表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋と美容術で男爵令嬢は天下を取りに行く  作者: 乙巴じゅん
4章・美容術リン波念力の奥義
19/49

台風で中止になったデート

 3時の鐘が響く前にダニエルがきた。

「ハルナ様のお送りは。不肖わたくしめが」

 一緒にハナレテル伯爵家へ送りたいらしい。

(ちょっと待て。誰を迎えに来ているのか忘れたのか)

 アカリーヌは呆れるし、それを見てハルナが苦笑い。

「嬉しいがのー。迎えは来よるからなー」

 話す間にも御者がきてハルナへ合図する。伯爵家の馬車が停まっていて、駐馬車場は賑わいだした。買い物にきた貴族も多い。同じようなタイミングでくるのは通常のときと同じだが、きょうは早め。

 一陣の風が吹いて、いやな予感がする。

(だからさー、ニーバンは? 茶店も閉めたのかしら。外へはいけないよねー)

 せめて会って、今日は無理だねー、とか話したい。

「じきに降りよるでー。ほな気いつけてなー」

 ハルナが曇り空を眺めながら御者のあとへ続いて行く。

「お姉ちゃん。行こう」

 急かすダニエル。

(えーいっ。うっとうしい)

「ダニエルう。私よりハルナ様がだいじなのねー」

 悪戯をしてあげようか、と睨む。たぶん、デートが中止になった八つ当たりというものだ。

「はい。いや、そういうわけでは。それより雨が降る」

 たしかに雨降りの馬車は最悪だ。竜の涙が入った樽を手分けして持つ準備をする。

「仕方ないよねー。そうだ、市場のほうは大丈夫」

 やはり気になるのは市場だ。台風は年に何回かくるし、慌ただしい中で、不謹慎にも幼いころのことを思いだしていた。

(庶民が集まって賑やかにする、何かがしたいけど)

 王家主催の祭りならあるが、威張った貴族が主役の顔をするのが興ざめだった。庶民が中心になりお祭りは、心と生活に余裕もない。台風の騒ぎは、礼儀の必要もない庶民と接する機会でもあった。

「ミテルシ監督がしきって、ちゃんとしてたよ。もう家へ帰ってるころ」

「早い! そういってられないか。水害はたいへんだからね」

 川が溢れて家へ帰れなくなる。川が多くて恵みの水だが、豪雨のときは災害を引き起こす。

「台風のあとが大変って。ニーバン様がおっしゃってた」

 ダニエルはなんでもないように話すが重要な情報だ。

「えっ。会ったの。いつ。どこ」

 慌てて問う。

「オーカウエの台風対策をしていて、市場まできてた」

「そうか。忙しいんだよ、きっと」

 いくらニートでも領地のために協力するだろう。とりあえず朝に会ったから、よしとしよう。

 桶をマームと3人で手分けして持ちながら馬車のところへ急ぐ。

「公爵家の馬車でございますかねー」

 マームが顔をあげていう。王家と同じ4頭立ての馬車だ。

「イチタロ様でしょ。次の公爵様になられるから。王城でも重役だし」

 ニーバンの兄だが、王城で顔も合わせる貴族だ。いまは用事もない。馬車へ乗り込もうとしたが、公爵家の馬車から降りるニーバンに気付いてしまった。

「ニーバン。台風だよ」

 分かり切ったことだが、デートは中止だね、との意味を込める。

「アカリーヌ。王様に呼ばれて、明日の打ち合わせだ」

 ちょっと笑顔で応えるが、真面目な表情になる。話す間にもイチタロが降りて急かす仕草。

「蹴飛ばされた男爵令嬢か。いまは早く」

 余計なことを覚えられてしまった。ちょっと言い訳もしたいが、風も強くなってきたようで、ドレスをはためかせた。

「台風のあとでねー」

 さよならがわりに言うと、馬車へ乗り込んだ。

 父が御車やメイドの家へ連絡もしたとダニエル。

「泊まり込みの許可をとってたよ」

 フーモトへ着くまで雨が降るかも知れないし、風が思ったより早く強くなりそうな気配もした。

 御者やメイドも仕事として個人契約が確立している。派遣社員もいるが、その待遇改善を進めているのがアッチスグ公爵。イチタロは直接に派遣会社を指揮もしていた。

(ニーバンもさ。王女様から頼まれた仕事を終えたら、なにをするのだろう)

 直接に教えてもらいたいし、王城に通う貴族からは浮くかなとも思う。

(だけどねー。色気のない話だよ。趣味とかのことを話せばいいのかな)

 つぎに会ったときに、もっと気の利く会話もしたい。

(イチャイチャラブラブも。うわっ、やだー)

 ロリコン子爵を思いだしてしまった。

「無理かー」つぶやく。

「なにが?」ダニエルが不思議がるように言う。

「なんでもない」

 これは恋だ、と思いながら弟には悟られたくない。マームが「ゆっくりですよ」と囁いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ