ただの幼女じゃん
「でもいろいろあって、克服したんだけどね。」
「ということは、今は大丈夫なんですか?」
「でもスキルは取っていないの。だから魔物を手なずけることはできない」
いや振れよ。少しでも振れよ。
「それって召喚士としてやばくないですか?」
「だから魔物使いと行動を共にしていたのよ。今は訳あって別行動をしているけれど」
「じゃあ魔物使いのスキルを振ったらいいんじゃないですか?」
「だから魔物使いと行動を共にしていたのよ。今は訳あって別行動をしているけれど」
ルビアちゃん……。
「スキルを振るポイントがないんですか?」
「そうなの……。
だから魔物使いと行動を共にしていたのよ。今は訳あって別行動をしているけれど」
なんて言えばいいのん?
「じゃあいっそのこと今から魔物使いになったらどうですか?」
「…………」
うん。なんかごめん。
◇
「じゃあその魔物使いと合流しましょうよ」
「そうしたいのはやまやまなんだけどね」
これだったか。やっと無限のループから抜け出せた。
「何か問題でも?」
「今どこにいるかわからなくって」
は?
「何か魔法は使えないんですか?」
「魔法?」
「ほら、相手の位置がわかる魔法とか。遠くに思いを伝える魔法とか」
「なにそれ?そんなものなくても簡単に呼び出せるじゃない。
……でも今の私には魔法力がない、そうだわ!
ちょうどあなたが人を呼び出せるかどうか試してみたかったの」
それはちょっと猿芝居すぎやしませんかね?しかも展開が無理やりすぎる。
「まあやるだけやってみましょうかね」
さっきもこんな展開だったけど、まだチュートリアルですか?これは。
「さっきは運よく呼べたじゃない?あれが奇跡じゃないことを今証明するのよ」
あれ?召喚出来たことにされてるよ?
「グルルルルアアアアアアアア」
「ん?」
ロアルが上を見ると、上空からレッドドラゴンが間近まで迫っていた。
そういえば忘れてたよ、ドラゴン来ていたこと。
「あの、ルビアさんさっきのドラゴンがすぐそこまで来ていますよ」
「さっきは運よく呼べたじゃない?あれが奇跡じゃないことを今証明するのよ」
「いや、まず逃げたほうがよくないですか?」
ほら、こちらに向けて今すぐにでも炎を吐いてきそうですけど。
「さっきは運よく呼べたじゃない?あれが奇跡じゃないことを証明するのよ」
いや待て、ルビアさんバグってね?
「うわ、こっちに突進してきますよ」
躱せそうにない。ちょっ……まて……。
ドラゴンは猛スピードでロアル達に突進を開始すると……。
ぶつかる寸前にドラコンは消失した。
……えっ。
ちょっと待って……消えたんだけど。
今、確かに見た。
こちらに突進してきた、ドラゴンの姿が消えたのだ。
マップ上からも存在が消失していた。
まあ今俺が死んだらゲームとして成り立たないのかもしれないけどさ。
これバグじゃねーの。ルビアさん……の力とでもいうのか?
なんかフラグ立てミスったかな……?
まあ……細かいこと考えていてもしょうがないし、気にしないで進めるしかないか……。
「さっきは運よく呼べたじゃない?あれが奇跡じゃないことを証明するのよ」
はいはい、わかりましたよ。
◇
「魔物使いを、ここに召喚する」
魔法陣は白く光り、空に去った。やがてモヤが晴れ、現れたのは……。
魔物使いが召喚された。対象のレベルは30だ。
あれ、成功したの?初めてちゃんと成功したよ?
しかも言われた通りの人間を召喚できた。
現れた魔物使いは、緑の煌めく鎧を纏ったピンク髪の幼女。
魔物使いって……いや全然イメージと違うよ?
鎧でがっちりと固めて、まるで戦士かと思える見た目。
しかも斧を装備してるじゃん?なのに容姿はただの幼女じゃん?
とりあえずキャラデザしたやつを、ぶっ飛ばしたくなった。
「やったわね、やっぱり私の目は間違ってなかった」
うん。それはいいんだけどさ。
「ところでさ、なんでそんな重装備なの?」
「……そう。この子が私の仲間の魔物使いアイラよ。
彼女はとても優秀で、頼りになるはずよ。これで仲間は揃ったわね」
「なんだか状況がよくわからないけど……。挨拶はしておくよ。よろしくね」
安定の定型文。
うーん、ここまでがチュートリアルかな。
でもこれ……ぶっちゃけ熟練度とかレベルとか関係ないよね。
絶対召喚に成功する強制固定イベントなんだよなあ。
でもこんな序盤でバグが発生するとか、クソゲーなんだよなあ。
キャラが可愛いからまだ許せるけど。