第3.5章 第6話:『物流の虎:オーク将軍の「神界ルート開拓」』
「いいか野郎ども! これはただの『肉』じゃねえ! 地上で働く農家たちの『魂』だ! 鮮度を落とさず、神様の食卓へ届けるぞ!」
『『『オオオオッ(御意)!!』』』
早朝の山岳地帯。
レオナルド商会・物流部門を統括するオークのガルドは、空を見上げていた。
彼の目の前には、大量のコンテナが積み上げられている。
中身は、朝獲れの鮮魚や高原野菜。
これを神界へ運ぶには、通常の輸送手段では間に合わない。
「来るぞ……! 『特急便』だ!」
バササササッ!!
突風と共に、巨大な影が降り立つ。
全長50メートルを超える、赤き鱗の古代竜。
かつては一息で国を滅ぼしたと言われる、空の災害だ。
「グルルル……。オークよ、今日の積み荷はなんだ?」
ドラゴンの低い声が響く。
だがガルドは眉一つ動かさない。彼はヘルメットを被り直し、タブレットを提示した。
「本日は『北海サーモン』50トンだ、イグニール様。……ただし、温度管理は厳守で頼むぜ。お宅の体温で煮魚にしたら、契約違反で賠償金だ」
「フン、我を誰だと思っている。……で、報酬は?」
「これだ」
ガルドがコンテナの一つを開ける。
そこには、最高級の『霜降り和牛(A5ランク)』がぎっしりと詰まっていた。
「……悪くない」
ドラゴンの目が輝く。
かつて人間を襲って食っていた彼らも、レオナルド商会の「美食」を知ってからは、すっかり餌付けされていた。
人間を襲うリスクを冒すより、荷物を運んで極上の肉を貰う方が、圧倒的にコスパが良いのだ。
「よし、積み込み開始!」
オークたちが手際よく、ドラゴンの背中に装着された「特注ハーネス(冷蔵機能付き)」にコンテナを固定していく。
「固定よし! バランスよし! ……イグニール様、フライトプランはCルート。乱気流を避けて、安全運転でお願いします」
「承知した。……しっかり掴まっていろよ、豚共」
ドォンッ!!
ドラゴンが大地を蹴り、空へ舞い上がる。
その背中には、オークのライダーが跨り、手綱(操縦桿)を握っている。
雲を突き抜け、次元の壁を超える。
眼下に広がる世界を見下ろしながら、ガルドは無線機に向かって叫んだ。
『こちらドラゴン便1号! 神界へ進入する! ……届けようぜ、世界最高鮮度の「感動」を!』
数十分後。
神界デパートの搬入口には、ピチピチと跳ねるサーモンを見て歓声を上げる神々の姿があった。
その笑顔を遠目に見ながら、ガルドはドラゴンに飼料(和牛)を与え、ニヤリと笑う。
「へっ、これだから物流屋はやめらんねえ」
剣を捨て、ハンドルを握った男と竜。
彼らが繋ぐ「空の架け橋」が、今日も両界の胃袋を支えている。




