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雷の魔獣

「早速森の見回りをするんですか?俺以外にこの森に召喚士がいるとは思えませんが」


「そうよ。きっとまだこの森には見習い召喚士がいる。……待って、何か聞こえるわ」

 そう言うとルビアは耳を澄ました。


「そんな音、聞こえますか?」

 そんなにすぐに見つかるものか?


 ロアルは耳を澄ました。数秒後、森のすぐ向こうの方から声が聞こえた。


「おねがい!今日こそ頼むわ!雷の魔獣」


 ……普通にいましたね。しかもすぐ近くに。

 これはあまりにも出来すぎている。


「ここでも見習い召喚士が召喚術の練習をやっていましたか。

さっそく話しかけますか?」


「あのタイプはだめよ。私が話すとすぐに逃げていきそうな顔をしているもの」


 うーん……。そんな顔してるか?


「こういうときこそあなたの出番よ。えーっと……」


「ロアルです」


 覚えてないな?これは。


「……ああいう人は一度言い出したらなかなか聞かないの。

でもあなたみたいな同じ境遇の人の話は聞く」


 なんでわかるのよ。なんか感知スキルでも持ってるのか?


「だから最初の接触は頼んだわよ。あなたの今後がかかっていると思って」


 なんか俺、良いように使われてね?

 でもまあ仕方ないか。受けちゃったもんな。


 ロアルは、緑のローブを着たピンク髪の見習い召喚士に近づいた。



「あのー、こんにちは」


「今しゃべりかけないで」


「いやそうは言っても」


 これ面倒な人だ。どうすりゃいいんだ。


 ロアルがふと来た道に視線を移すと、ルビアがこちらを見つめていた。

 あの目、明らかに監視している目だな。まだあきらめて帰るわけにはいかないか。


「あのー」


「喋りかけないでと言ったでしょ。私に何度同じ話をさせるの?」


 うん。これはツンデレキャラかな?これ最序盤に出すべきキャラかな?

 よし、ここはもう一押し。


「……やっぱりお話は無理ですか?」


「……これで私に三回話しかけたわね。条件はクリアしたわ。今次の案を練っているの」


 三回話しかけたとか、言っちゃダメなやつじゃん?


「それで今どういう状況ですか?」


「だから、次の召喚の案を練っているの」


「そう……」


 二度同じこと言っちゃってますけどいいんですか?


「何度やってもどうしてもうまくいかないの。

雷の魔獣の召喚。もう少しなんだけどね。だから今、他に方法がないか色々試しているところなの」


「そういえば、仲間にハイクラスの召喚士がいるんだけど……」


「なにそれ早くそれを言いなさいよ、早速話を聞かなくちゃ」


 そしてロアルはルビアのもとに合流した。


 うーん。この展開は……フラグ通り。



「水に住む魚の魔物が私の村に大量発生して。どうしても雷の魔獣の力が必要なんです」


 上の者には、急にかしこまって話だす人だ。


「そうなんですか。あなたはいつ召喚士になったの?」


「先月です」


「それじゃあまだ経験不足ね。召喚士の熟練度を上げて、ハイクラスにならなくては。

三大上級召喚術の一つ、雷の魔獣の召喚は無理ね」


 いや、俺には急にやれって言ってたじゃん。


「でもなんか雷の魔獣に似たようなモンスターは出てくるんですよ。

それでなんとかなるかなと思って……私、今育てています」


「どんなモンスターなんだ?」


「向こうにいる……あれなんですが。雷を力を持つネズミのモンスターです」


 指さす方向を見ると、雷を力を持つネズミのモンスターがいた。


 ちょっと待て。それどう見ても〇〇チュウじゃん。


「毎日やっていたら、見よう見まねで召喚術を頑張っていたら、たくさん増えました」


 たくさんいた。もう〇〇チュウの森じゃん。


「このモンスターをどうにか使って、魚の魔物をどうにかしようと思っているのですが……。

私だけではどうしようもなくて」


「魔物使いが必要ね」


 それは……的確な判断……か?


「でも今時、魔物使いなんてなかなかいませんよ。そもそもなる人がいませんもんね」


「そうね。じゃあ今回は私が魔物使いを召喚することに致しましょう。

それでとりあえずは万事解決よ」


「そんなことできるんですか?」


「何を言っているの?私はハイクラスの召喚士よ。大抵のものは召喚できるのよ」


「それはすごいですね」

 いや本当にできるの?


「それなら魚の魔物たちも何とかなりそうです」

 そうか?


「じゃあ早速呼び出すわよ。いい?しっかり見ているのよ」

 ちょっと待て、展開が早い。二人だけでイベント進めんなし。



「魔物使いを、ここに召喚する」


 すると魔法陣が現れ、周辺に眩い光りを放った。

 大きな魔方陣がルビアの前に現れた。

 その光が真っ白に変わり、上空にすーっと伸びる。

 

 間違いない。これは人を召喚する魔法陣の光だ。

 すごい。まじまじと見たことはなかったけど、これがハイクラスの力か。


 白いモヤが魔方陣から溢れ出てきて、次第にその量を増す。


 そのモヤが晴れていくとき……。

 魔法陣は再び光り、やがてどんどん黒くなり、その光りは空に去った。


 やがてモヤが晴れ、現れたのは……。


 モフモフのペンギンが召喚された。

 対象のレベルは10だ。


「可愛いモンスターですね」


「あれ、そんなはずはもう一度……」



 ……どうやら結果は同じようですね。


「なぜかしら」


「思いの力が足りなかったんじゃないですか?」

 あなたの言葉ですよ。


「そんなはずは……術式はあっていたはず」


 おい、人の話を聞いてね?


「まあ、こんなこともありますよ」


「そんなはずは……術式はあっていたはず」

 いや?え?このイベントまだ続けんの?


 その後ルビアは数回召喚を繰り返したが、一向に成功することはなかった。



「そんなはずは……術式はあっていたはず」

 はあ……。もうやだ、この子。


「……あの君?喋れる?」


「喋れるよ」

 モフモフのペンギンは会話を始めた。


「どうやら言葉を理解できるようです」

 いや、ここで君が入ってくんの?今まで召喚するのを見守っていたのに。

 そういや名前すら聞いてないけど。


「そんなことより、ルビアさんそろそろやばくないか?」


「そうね……。まあ、あの人は放っておくしかないわね」

 安定の定型文きた。


「……君ってもしかしてモンスターたちをまとめられる能力があるの?」


「あるよ」


「そうなんだ、じゃあネズミのモンスターの統率をよろしく頼むよ」



 そしてそのモフモフのペンギンは魔物を使う魔物となった。クエストクリア。


 え、終わり?

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