騎士団寮へお引越し
私が正式に配属されたのはその数日後だった。
2週間ぐらいかかるかなと思ったが、宰相様がかなり頑張ったらしい。
とりあえず私が聖女であるのを知るのは、神殿長様と宰相様だけだ。騎士団長様にも話そうと思ったが、かなりの堅物で融通が効かないのそうなので、私が宰相の姪っ子で寮の仕事をメインに、時間の空いた時は宰相様の事務仕事も手伝う事になったと団長様には伝えたそうだ。
団長様は15歳という年齢に難色を示されたそうだが、歳よりしっかりしてる事と流石に2人では30人の世話は無理で人が必要だと宰相様が力説したらしい。
騎士団長様は私が慣れるまで、一緒に独身寮に住み込みしてくれるそう。
その話を引越し前に宰相様に会いに行った時に聞いたのだが。
「団長様のご家族はそれで大丈夫なのでしょうか?私は大丈夫ですよ?」
「彼は団長用の専用宿舎があるが、独身なので問題ない、今年35歳だが結婚する気はないようだ」
「35歳で団長とは優秀な方なんですね」
「ああ、剣で彼の上に出る物はいないな、討伐でもSランクの魔物を1人で退治した事もある。生真面目な性格で女性との浮いた話は全く聞いた事がないな。彼の両親が婚約者候補を用意しても、仕事が忙しいとすぐに断ってしまうそうだ」
でも私を心配して、泊まり込んでくれるなら面倒見の良い人なんだろうな。
「じゃあ、騎士団の寮に行こうか、ちょうどみんなが鍛錬から戻る時間だ」
私は宰相様について行く。荷物は宰相様が持ってくれた。
「少ないな」とびっくりしていたが、神殿暮らしだったので、あまり個人の持ち物がないのよね。
騎士団では制服の支給があるそうなので、私服も街に出る以外ではいらなさそう。
「騎士団長自らのお出迎えだぞ」と宰相様が言うので、顔を上げると背の高い体格の良い男性が寮の入り口に立っていた。
明るい茶髪に緑の目をしたがっしりした男性で。。そう。。熊のように見える。
「初めまして、アンナと申します。これから宜しくお願いいたします」
「アンナ嬢、騎士団長のアラン・カルドウェルだ、宜しく頼む」
顔は悪くないのに、仮面でも被っているのかと思うほど真顔だ、口は動いているが他の表情筋が動いていない。そして緑の目は猛禽類のように厳しい。
普通の15歳なら泣いてしまうレベルだが、35歳なら前世の弟と同じ歳だ。柔道部でかなり体格がよく、強面だったがとても優しい子だった。
弟に会えたようで嬉しくなって、ニコッと笑いかけると。団長様はちょっとびっくりした顔をした。
「私が怖くないようで安心した。大抵子供や若い女性には怖がられる事が多くてな」
「私は団長様は怖いとは思いませんが」
むしろ可愛い。
「大家族で家事は小さい頃からしていたので、お役に立てると思います」
「そうか、ここは男だらけでむさ苦しいが宜しく頼む。聞いていると思うが、私もアンナ嬢が慣れるまではここに住むので、困ったことがあれば何でも言ってくれ」
息子達の世話で慣れているし、年齢的に独身寮にいる騎士たちはそれぐらいの歳だろうから大丈夫だろう。ちょっと人数が多いが1人ではないしね。
宰相様にはお世話係の仕事が落ち着いたら、執務室に行く約束をしてここで別れた。団長様は私の使う部屋に案内してくれた。
「荷物はこれだけか?女性の荷物はもっと多いと思っていたが」と鞄を持ってくれた。
「神殿。。じゃなくて、田舎ではあまり物を買う機会もなく、こちらでは制服が支給されると聞いていましたので、本と数枚の私服ぐらいしか持ってないのです。あまり物欲もないですし」
前世では稼いだお金は食費と息子達にほとんど使ったから自分の分は最低限だったしね。
別棟にある部屋について荷物を置いたら、今度は夕ご飯の準備中である2人の女性に会いに行った。
キッチンはまさに戦場だった。




