寮で家庭菜園
さて、昨日は宰相様は追っかけって来なかったので、きっと本気ではなかったと思うが。とりあえず今日は執務室に行くのはやめておこう。
折角誰もいないんだから、床掃除のチャンス。今日は雑巾を使って食堂の床を掃除しよう。
今日はマリさんとケイトさんも出勤してきてたので、3人でおやつのプリンをかけて雑巾掛けレースをした。
「これは賞品をローストビーフにすれば、団員の皆様にもやってもらえるかもしれないですね」
「すごく楽しいから、廊下でもやりたいわ」
お二人ともとても楽しそうだ。
「今日はアンナちゃんは宰相様の所のお手伝いじゃないの?」と勝者のケイトさんがプリンを食べながら聞いてきた。
「叔父様とは昨日喧嘩したので、お手伝いしません!」
「あらー、宰相様はこんな可愛い子を怒らせる様な事を言ったのかしら?」
「お見合いしろって迫ってくるので」
「結婚も悪くないわよ」と2人はいうが。
ケイトさんと旦那さんはまだお子さんいないし、ほぼ毎日お迎えに来てくれる。
マリさんの所は旦那さん家族が子供の面倒を見てくれるので、働きに出る体制がバッチリだ。
「とにかく今は考えられないので」というと2人はニヤニヤしながら。
「素敵な人が現れたら、考えが変わるかもね。もう現れてたりして」なんて言ってるし。
マリさん達からみたら、私にとって20歳前後の団員さん達は結婚相手に最適だと思うんだろうけど、何せ中身はアラフォー、息子達の同級生の世話をしている気分で恋愛感情は生まれないな。
お昼の後は野菜の種を持って外に出た。
実はキッチンの外に、アラン様に頼んで耕してもらった畑がある。
そこまで広くはないが、遠征出発前の忙しい時に作ってくださり、本当に感謝している。
寮での食事の材料は王宮のキッチンから運ばれてくる。しかし材料は向こうが選んで入れるので、材料に偏りができてしまってる。特に野菜類はいつも同じ物。
騎士の仕事は身体が資本なので、なるべくバランスよく食べてもらいたい。
なので、その事をアラン様に相談したら、家庭菜園をしてみてはどうかと提案された。
「最近王都でも家庭菜園で野菜がよく育つって話なんだよ。気候は去年とあまり変わらないのに、何故だろうね?」とアラン様が不思議がってたが。
まあ原因は、きっと私だろう。
まさか私と畑の距離でそんなに収穫量が変わるとは思っていなかった。少し王都から離れている神殿には畑はなかったし。
なので、もし私が育てたらどこまで育つのか実験したい。
今は夏の終わり。ちょっと野菜を植えるには遅いけど、この国は気候も温暖だし、豆や葉物野菜ならすぐ育つだろう。
私は枝豆とレタス、キャベツ、大根を植えることにした。
この世界に枝豆や大根があることにびっくりした。探せばお米とかもあるのかな?
種を蒔いて、水をやりながら
「早く大きくなーれ」と言ってみた。
早く枝豆を塩茹でして食べたいな。ビール(こちらではエール)があれば最高だが、今世ではまだ私は未成年だしね。
次の日の朝、私は全く自分の能力を理解してなかった事に気がついた。
慌てた私はある人を呼びにいった。
その日の午後、畑の前には青筋を立てた宰相様と遠征から帰ってきたばかりの困惑したアラン様と困った顔で立ち尽くす私がいた。
「どうして、こうなったんですかね?」と呟いた私に、宰相様は冷たい視線を送るだけだった。
「アンナ、この野菜はいつ植えたんだ?」とアラン様がもりもりに育った枝豆を引っ張りながら私に聞く。
「えっと1ヶ月前ですかね?」
「畑を作ったのは、私たちが遠征に行く直前だから3日前だよね」
「そうでしたっけ??ははは」
宰相様はため息を吐きながら。
「昨日、豊穣の聖女様が王宮にいらしたので、その影響かもしれませんね」と言いつつ、私に近づき。
「家庭菜園は禁止だ」と誰にも聞こえない様にぼそっと言った。
そんなーー。
とりあえず枝豆でも収穫するか、明日はロールキャベツだな。ふろふき大根もいい。
「塩茹で枝豆はエールによく合うので、遠征終了のお祝いに作りますねー」
「アンナ、君は未成年だからエールは飲んだ事ないよね」とアラン様がいう。
「。。ってお父様が言ってました」
ボロが出る前に、私は収穫した枝豆を持ってそそくさとキッチンへ戻った。
そんな私を見つめながら
「アラン、ちょっと話がある俺の執務室に来てくれ」と宰相様はアラン様を連れて王宮へ帰って行った。
こちらで手に入る枝豆は冷凍なので、採れたて枝豆を食べたいと思って植えてみたら2さやしかできませんでした。私も豊穣の力が欲しい。




