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テーマ詩集:花壇

まばらな綿毛を抱いた空飛ぶタンポポ

作者: 歌川 詩季

 ヒマワリほど、描きやすくない。

 うまれたてのあたしたちは

 綿毛(わたげ)を抱いたタンポポみたいに

 無数の翼をはやしてたんだけど

 そのほとんどを風に散らせてはじめて

 ひとつの空に飛んでゆけるようになる


 翼はそのいちまい いちまいが

 じぶんの飛びたい空を それぞれめざすから

 ひとつの空をえらんでくれないし

 背中を埋める無数の翼は それじたいが重すぎて

 いくらはばたいても あたしたちの(かかと)

 浮かせることすらできなかった


 でも ()せてしまった翼や

 じぶんの背中にあわない翼を

 風に散らしながら生きてきて

 あたしたちは ようやく

 ひとつの空をえらんで飛んでゆけるようになるんだ


 翼のまばらになった背中は

 多くを持たざる者ゆえの軽さをして

 数を減らした翼たちのめざす空も

 だいたい しぼれてきた


 そのぶん はばたきがうむ可能性も

 ずいぶんとちいさくなったけど

 いまの背中にはえてる翼でもじゅうぶん

 あたしたちの(かかと)を浮かせてやることはできる


 抱いてたほとんどの綿毛(わたげ)

 散らしてしまったタンポポだけど

 やっとその根をうずめていた地表から

 さよならできるんだ


 だから翼を散らしてしまった風を

 うらむことなんてしないよ

 たとえ 散ってしまった翼に

 痛みや哀しみをおぼえたとしても

 そんな痛みや哀しみこそ

 あたしたちが飛びたつために必要だったもの

 そんな痛みや悲しみこそ いわば

 あたしたちの新しい翼でさえあるのだ


 のこり少なくなったうまれながらの翼と

 多くの翼を失ったことで得た新しい翼

 そのはばたきが あたしたちを

 ひとつの空へと飛びたたせる


 あたしたちは

 まばらな綿毛(わたげ)を抱いた空飛ぶタンポポだ

「綿毛=翼」だけだと、わりと使われてるので、ひとひねり。

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