新しい世話係
アラン(団長)目線です。
私はアンナ嬢が私のシャツを持って去っていくのを呆然と見守るしかなかった。
今、何が起こった?
宰相から数日前に新しい世話係が来ると聞いた時は、15歳と言う若さに顔をしかめた。
騎士団の独身寮には30人の18歳から20代半ばの男が住んでいる。
はっきり言って若いお嬢さんが暮らす所ではない。現にもう数人に逃げられている。
ベテランの世話係、マリ殿とケイト殿も頑張っているが、掃除をしてもその倍のスピードで汚れて行く。親元から離れてすぐここにきた団員達は庶民出身が多くても、家で家事などはまともにしてこなかったに違いない。
私も遠征などを経験して、簡単な料理は作れるようになったが、他の事は全くダメだ。
母はとても厳しかったが、家はいつも綺麗で、服はきちんと洗濯がされて、ボタンが取れても次の日には必ず直っていた。
私もそれが当たり前だと思っていた。
しかしここにきて、それは大変に恵まれていた事だと知り、なぜベットのシーツは自分で取り替えない限りそのままなのか、本気でわからなかった。
早く嫁を貰えば良いと同僚には言われたが、家事をしてもらうだけの為に結婚するのは女性に対して失礼である。私はこの容貌で気の利いた事も言えない性格だ、結婚してくれる女性もいないだろう。
沢山来ていた縁談の話も30歳を過ぎたらぱったりこなくなった。
たまにいかにも私の団長としての地位だけが狙いで迫ってくる女性はいるが、どうも苦手でつい睨んでしまうとそれ以降見かけなくなる。
そんな私と30人のガサツな男が住む寮に15歳の女の子が住み込みで働くなど到底無理だろうと思ってた。
しかしアンナ嬢は私を怖がるどころか笑いかけてくれた。
そして団員達に囲まれて、さぞかし恐ろしかったろうと思ったが、毅然なる態度で団員たちを従わせ、更には私がいくら言っても手をつけなかった野菜スープを飲ませた。
更に人材不足をカバーする案を次々へと出し、問題を解決して行く聡明さ。
彼女は難しい事は何も言ってない、だが私にとっては目から鱗が落ちるようだった。
そしてたった今、彼女は私のシャツを剥ぎ取る事に成功した。
裁縫はどうにも苦手で、服が汚れたり、破れたらそのまま廃棄していた。
ボタンが取れてもあまり気にしなかった。
そんな私に彼女の一喝は効いた。
何故だろう、あの声で命令されるとつい体が動いてしまう。まるで体に染み付いている習慣のように、20歳も下の15歳の娘の言葉に思わず従ってしまうのだ。
そして彼女は半裸の私を見てもひとかけらも動揺しなかった。
体は鍛えているので自信があったが、見事に何も反応してもらえなかった。
思い出すだけで、胸がドキドキして顔が赤くなる。
「私は彼女に一目惚れしたのか?」
35歳にして遅すぎる春が来た。




