洗濯は晴れの日に
昨日の夜はぐっすり寝て、今日は朝から元気いっぱいだ。
団長様のボタンを付け直すのに、老眼鏡がなくても糸を針に通すのに何の苦労もない。
若い体っていいわ。
今考えると、食堂で団長様を半裸にしたのは不敬だったかもしれない。あとでちゃんと謝罪しなくては。
身支度を整え、キッチンへ行く。まだマリさんとケイトさんは出勤してないので、どんな食材があるのかチェックする。
ベーコン、卵、昨日の残りのフォカッチャとほうれん草、チーズ、ミルクがある。
これはあれが作れちゃう。
フォカッチャを薄く切り、深めのオーブンパンに並べて、炒めたベーコンとほうれん草を中に入れ、そこにミルクと混ぜた卵液を流し入る。最後にチーズをかけてオーブンに入れる。私も大好きなベーコンとほうれん草のキッシュだ。
野菜スープの残りは野菜がだいぶ柔らかくなっていたので、潰してポタージュにした。
野菜嫌いの息子たちもポタージュにすれば飲んでくれたから、団員さん達も好きだといいな。
スープを作っている時にマリさんとケイトさんが来たので、フルーツを用意してもらい朝ごはんの準備は終了した。
団員さん達もテーブルから椅子を下ろしてセットしてくれて、いつもより30分早く朝ごはんの準備ができた。
昨日の食材をリメイクしたので、ゴミも少なく済んだし。
キッシュとポタージュは野菜嫌いの団員さん達にも好評だった。
団長様もキッシュが気に入ってくれたようで、
「王宮の食堂より美味しい」と言ってくれたが、それは褒め過ぎだと思う。
そして直したシャツを渡したら、大きな体を小さくしながらお礼を言ってくれた。耳もほんの赤い気がする。
半裸にした事を謝る前に、鍛錬の時間だからと去っていってしまった。
朝食の片付けが終わったら、今日は天気も良いので洗濯をするそうだ。
騎士団の制服は基本は上下濃紺だが、鍛錬中は濃紺のズボンに白のシャツだ。
もちろん物凄く汚れる。洗濯してももう土汚れが落ちずに黄ばんでしまっているシャツが多い。あまりに汚れた物は廃棄してしまうそうだ。
勿体無いな。
私の息子達は野球部に入部していたので、ユニフォームの泥汚れを落とすのに大変苦労した。そして、今世では洗濯機などはない。
そこで前世もお世話になったタライと重曹の出番だ。
朝食の時に沸かしておいたお湯はちょうどいい感じにぬるま湯になっている、そこへ汚れたシャツと重曹、チーズおろしで削った石鹸を入れてつけおき洗い、靴下もここに入れよう。その間にスボンを洗い、終わった頃にシャツを出してすすいだら、シャツはかなり白くなっていた。
お昼前には全て干し終わり、マリさんとケイトさんとゆっくりランチをする事ができた。
「夕ご飯の準備の前に休憩できるなんて信じられないわ、重曹で洗濯物が綺麗になるなんて知らなかったし、アンナちゃんが来てくれて本当に嬉しいわ」とマリさんが言ってくれて、私も嬉しくなった。
「今日の夕ご飯はどうしましょうか?」と私が聞くと。
「そろそろ、王宮の厨房から材料が届けられるので、それを見て決めるのよ」とケイトさんが言った。
そう言っていると、ちょうど材料が入った箱が届けられた。
中には塊肉、ひき肉、トマト、じゃがいも、小麦粉が入っていた。
「トマトか。。みんなトマトは苦手なのよね、ソースにすれば食べるからパスタにしようかしらね。でもパスタを作るのも大変なのよね」
「あ、私は簡単パスタを知っています。ひき肉とトマトでパスタのソースをお願いしてもいいですか?あと、ジャガイモと小麦粉を使っていいでしょうか?」
「塊肉はどうしましょうかね?」とケイトさんが言うので、
「それはお肉の周りに香辛料を塗りこんで、鉄のお鍋で周りを焼いて、蓋をしてオーブンに入れておけば、ローストビーフになります」
「すごいわね、放置している間にできるなんて」
「私の家は家族は多かったので、いろんな所で時間を作らないと、やるべき事が終わらずに寝る時間がが減ってしまうので、色々考えたんです」と言うと。
「なるほどね、だからアンナちゃんは色々知っているのね。すごいわね」
夕ご飯の下準備を終え、洗濯物を取り込み、キッチンに戻った頃に騎士団のみんなが寮に戻ってきた。きっとこれからお風呂なので、その間にさっき作ったポテトのニョッキを茹でる。
マリさんとケイトさんはニョッキに興味深々だ。
「浮かんできたー、これを掬えばいいの?」
「ソースと合わせればいいのね?」
我慢ができず、味見をした2人は
「美味しい!家族にも作ってあげたいわ」
「まだ茹でてないのがたくさんあるので、お家に持って帰って茹でたらどうですか?」
「本当に嬉しいわ!」2人ともすごく喜んでいる。
食堂が騒がしくなってきたので、配膳の為に団員さん達を呼ぼうと思ったら、団長様がひょこっとキッチンに現れた。
「団長様、ちょうどよかった。夕食ができましたので、配膳の為に皆さんを呼んでくださいませんか?」
「ああわかった、今呼んでくるよ」
ケイトさんはそんな私たちを見て、
「アンナちゃんはは団長様が怖くないの?私は今でも話しかける時緊張してしまうの」
「団長様は私の弟。。じゃなくて、お父さんに似てるので怖くないですね、熊さんみたいで可愛いと思います」と私が言ったら。
「熊は可愛くないでしょ、人とか襲うんだから」
「そうですか?もふもふで私は可愛いと思うんですけどね」
そんな話をキッチンのドアのところで聞いていた団長様が顔を真っ赤にして立っていた事に私達は気がつかなかった。
ああ、また堅物団長が可愛い系になってきてしまった。




