オカンはやっぱり強かった
話は少し戻ります。
私が兄くんと逃げ出す相談をしていると、突然ドアが開いて、外国人訛りの男が入ってきた。
「おやおや、どこに行こうとしているんだね?君は聖女様に丸め込まれたのか?私が聖女を連れて帰らないと、妹の命はないのは分かっているんだろうな」
それを聞いてガクガク震える兄くん。
「俺はどうなってもいいから、妹だけは」
その間、私はその外国人の男を見ていた。
チェックポイント1: 武器を手に持っていない
チェックポイント2: 1人しかいない
チェックポイント3: 私と戻らないと妹は殺される=妹の居場所を知っている
チェックポイント4:男は私に背を向けている
子供相手だからとしても、気を抜きすぎだろう。
私はベットサイドにあった花瓶を男の頭に投げつけた。
不意打ちを喰らった男は床に倒れ込む。
「今よ、兄くん。押さえつけて」
私はその間に自分の入っていた麻袋を男に被せる。
男は我に返って、外国語訛りの叫び声をあげてキーキー言っているが、2人がかりで男の上に乗る。
うるさいので、もう一個花瓶はないだろうかと周りをみていたら、アラン様が飛び込んできた。
「アラン様、手伝ってくれますか?」
アラン様は状況が理解できなかったのか、一瞬固まったが。すぐに暴れる男を拘束した。
その後から追いかけてきたロブさんは部屋の惨状を見て。
「団長、いくらなんでも花瓶で殴る事ないでしょう」
「いや。。俺じゃない」とアラン様は兄くんの方を見たが。
兄くんは私を見た。
そして全員が私を見た。
「えへ、私でーす。散らかしてごめんなさい」
アラン様は男をロブさんに渡して、私の方にくると。ぎゅっと私を抱きしめた。
「お願いだから、無茶はやめてくれ」
私は「私は大丈夫よ、心配かけてごめんね」とアラン様の頭を撫でてあげた。
弟くんは兄くんと抱き合って泣いている。
ロブさんはその間に男を締め上げて、妹さんの居場所を聞き出していた。仕事の出来る男である。
私達はそのままロブさんの知り合いの自衛団の皆さんと一緒に妹さんがいるアジトに乗り込み、無事に妹さんを救出。
妹さんは怪我はしてなかったが、念のため神殿の治療院に連れて行って、治癒の聖女ちゃんに診てもらった。やや衰弱しているが問題はないとの事で妹さんはパン屋の兄弟と家に帰る事ができた。
隣国の誘拐犯と借金取りは王宮の牢獄へ入れる為、ロブさんが護送用の馬車に詰め込み、王都に先に帰る事になった。ロブさんの休暇が短くなって申し訳ない。
私とアラン様は状況を説明する為に神殿長室に向かい、ノックをして部屋に入ると神殿長様と一緒に宰相様もいらっしゃった。
宰相様は呆れた顔をしながら
「アンナ、お前の後ろに熊がくっついてるが気づいているか?」と聞いてきた。
そう、宿からアラン様が私をまさにベアハグをしたまま離してくれないので、そのままにしていた。
「もう、気が済むまでさせようかと思って」
するとアラン様は向かい合わせになる様にくるりと私を回して、
「アンナは豊穣の聖女なのか?」と聞いてきた。
「そうよ、だから寮の家庭菜園がすごい事になっちゃったの、黙っててごめんなさい、宰相様がアラン様には内緒っていうから」
それを聞いたアラン様は宰相様を睨みつけた。
「マーク、アンナが聖女と言えばどうせ俺が反対すると思ったんだろう。だが今回はお前のおかげでアンナに会えたので感謝する」
アラン様は私の事を見つめながら何か考えているようだ。そしてやっと話始めた。
「アンナ、本当は2人きりの時に言うつもりだったが、神殿長様もいるこのチャンスを逃したくない。君が来年成人したら私と結婚してくれないか?もう、君なしの生活は考えられないんだ」
「。。。はい?私と結婚したいんですか?」
「私は君よりかなり歳上だし、無愛想で気の利いた事もいえない。でも一生君の事を守るし、大切にする。この場で返事とは言わないが、来週の君の誕生日の日に返事をくれないか?」
そしてアラン様は神殿長の方に向かって。
「神殿長、聖女アンナ様に求婚する許可をいただけますか?」
神殿長はにっこり笑って。
「アンナには親がいなくてね、私が親代わりとして小さい時から育ててきたんだ。アンナを幸せにしてくれるなら賛成だよ。もちろん、アンナの気持ち次第だが」
神殿長の言葉に思わずうるっとしてしまった。この世界に来た時に私には家族がいないと知り絶望したけど、神殿長はいつも側にいてくれた、お父さんのような存在だ。
そして私たちは次の日に王都に帰る事になった。
オカンは息子達(もしくは同年代の子供)を守る為ならなんでもします。




