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序盤に強さを見せつけてくるきれーなおねーさん来た

 ということで洞窟を進むことになったわけだが。まだ魔物は現れないか。

 ロアル達は松明を頼りに、暗い洞窟を進んでいく。


「そういえばこのパーティにはヒーラーがいませんね」


「私は回復魔法を使えるよ」


「魔物使いなのに?」


「以前、僧侶をしていたの」


「ふーん……」


「だからケガとかしたら言ってね」


「うん」

 怪我はしたくないけど。


「アイラは魔物の傷を癒すために、回復魔法を覚えたらしいわよ」


「なるほど、魔物使いとしては魔物を回復できると助かるわけか」


「回復魔法は一通り使えるから、たとえロアルが瀕死になっても大丈夫よ」

 それは頼りになるけど、瀕死にはなりたくないな。


 あのドラゴンの手綱さばきもあったし。回復魔法も一通り使えるなんて。

 どうやら実力はあるようだね、アイラちゃんは。



「ちょっとまって……何か声が聞こえるよ」


 薄暗い洞窟の奥から人の声が聞こえた。


「山盛りのパンを、ここに召喚する。召喚!」


 すると魔法陣が現れ、薄暗い洞窟に光りを放った。

 その光が白く変わり、辺りに飛散する。


 白いモヤが魔方陣から溢れ出てきて、次第にその量を増す。

 そのモヤが晴れていくとき……。

 魔法陣は再び光り、やがてどんどん黒くなり、その光りは虚空に去った。


 不気味な食べ物が召喚された。対象のレベルは不明だ。


「うわっ、まぶし」

 こんな暗い洞窟で召喚しされたんじゃ、光ってしょうがない。

 しかもパンの召喚とか聞こえたけど?また見習い召喚士の勘違い召喚か?


「……これはいけないわね」



「すいません。今お腹が空いていて、どうしても食べ物を召喚したくて」

 見習い召喚士の青年は項垂れながら言った。


 しかし食べ物を召喚できるようになれれば、もう何もいらないよね。

 必要なもの全部召喚しちゃえば良いじゃん?


「上位の召喚士でもそれは許されていない。

本当に、本当に必要な時に許可を取ってしか……。

わかっているの?その食べ物はどこかの誰かから奪うことになるのよ」


 それは正論。ルビアちゃん、いつになく熱いね。


「でもお腹が空いて、歩くのもきつい状況で……」

 見習い召喚士の青年は、お腹を押さえながら言った。


「お腹が空いたら野草をたべよう」


 アイラちゃん、それはさすがに……。


 するとロアル達の背後から、女性の声が聞こえた。


「あらあら駄目ね……。こんなことをしちゃ」


「誰?」


 ロアル達が振り向くと、そこには召喚士の女性がいた。


 あの強そうで高級そうな装備。

 光る杖に黒いローブか。ルビアさんといい勝負だな。……いや、多分あちらのほうが上だろう。


 ……序盤にアドバイスして、去っていく強キャラかな?

 それにしてもきれーなおねーさんだ。


「それ、もらえるかしら?」


「これですか?とても食べることはできないと思いますが」


 召喚士の女性は見習い召喚士の青年から、不気味な食べ物を受け取った。


「ほらこれ、もったいないからお食べ」


 召喚士の女性は連れまわしている自分の魔獣に、それを食べさした。


 そんなもの食べさして大丈夫か?


「これは向こうの世界では立派な食べ物なのよ。人間には食べることはできないけれど」


 魔獣用の食べ物だったのか。

 しかし……よく見たら、あの連れている魔獣はケルベロスだろうか?

 やけに小さいが見れば見るほど、ケルベロスによく似ている。


「最近はやたらと見習い召喚士を見かけますが。

だめですよ、食べ物を粗末にしては。私がここで手本を見せてあげましょう。

私の料理を、ここに召喚する」


 すると魔法陣が現れ、薄暗い洞窟に光りを放った。

 その光が白く変わり、周囲に飛散する。


 白いモヤが魔方陣から溢れ出てきて、次第にその量を増す。

 そのモヤが晴れていくとき……。

 魔法陣は再び光り、やがてどんどん輝きを増し、その光りは輝きながら去っていった。


 美味しそうな料理の数々が召喚された。対象のレベルは不明だ。


 ……はい、チートきた。

 序盤に強さを見せつけてくるチート召喚士来た。


 普通に美味しそうな食べ物を召喚したよ。

 もう、いいじゃん。やっぱり召喚士だけで回るよこの世界。



「食べ物の召喚とはこうやるものなのよ。わかったかしら?

どうやらお腹が空いてるようだから、あなたたちにはこれを差し上げましょう」

 美味しそうな料理の数々を目の前にして、召喚士の女性は言った。


 そこには何故かテーブルや食器までもが召喚されていた。


「本当に良いんですか?」


「先ほどの魔獣の餌を、食事代としてもらっておくわ」

 そう言われると、見習い召喚士の青年は料理にがっつき始めた。


「美味しい……」

 そりゃあ美味しいだろうな。お腹空いてんなら余計に。


「……禁止されているはずよ」


「他の世界からではないわ。自分のお店からなら何も問題はないでしょう?何か文句でも?」


「…………」

 自分のお店……?

 ルビアさん言い負かされてるじゃん。なんだか可哀そうに見えてきた。


「あら、あなたよく見ると……?」

 召喚士の女性はロアルを見つめて言った。


 この展開は……主人公補正がまたきたのか。


「どうやら何か不思議な力を持っているようね」


 まあな。


「でも……何か言いたいことでもあるようね?」


「いや別にないけど?」


「……何か言いたいことでもあるようね?」


 いや無いんだって。


 期待する目でルビアとアイラはロアルを見つめていた。


 この状況……。なんて言えばいいんだろう。

 反発するか?迎合するか……?


「……おねーさんきれーですよね」


「……そうよ。よく言ったわね、ロアル。

たとえ自分のお店からだとしても、食べ物を召喚することは禁止されているわ」


 あれ?なんでそうなるの?やっぱルビアさんバグってんな。



「たとえ自分のお店からだとしても、食べ物を召喚することは禁止されているわ」


 確かそうみたいなんだよね。召喚術のルールとして、

 食品など魔物以外の物品を召喚する際は申請して認められなければ、召喚することはできないらしい。


 もっとも隠れて試す人は大勢いるが、普通は召喚することができない。

 物品の望んだものを召喚するには、最上位のクラスにしかできないと言われている。


「あらそう、じゃあ私を通報して牢屋にでもぶち込むつもり?」


「それは……」


「もうやめてもらえばいいんじゃないですかね。それか申請をすれば済む話だし」

 おねーさんは最上位の召喚士だろうから、何も問題ないはずだし。

 あれ?もしかして申請もしたうえでの演出なのか?これ。


「話にならないわね、それじゃあ私はこれで。そのお仲間さんを大事にすることね」


「……くっ」


「ありがとうございました」

 見習い召喚士の青年は、急に大きな声で言った。


 クエストクリア。


 え?なんかイベントが勝手に終わったぞ。ゴブリン倒してないけど。

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