安定の褒めポジ幼女ちゃん
「結局ゴブリンはどうしたんですかね」
「なんだかイライラするわね、あの女召喚士。クラスが上だからって上から目線だし」
まあ言いたいことはわかるけどね。
大抵序盤に出てきて強さを見せつけてくるキャラなんて、あんなもんですよ。
「私……何も喋れなかった」
アイラちゃん会話に入ってこなかったもんな。
「だって……あの人はね……」
アイラは俯いて黙り込んだ。
気になるから、そこで止めないでよ。
「……だってあの人は噂に聞く、伝説の召喚士ミルラさんだったんだもん」
あー……そういう設定なのね。
「あの女召喚士が?」
「あの光り輝く光の杖に黒いローブ……。多分間違いないよ。
うわさに聞いてた通りの恰好だったもの。……ロアルもそう思うでしょ?」
「……いいえ」
まあここはね、とりあえずね。
「そう……思うの?じゃあわたしの見間違いだったかもしれない」
あれ?まさかのこれ分岐ですか?はい、と言うまでのループは無いの?
「そうよ。あの女召喚士は違うわよ。
もし伝説の召喚士ミルラであるならば、
ちゃんとギルドに申請をしていて、もう少し丁寧な言葉遣いで話すと思うわ。
安心して食べてくださいね、と言って私たちに思う存分食べ物をご馳走してくれるはずよ。
そして最後にアドバイスを言って華麗に去っていくものなの」
ルビアさん言いたいことはわかったけど、それは理想が過ぎるよ。
「そうだよね。たぶん私の見間違いだ……。違ったんだね」
はい、勘違いルート入りましたあ。
どうみても実力は伝説の召喚士並みだったでしょ。
装備もすごかったし、ケルベロスもいたし。態度はさておき。
そういえば、さっきの料理食べてなかったけど……。
「あのさ、さっき召喚された料理はどうする?せっかく召喚してもらったんだから……」
「……そういえば、何か忘れているような気がするわ」
もうスルーは慣れたが、どっちだ?
料理か?それともゴブリン退治か?
「……それさっきも言ったけど、何かを退治するのではなかったんですかね?」
「えっと……ロワールわかる?」
これはまた一段と話を聞かなくなってんね。そしてロワールって誰だよ。
「だから、ゴブリンを倒すんでしょ。洞窟の奥にいる」
「……そうだったわね。あの騒動で忘れてしまっていたわ」
「駄目だよ、大事なことを忘れちゃ。ロアル教えてくれてありがとうね」
安定の褒めポジ幼女ちゃん。
「じゃあ、さっそく洞窟の奥に行くことにしましょう」
……何だか時々おかしくなるんだよなルビアさんは。
「気を付けていこう」
ふとロアルが料理があった場所を見ると、そこには何もなくなっていた。
あれ料理が消えている。あそこにあったはずなのに。
もう戻しちゃったのかな?美味しそうだったから食べたかったのにな。
◇
ロアル達は洞窟をさらに進んで行き、洞窟の奥に辿りついた。
「もう行き止まりみたいですね。ここにゴブリンがいるって話でしたけど……いませんね」
「グルルル……」
ん?今声が……?気のせいか?
「なんか今、魔物の声が聞こえませんでしたか?」
「……さて、ゴブリンも倒したことだし、ダンジョンを脱出しましょう」
え?
「ロアルもなかなかやるよね。私見直しちゃったよ」
安定の褒めポジ幼女ちゃん。……っていや俺、何もやってませんけど。
「じゃあゴブリンも無事に倒したことだし、ダンジョン脱出の魔法を唱えるわよ」
「はーい」
いやちょっと待て。
このゲームのフラグ管理どうなってんだよ。まだ魔物を一匹たりとも倒してないんだが?
ルビアは脱出の魔法を唱え、洞窟から脱出した。