部屋のミイラ
„FLECTERE SI NEQUEO SUPEROS, ACHERONTA MOVEBO”
少し格好つけてしまったな。ただこれは書き残そうと思う。
今日、勢いで買ってしまった一軒家に行ってきた。いや行ってしまったの方が正しいだろうか。私は立て付けの悪い引き戸の玄関をノコギリの様に挽き開き目の前の光景に腰を抜かしたのだ。
それは死体、おおよそ身なりが女性と形容できる茶のジャンパースカートを着た死体が正座していた。腐敗はしてなく黒く失礼かもしれないが肌がハモンの様だった。これは夢にしてはディテールがあるなと思い疑った、その真実を確かめるべく頬をつねることにした。頬をつねるというテンプレを実際にしてみたのはこれが初めてだった。なんかこういうのは、すごく素敵な事があった時にしたかったものだ。
気が動転していた、私はあからさまにミイラなその体躯を肩を作用点に揺さぶる。ただ安否の確認をしたかった。結果は揺さぶりをやめてわかった。嗚呼、人の体は何故こんなにも重心が上に偏っているのだろうか、ただそれが死体であることを転倒が知らせるだけなのに。酷いバランスだ。
絶望が私を襲う中、俯いた視線の先に手紙があった。このとき私は手に取らなければという使命感に駆られた。懐にし110番に掛けなすべきことを為した。もし、この手紙にドッキリ大成功と書いてあったりしても許されることではない、そう思った。そうではなかった。結論から言うとこの世界ではないどこかのだれかの恋文だった。