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恋と美容術で男爵令嬢は天下を取りに行く  作者: 乙巴じゅん
6章・美容対決で企むもの
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第2回の美容術対決

 ニーバンの具合が気になりながらも、仕事はしなければならない。オーボチャマ王子がアーホカへ会いに来てたのには驚くが、嵐の日のお喋りを思いだす。

(やはり魔王エーアイでつながってるんだ)

 なにか知恵を授けたらしい。

「王子様のご厚意だ。アカリーヌもヘチマの水を使わないか」

 アーホカが銅製の小瓶を手にして見せる。質素な造りで、片手で握れるほど小さい。

「幻の化粧水が見つかったのですか」

 製造方法が分からなくて、束子ぐらいしか利用されてないヘチマ。

「企業秘密だが、安くで売ってあげよう。千マニーじゃ」

「この大きさで。ちょっと庶民には買えないと思います」

 そこへ来たのがキャリロン王女。

「何事じゃ王子。管理は私であろう」

 ため口だ。一応は夫婦だからだろう。

「フンヌウ商会の商品を売り込んでいる。ヘチマの水は儲かるぞ」

 なにかが違うと思う。

「庶民の生活を潤わすために貨幣があると承知してます。これで、千マニーだと買えませんが」

「そうじゃな」

 キャリロン王女も瓶を見て納得した。

「儲けばかりを考えておる。王子、本当に庶民のことを考えてるなら安くなるはず」

「フンヌウ商会の取引は私が任されておる。アーホカは納得しているであろう」

 アカリーヌは高い料金にも納得してない。

「美容術の料金をあげるおつもりでしょう」

「それが経営じゃ」

 オーボチャマ王子が諭すようにいうが、うなずけない。

「金の使い方がちがうと考えます」

「貨幣流通促進会の仲間にならないのか。私は応援をしてやれないぞ」

「フーモト男爵家は自給自足でも生活できますので。庶民の潤うことこそ大事だと」

「貨幣は力じゃ。権力者が持ち、分け与えるのは古代からの歴史だ」

 やはり金儲けが目的だと気づいた。ニーバンのいう通りだ。


 キャリロン王女は仕事の邪魔をされたくないらしい。

「あとから話し合おう。やはりニーバンに管理を任せよう」

「それは。まだ早い。フンヌウ商会と本契約があるでな。そのあとだ」

 オーボチャマ王子が面倒くさそうに話を打ち切ると王城の門へ歩いて行く。キャリロン王女は未だまだ話があるように、あとへ続いた。


 蝶が舞う妖精の指として、アカリーヌの施術は注目を集めているようだ。アーホカのところで待っている浴衣姿の女性が場所を変えてくる。

「コマチから聞いてたけど。ほんと気持ちよさそうね」

「はい。見て楽しい、させて綺麗になれます」

 実際に見せるのは客を集める効果もあるようだ。アーホカも真似をしようとするが、不器用らしい。やはり施術している方が技術者なのだろう。施術者同士で話したい気持ちにもなるが、アーホカと同じ性格ならいらない気もする。


 3時の鐘がなるとイザベルたちがやってきた。

「2回選じゃ。技術アップしたであろう」

 キャリロン王女が期待するように話すが、こんどのゲストに注目した。服をみれば、貴族令嬢たちと気づく。

「いつもの流れやなあー」

 ハルナが呟く。前回の女優もそうなら、アーホカは準備もしていたはず。こんども貴族令嬢と知っていただろう。

「施術で勝つわよ、こんどは」

「テーマはいつも変えてきよるしなー。はやく気づいた方がええでー」

「まずは肌をみてから、って何。サナエ様」

 後ろに立っているのが侯爵令嬢のサナエ。

「アカリーヌ。竜の。涙に興味があるんやが」

「さようですか。はい」

 竜の、と何かを付けたしたいような言いぶり。イーバンから聞いたのだろうか。伝わるのが早すぎると思う。

 さすが権力の強い侯爵家。どっちのゲストを施術するかを勝手に決めてアカリーヌの前に来た。キャリロン王女は黙認する。王子の元婚約者と妻だし、微妙な関係の二人のはずだが、知らんぷりをきめているらしい。


 ニーバンがいつのまにサナエと連絡したか確かめたいが、いまは仕事だし、負けられない美容術対決が始まる。  


 サナエの肌は夏のせいか、やはり汗ばむが、これがオイリー肌かと疑問を持った。イザベルたちは何か課題をもってくる。エマのときはいつも手入れされた肌を試された。こんども肌の状態に関係あるのではないか。

「いつものお手入れは、どうなさっておらる、おられますか」

「汗かきやんか。熱い水で洗うのがいいと森の妖精たちがいうとった。あとはパウダーファンデーションや」

 やはり油性肌。

「オイリー肌も食べ物で変わると聞いております。アルコールや肉などはいかがです」

「知ってるやんか。米で作る酒は旨いやろ。毎日飲んどる。アカリーヌもこんど飲みに行こう」

「まだ二十歳前ですので。それでお肉も召し上がるとか」

「侯爵領には野生の猪もいるやん。いつも食べておる。宴会や」

「あまり存じあげませんが、生活習慣からオイリー肌になってると考えますが」

「そうなんやな。化粧では治らんか」

「竜の涙は鉱泉水でございますから、肌を整えます。おそられ、恐れながら食事のご提案も」

「ありがたいことや。ニーバンを二度も蹴飛ばしたとは思えん気配りやんか」

「いや。二度目は。あれは」

「ニーバンが言うとった。それでな。仕事の後に話があるんや」

「はい。なにか」

「ここでは話せないやろ。そういう話や」

 王子に関することだろう。詳しく聞けるのか。蹴飛ばしたニーバンの股座も気になる。


     ・


 侯爵家の馬車に乗ると、ちょっと行くところがあるという。前にマームが座り、後ろに並ぶ。

「国境で見せたいのがあるんや」

「流刑地がある、ですよね。王子様が何かしているとニーバンは話してた」

「そこまで分かるんやな。話しやすい。建物を作っておるが、あれは天守閣やな」

「お城ですか。わざわざなんで。王子様なら、つぎは王になり、成られますのに」

「フンヌウ商会と関係あるんやろう。イケスカナイ王朝の末裔やんけ。王朝復興を考えてるやろう」

「それなら。魔王エーアイの末裔は知っている」

 アーホカは魔王の末裔とか言ってたが、フンヌウ商会はかなり縁もあるようなやり方だ。

「イケスカナイ王朝は科学という魔法を追求しとったようや。何か企んどる。王子様とアーホカとやらは一緒や」

「関わり合いたくないような。おおごとにならないように、ニーバンと調査なさってると」

 ニーバンはかなり重要な仕事を女王様からまかされていた。

「他人ごとではないやん。フーモト地方の近くや。王子様は市場が欲しいはず」

「それで、丸め込もうと」

 ギルドへ参加させたい理由も分かった。

「正直にいう王子様ではない。だから竜の目の涙を使いたいんや」

「もう、場所はご存じでしょう」

「ニーバンが教えたからな。飲ます機会を伺ってるんやが」

「聖女様からの聖水を飲むときでしょうか。儀式があれば」

「正式に次期王として、任される、摂政就任式やが、半年あとや」

 それまでは証拠固めをしているようだ。


 市場から流刑地へは、ボンクラ子爵領がある。しかし、距離は1キロぐらいだろう。

 坂で急流になる川。沿う公道がアマクマ公爵領へ続くが、横へ橋でつながるのがハーマベ王国ツヨーイ侯爵領。平穏ないま、国境の柵は解放されていた。

 ボンクラ子爵領の荒れ地、流刑地へ馬車を近づける。

「ここからみえるんや」

 幌をあげて立ち上がる。低木やススキなどが茂る中に、そびえる天守閣だが、二階造り。それでも、しゃちほこを備える出っ張りができている。

「仮の城でしょうか」

 不便な荒れ地では暮らしにくいと思うし、野望を持つなら水の豊富な場所。開拓するより、どうする。

「フーモト地方を狙ってるやろなー。平穏だからの美容術やんか」

「早く竜の目の涙を飲ませて確かめないと」

 ニーバンの憶測でもない。天守閣が完成すれば別荘とか見張り小屋だとか言い訳もできないし、積極的に動き出すはず。

「何人の騎士がいるかやな。たぶん、ならず者をあつめてるやろうし、ニーバンと調べておるんや」

 争いごとは歓迎しないが、世間を騒がせる者が動き出すらしい。貴族としては、ここで黙ってることはできない。特権階級ということは庶民を守る義務もある。

(まさかねー。戦闘服を着けるとは)

 女性騎士として参加するのは義務になっていたが、美容術と恋はどうなるんでしょう。


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