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恋と美容術で男爵令嬢は天下を取りに行く  作者: 乙巴じゅん
2章・美容術の対決だが相手は魔王エーアイのカガクを信じていた
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オボーチャマ王子の提案とニーバンの忠告

 イベントのお陰か、アカリーヌへ施術を任せるお客様もいる。隙間をついて来たのは王子。燕尾服の男が知らせる。

(身近にお話できるかしら)

 直接に話す機会は少ないし、ちゃんと喋られるかも気になる。

「オボーチャマ王子の視察でござる。お手を休まれよ」

 化粧コーナーへやってきた。

「ちょっとなー、お手洗い急ぎますよって」

 ハルナはメイドと一緒に出てゆく。急にかと思うが、逃げる言い訳だろう、王家とは距離を取りたいのかもしれないが、キャリロン王女にも凝りているらしい。

「ごゆっくり」

 送り出すいとまもなく、紫の大きなマントを羽織るオボーチャマ王子が声をかけて来る。

「フーモト男爵家のご令嬢と聞く」

 脂肪が溢れるような顔で笑う。

(元はイケメンらしいけど。太りすぎだと年配の方たちが噂していたね)

「はい。アカリーヌと申します」

「頼みは例の市場のことじゃ。一万マニーの参加金は百マニーで良いぞ。そっちからフーモト男爵を口説いてくれないか」

「そんなに安くなるのでございますか。なにかカラクリがあるような」

 つい、疑問を口にだしてしまう。男性の話は警戒もして構えている。

「正直じゃな。アカリーヌもお金に興味があろう。貨幣流通促進会の仲間じゃ。儲け方を教えよう」

(そういう会もあるのね。儲け方ってものがあるのかしら)

「庶民でも肉や米がたくさん食べられるなら、お金も欲しいでございます」

 貨幣流通促進会があるなら協力したいが、百万円が一万円に変わるようなものに、だれでも疑問を持つだろう。

 アカリーヌが興味を持ったと思ったか、オボーチャマ王子は説明するように手で金を数える仕草で話す。

「市場でテナント料を取れ。すぐに百マニーは集まるでな」

(場所代ってことかしら。いやいや違うでしょ)

「元は物々交換で、補い助け合うのが市場でございます。土地は地元への奉仕だと考えております」

「古い考えじゃ。いまからはなんでも金に換える時代。商店街も百マニーのテナント料を取りたいが、キャリロンが反対しおる。それで、各地の市場から先に進めるつもりじゃ」

 王子と王女は話し合いもしていて、考えの合わない部分もあるらしい。

(王女様がいない間に、各コーナーへ直接に勧誘してるんだ)

「とにかく。ちがっちゃった。恐れ入ります、父がお決めになることですので、私からはなんとも」

 いくら市場を任されたといっても金を出すのは父だ。

「それじゃあ、金貸しはどうじゃ。貸した金の利子が儲けになる。金が金を生む時代じゃ」

(金が金を生むねー。どういうこと?)

「わからないけど。母は詳しいから聞いてみたいと思います」

「アリス婦人か。婦人会の幹事をしておるな」

 ちょっと困った顔をするオボーチャマ王子。母は、王家へ対抗するほどの勢力がある侯爵家の孫娘だ。フーモト男爵家で一回は断られていたはず。

「ま、良いだろう。良い返事を待っておる」

 貨幣の普及は歓迎するが、あまり知らないことばかり言われても、とまどうしかない。

(なるほどね。貸して使うことを援助するのもいいね)

 貨幣の流通へ関心はあり、金貸しに興味を持ってしまった。もう少しは知りたいから、母に訊こうと思う。

 ハルナたちは頃合いをみて戻って来た。市場は賑やかだし、アーホカたちの施術に反応したか、青果コーナーから地元のキューりや果実の試食を置くように頼まれる。代表のマトーメという男性だが、Tシャツみたいな服に法被をまとう。商売人の一般的な服装だ。

「ギブアンドテイクでいきましょう。美容コーナーの宣伝用看板を置かせてもらいますんで」

「くだものとか試食できるなら、歓迎だけど」

 宣伝してくれるのも有難い。ハルナへ目を向けると乗り気みたいにうなづく。新しい試みに賛成らしい。後ろの台所用品コーナーへ避難していて、テナント料のことも聞いたようだ。

「王子様の提案はどうやったんかー」

「あれは、いけませんよ」

 大袈裟に手首を振るマトーメ。

「いいときは儲かりますよ。台風とか不作の時も同じ金を払うのは堪忍してくれといいたい」

「ここも、いまのところ百マニーはきついし」

(一日に5人くれば良い方だし。これからかな)

 長く続けて常連が増えれば稼げるとは思う。

「安定した収入ならのー」

 ハルナは貨幣に詳しいところもあるようだ。

「貸したほうが儲かるようになっとるでなー。いつでも安定した収入が入りおるやろう」

 なるほど。神話時代は貸した方が優位だったらしいが、まだ貨幣が普及の段階でも貧富の差を何気に感じていた。

「王女様は良い考えをお持ちだ」

 マトーメが説明する。

 売り上げの2割を支払い、商店街全体の役にたつことをしたいらしい。

「コーナーの代表が集まり、考えてるところです」

 代表が、王女は威張ってるようで親しみやすい、と期待している口ぶり。キャリロン王女が庶民のことを考えているかもしれない。

(でもさー。こうしてほかのコーナーの人たちとお喋りもして行きたいね)

 横のつながりで商店街に人間関係が増えるのは歓迎した。


 母が金貸しに前向きではないが、ニーバンは何というか気になる。

(母は詳しく説明しなかった。ニーバンなら詳しくお教えてくれると思う。どこか、頼れるよね)

 オボーチャマ王子と話せば、どうしても参加することになるだろうし、何か引っかかるものがあった。

 試食品を目当てに、足を止める人たちは増えた。すぐにお客様につながらないのは仕方ない。

「朝から来たら変わるかしら」

 ハルナへきいてみる。

「そうやなー。予約客が多いでー。仕事中やし、来れないからのー」

「ひいきのお客様をつかむことだね」

 市場でも午前中は必要なものを探しにくる人が多い。お洒落するのは仕事を終えた午後からになるだろう。

(市場では午前中にやることもあるし)

 管理者として、連絡を受けたりもしている。そして、商店街で朝から働くと、庶民とのつながりが消える寂しさもあった。金を溜めて何かをしようと思うが、美容術のあとは思いつかない。

(お金の使い方か。王子様のいうとおりなのかな)

 美容術の対決で勝てば千マニーを儲けるが、もっと能率よく稼ぎたくもなる。


    ・


 それでニーバン。4回目の勝負を終えての帰り、駐馬車場で白馬から降りたところで会った。友達みたいな仲にはなったと思う。まずはニーバンの考えを知りたい。

「おひさー。王子様から貨幣流通促進会のことを聞かされたけど。どう思う?」

「おひさー。貨幣の流通は流れから当然だが。やり方がな」

  言いながら、ちょっと待って、というふうに騎士へ合図した。

「なにか、色々あるの」

 稼げば良いだけではないらしい。

「王子さまはどうか、分からないが。損はしないようなやり方で、相手を騙す輩もある。金貸しとかが代表だ」

「えっ。悪いことなの?」

 貸して助けるのがいけないのか疑問だ。

「悪徳業者もいる。ただ大金が必要だし、それを借りることになる。たぶん利子を払って返さねばならない」

 たしかに、いまは貸すほどの金もない。

「借り手がいなかったら、帰さなくていいよね」

「規則によるが、その借りた所へ月に幾らかは返すことになる。なにか、始めるつもりか?」

「いや。ニーバンから言われると怖くなるね」

 結局は、自分が借りて利子を返すことになるらしい。

「借りる人も簡単にさがせないと思う。訳ありの人だと思うし、返せるかわからないだろ」

「貸したのが返ってこなかったらどうするの」

「ちょっと脅して回収するか、あげたものとして諦めるかだな」

「王子様がそれをしているんだよ。たぶん」

 話から考えると、オーボチャマ王子が借りる人を捜していたのだろう。

「どちにしても、王子様の本心を聞いてからだ」

「そのために、この前は会ったの」

「いろいろと。そうだ。明日は休みか。初登城祝いだろ」

「うん。ダニエル、弟ね。こんど初顔見せなの」

「楽しみだな。ちゃらちゃらした連中が集まるから苦手なんだよなー」

 言うと、思いだしたように、ちょっと笑った。

「市場へよったとき、若いのが張り切っていた」

 コーナーをまわり、話していたようだ。

「庶民たちは、かしこまっていたが。ひとりだけ、やけに馴れ馴れしくしてたな」

「ミテルシかも。市場の監督って立場。同級生なの」

「もっと大人っぽくもみえたが。仲がいいんだな」

「私のファンだよ。言い寄るから蹴飛ばしたけど、いまは市場で貨幣を広めようと協力している」

 ミテルシは軽い部分もあるが、世話をやくのが趣味みたいな男性で年配の人の信頼もあり、人望は厚い。

「蹴飛ばした。うん、ありえるか」

 会った最初の日に、喧嘩を売ろうとしたのを思いだしたのだろう。

「ありえないっての。やっぱり、金貸しは無理かな」

「まずは、美容術だと思う。金はあとからついてくる」

 ニーバンは金儲けに興味はないらしい。アカリーヌも貨幣は使い方が複雑と考えるようになった。

 ニーバンは待ち合わせのようで、騎士と一緒に奥へ去って行った。みると、アマクマ侯爵家の四頭立て馬車が停まる。王城で見たこともある。母が公爵家の孫だから、幼いころに乗ったことはあるらしい。乗り心地もいいだろうし、きれいな服を着て男性のエスコートを受ける。

(でもねー)

 ロリコン子爵の幻影が現れてしまう。いまは恐れるほどではないが、どうしても、いやだ、との思いは湧く。恋人といちゃいちゃすることは難しいだろう。

「ニーバンとは、良い友達で続けようかしら」

 いつものように隣にいるマームへいう。

「明日でしょうかね」

「えっ。なにが」

「お嬢様も、ニーバン様の御身分には興味がないのでございますか」

「そうだ。きょうも聞きそびれた。ま、いいや」

「だから。あしたでしょうね」

 マームはなにかを分かりながら黙っているようだ。

「そうだね。貴族なら」

 初登城を祝うのは年間行事でも盛大なもの。

(苦手とかいってたのはさ。参加する予定だよ、きっと。ニーバンへ会えるかもしれない)


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