第二王子オリコオ
追いつけない流れに、ニーバンの具合を聞き忘れたが、美容術が優先だ。二日目の対決も無難に終えた。
(手ごたえはあるけど、油断できないよねー。ま、施術は真剣勝負ってことか)
片付けも終えると、マームへ合図する。
「そろそろ帰ろうか。ダニエルも、いつまで喋ってるの」
ハルナと話してるところへ声をかける。
(ハルナ様も御者を待たせてるんだから、気をまわせって)
「では、そろそろ。姉上がうるさいので」
気取って言うが、なにかに気付いたらしい。
「うわわっ。オリコオ王子様」
緊張したように固まるが、第二王子はここへ目を向けているわけでもない。紫のマントを着るが、オーボチャマ王子より痩せているし、王様に似てがっしりした顎のラインが15歳にしては大人っぽい印象を与える。
第二王子オリコオも午前中はたまに来るらしい。それで話すときもあるのだろう。
「遅い時間でわるい。オリエに聞きたいことがあってな」
古い書物をもってきて、知りたいらしいページを開く。
「ときは案ずるにあたわず。我に心得あらば、説き語らん」
(初めてオリエ様の声を聴いたけど、やはり古語だよ。あんがい親しいらしいよねー)
地方によって言葉の訛りはあるが、タニマノ地方は古語に近い。
「タニマノ地方のことであるが、オリエは、この傘を分かるか」
「この文を読みとくる才あらば、 雨降る空にさす 傘の真意ぞ知るらむ」
「玩具ということであるか」
「前に語りし 玩具のカラクリや何たるか。その言葉こそ 今も変わらず」
「分かった。いまもあるのか」
「さは、たわむれなり」
「そうであるな。ありがとう、納得いたした」
オリコオ第二王子は納得したように書物を抱えて戻る。
馬車になりながらダニエルと話す。
「ダニエルも勉強しないとね」
(なんとなく意味は分かった。傘が玩具とか。なにか深い意味があるんだよ。第二王子様は勉強に熱心だし、王家子爵として活躍なさるはず)
「やってるよ、一応は。ニーバン様が外国のことも聞かせてくださる」
「思ったより会ってるんだね」
「ことわざにあるはず。将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」
「そうかなー。意味が分かってるのかしらね」
「きっと、大臣になりたいから、私のような若いのを手懐けていると思う」
「ちがうでしょ。そういう人じゃないよ」
(出世欲はないと思う。まさかねー、今さらダニエルに近づくのも)
アカリーヌと仲良くしたいなら、今更ではある。
「お姉ちゃんもしらないんだよ。ニーバン様は物知りで、ミテルシと市場のことで話したりしているらしい」
「そうなんだ。なにかさー、やれそうな気はするけどね」
(女王様が商店街を任せるようなこともお話してたしね。肩が凝るといいながら、やりたいことが有るんだよ)
形にならない夢みたいなのは有るのかもしれない。
(私もねー。美容術で儲けたあとは、まだ将来がみえてないけど。庶民と賑やかに暮らすにはどうするか)
とりあえずは、美容術対決に勝つことだと決めた。
(王子様が何かを企んでいるようだしさ。ニーバンはどうするんだろう。大きな騒ぎにならなければ良いけどね)




