再び疑問も湧くが、いまは祝いの席だ。

「もう歩けるはずやが、トラウマになるやろうなー」

「あの。蹴った場所も聞いたと」

「女に話さなくてもいいのを喋る。デリカシーがないんかね。蹴飛ばされて当然や」

「女王様もおった、おっしゃってました」

 すくなくとも親しいらしい二人の女性の意見は一致している。


 そこへ来たのが王子。なんの用事だと、同時に顔を向けた。

「アカリーヌ。勝利したな。早速だが賞金をフンヌウ商会へ投資しないか」

「難しいことは、ご遠慮もうす、します」

 なぞの天守閣をみてから、あまり信じてはいない。ただ、サナエが目配せしてから喋る。

「面白いやんか。詳しく知りたいんやが」

 たぶん王子が金をどのように使うか知りたいのだろう。

「公爵や伯爵にも持ち掛けてるが、遠慮してる。いまが金儲けのチャンスだぞ」

 10万円相当の千マニーをフンヌウ商会へ預けるということらしい。それで利益分から配当金が得られる。

「会社の利益から月に一回で配当金が貰えるぞ。金が金を生む時代じゃ」

 会社が借りるなら回収も安心だろう、金貸しよりは安全そうだ。

「どのくらいでございましょうか」

「フンヌウ商会は支店もあるでな。全体で利益が出るのは約束できる。投資額に応じて配分されるのじゃ。アーホカは月に千マニーを受け取っておる」

「元金が戻り。うん」

 話している途中でニーバンが近づくのも見えた。きょうは貴族の服だ。王子よりニーバンに会いたかった。

「ニーバン。もう大丈夫なの。あの、あっちは」

 王子は振り返り、気まずそうな表情だが、ニーバンが、話は聞こえたように言う。

「大丈夫だよ。それより王子様、景気の良い話だが、千マニーでいくら貰える。アーホカはかなり投資してるらしい」

「そうだね。あの方は施術料も高いし、長くしているから」

 アカリーヌも、千マニーがひと月に取り戻せるのは現実的ではないと感じだした。

 サナエが、蜂蜜ドーナツは美味しいやんか、と一口食べる。ここで第三者になりたいようすだ。他国にも行って、詳しいニーバンへ任せたいのだろう。

「投資した人数で配分されるのじゃ。月によって変わることもあろう」

 王子は金額を言いたくないらしい。ニーバンが知っている言い方。

「フンヌウ商会は、一万マニーの株主も多い。さて、ハーマベ王国では千マニーなら10マニーぐらいだと聞いた」

「この商店街も本契約すれば売り上げはあがろう。そうすれば利益も上がるのじゃ。だからテナント料が必要なのじゃ」

 それは王女と意見が合わないところ。本契約で変わるのだろう。

「庶民には10マニーも大金だけど。本契約のテナント料はいくら」

「高くはないぞ」

 王子は話すところへ声がかかる。王女だ。

「捜してたぞ王子。オリコオ第二王子は聞きたいことがあるらしいでな」

「経済じゃな。金儲けに関心を持ち始めた。歓迎じゃ」

 連れだって王城へ戻る二人。サナエがさっそく話す。

「ニーバン。人数は分かったんか」

「流刑地へ運搬される食料を調べたが、かなりいる。ただ、女性用の、あれだ。服とかも。粉ミルクが入っていたな」

「赤ちゃん。女が多いと。収容されてるのは男が多いと聞いたけど」

 ひとつの集落を形成しているようだ。ちょっと流刑地の意味が違ってきた気もする。

「あれやな。王子様は新天地を作るつもりや」

「良い形で作るならいいが」

 ニーバンは、王子の悪だくみがイケスカナイ王国の再建なら、平穏には始められないと考えているらしい。

「武力を行使する騎士の数やな」

「ボンクラ子爵を味方につけるかもしれん。やけに贅沢しているし、王子から金を貰っていると話していた」

 フーモト地方の隣だ。本当に他人ごとではない。根回しもしているオーボチャマ王子。王様になる身分でなぜ、急ぐのだろうか。   


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