キラキラネームのきらりちゃん
きらりには嫌いなものがある
いつもふざけた態度をとるママとパパ
からかってくるクラスの男の子たち
そして自分の名前が大っ嫌い。
きらりは漢字で「星姫」って書く。
国語の勉強では絶対読めない変な名前。
それはキラキラネームって言うんだって。
テキトーにつけた変な名前。
学校の先生も読み間違える変な名前。
「お掃除真面目にちゃんとやってよ!」
「うるせーキラキラネーム!」
クラスでいつも掃除の時間。
遊んでいたクラスの男の子に注意をするとそう言われた。
「関係ないでしょ!」
「関係あるね!名前が不真面目なやつに注意されても直したくねーもん!」
そう言ってまた遊び出した。
そんなこと言われても好きでこの名前になったわけじゃない。
きらりは学級委員をやっている。
名前が不真面目だからと言うこと聞いてくれないとなるとどうすればいいのかわからず言い返せなかった。
そんなある日
「今日からこのクラスに転校して来た早峰…えっと」
「すてら、星に龍って書いてすてらって読みます」
「ありがとう。早峰星龍くんです。みんな仲よくしてあげて?」
「はーい」
私のクラスに1人の男の子が転入してきた。
「すてらって変な名前だなーあれだ!あいつと同じキラキラネームだろ?あいつ星に姫できらりっていうんだぜ!変な名前だろ?」
休み時間になるといつもきらりを困らせる男の子が転入生にそう話しかけて来た。
「…」
転入生はちらりと私をみた後男の子をみた
「君の方がへんだよ」
「はぁ?」
「変な名前なんてない。僕は自分の名前すきだからね。君こそ人の名前を変だと決めつける変な子だよ」
「なっ!」
転入生はそうはっきりと男の子にそう言ったのだった。
「おばあちゃん!あのねあのね!」
「おや。きーちゃん今日も元気でかわいいね」
お家に帰るとおばーちゃんがいつものように上下にゆらゆらと揺れる椅子に座って縫い物をしていた。
私のママとパパはあまり家にいることが少ない人だった。
だからママとパパよりもおばーちゃんによく懐いていた。
「あのね!今日転校生がきたんだよ!」
私はすぐにおばーちゃんに今日のお話をした。
転入生は今まで出会った男の子たちとは違い落ち着いていて大人びていた。
からかってくる男の子たちに対してもズバッといったときすごく驚いてしまった。
私もあんな風に言いかえせたらいいのに
だけど私はあの子のように堂々とできない。
だって自分の名前が大っ嫌いだから…
私はそんな転校生に憧れつつも勇気がでず話しかけることはできなかった。
転校生も積極的に誰かに話しかけることもなく教室の自分の席で本を読んでいることが多かった。
きっとこのまま話すことはないのだろう
そう思っていた。
「あっ!おばーちゃん!……!」
「あらきーちゃん。今帰りかい?」
友達と遊んだ帰り道、家に向かう途中にあった公園の階段のところで見慣れたおばーちゃんの背中が見えた。
すぐに駆け寄ろうと思った矢先隣にいる1人の男の子をみて立ち止まってしまった。
「おや?知り合いかい?」
おばーちゃんの隣にあの転校生が荷物をもって立っていたのだ
「うっうん…」
「…同じクラスなんだ。…高山さんのおばあちゃんだったんだね。…公園によったら荷物たくさんかかえて大変そうに階段登ってたから手伝ったんだ」
「そっそうなんだ。ありがとう…あとは私が持つよ」
私はあわてて転校生から荷物を受け取ろうと手を出す。
「そう?じゃあ…はい…僕帰るね」
「あらあら、お待ちなさいな」
荷物を受け取ると転校生は帰ろうとした。
だがおばーちゃんは転校生を呼び止めた。
「私たちの家すぐそこなのよ。少しお茶でもどう?ここまで運んでくれたお礼をさせなさいな」
そう言って家に招待することになった。
家に呼び私たちはたわいのない話をした。
いつも教室で1人で本を呼んでいることが多く近寄りがたい転校生….早峰くんであったが、話してみると気さくでだけど他の男の子たちみたいに騒ぐことはなく、落ち着いた声で話をしてくれた。
それから私たちはよく話すようになった。
早峰くんはとても聞き上手だったのでおばーちゃんは気に入り、タイミングがあうと家に招き入れもう1人の孫のように可愛がっていた。
「早峰くんはどうして自分の名前が好きなの?」
ある日ずっと気になってたことを聞いてみた。
「どうしてそんな質問をするの?」
早峰くんは不思議そうにそう聞き返した。
「…私、自分の名前がすきじゃないの…クラスの子にもキラキラネームだってからかわれるし…」
「あーなるほど…ちょっと待ってて」
そういうと早峰くんは家を飛び出して行った。
「これが僕が名前を好きな理由だよ」
少し経つと早峰くんは一冊のアルバムをかかえて戻って来た。
それを私に見えるように広げて見せてくれた。
「わぁ!綺麗!」
それはさまざまな星の写真だった。
満点の星空、海とともに映る星空、流れ星がたくさん流れてるものもあった。
「僕の名前はどっかの国で星って意味なんだって、星が大好きな父さんがつけてくれたんだ。大好きなものを子供の名前にしたいからって」
「素敵だね」
「だから僕は自分の名前が好きなんだ。…高山さんは?」
「えっ?」
「高山さんの名前はどうしてきらりなの?」
「…わかんない」
そういえば誰にも聞いたことがなかった。
ただキラキラネームということが嫌で自分の名前がどうして星姫なのか気にしたことがなかった。
「ねぇ、パパ、ママ今暇?」
「んー?どうした?」
「暇よー」
長い間仕事で家にいなかったパパとママは
今日から長めのお休みをもらえることになった。
そこでリビングでのんびりしてる2人を呼んだ。
いつもならおばーちゃんが代わりにやってくれるお家のことやってと怒るところだがこの間早峰くんに聞かれたことが気になっていたのでこの機会に聞いてみようと思ったのだ。
「私の名前の由来ある?どうして星姫って名前なの?」
すると2人は顔を見合わせる
「話したことなかった?」
「俺は言ったことなかったかも」
「なら話してあげなよ」
「えー、なんか恥ずいんだが?」
「何も恥ずかしくないでしょー」
「そう?なら…」
そういうとパパは話してくれた。
私が生まれる前、パパとママはおばーちゃんが住むこの土地が嫌いだった。
駅もなければ遊ぶ場所もなく、夜になると街頭も少ない田舎町。
新しいものが好きで華やかなものが好きな2人は大人になるとこと町を飛び出して好きなことをしていた。
だけど私ができたので安産の神様がいるこの町に帰ってくることになったのだ。
久しぶりの帰って来たこの町は飛び出した時と変わらずなにもない田舎町。
早く華やかなあの町に帰りたいと強く思っていた。
そんな中わたしが生まれた。
「真夜中にきらりは生まれたんだ。本当バタバタの出産だったけど、生まれたばかりのきらりにマジで感動したんだよな…
病院からの帰り道にふっと空を見上げたらすごい星空が広がってて…大っ嫌いだったこの町の景色に初めて感動したんだ。それから嫌いだったこの町が好きになっていって、生まれる前はたくさん名前の候補があったんだけど、あのキラキラと輝く星の名前からつけたいって思って……ってやっぱり恥ずいわ!」
パパはそう言って照れたように笑った。
「なに恥ずかしがってのさーいいじゃん!それ聞いて私も即賛成したもん。だから今でもここで暮らしてるし、大好きな町で大好きなきらりを育ててるし、まぁ…仕事忙しくてかあーさんにほぼ任せっきりなんだけど」
そう言ってママはケラケラと笑った。
「そっか…僕は初めて高山さんの名前聞いた時からいい名前だなぁって思ってたよ」
その後私は早峰くんにパパとママに聞いたことを話すとそう言ってくれた。
「ありがとう!私自分の名前の意味知ってすごく嬉しいんだ。名前大っ嫌いだったけど今では好きになった。早峰くんのおかげだよありがとう」
私たちはお互い笑いあったのだった。
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「高山さんの名前って変わってるね」
新しいクラスの新しい友達にそう言われた。
前までならそうかな?って言って誤魔化していたけれど今では堂々と胸を張って言える
「そう、星に姫できらり、キラキラネームよ。いい名前でしょ?」
きらりには好きなものがある
私のことが大好きなパパとママとおばーちゃん。
いつも優しい私の名前とよく似た名前の男の子
そして自分の名前が大好きだ。




