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見習い召喚士

 今日も召喚、明日も召喚。やっぱり召喚士は楽しいな。


 呪文を唱えると、それはどこからかやってくる。

 別の世界か異次元か。きっとこことは違う、別の場所。

 どんな仕組みか知らないが、俺は今日も召喚術を試行錯誤だ。


 えーっと……どうやるんだっけ。

 まず強く念じて、呪文を詠唱……。


 すると魔法陣が現れ、周辺に光りを放つ。

 その光が上空にすーっと伸びると、魔法陣の中で何かが起きる。

 そしてモヤのようなものが出てきて、それが晴れると……。


「……またハズレか」


 今日もまたつまらないものが出てきた。


 これはどこかの国のコインだろうか?

 この世界のお金だったら良かったのに。

 やっぱり自分が念じたものが出てくるようになるには、相当な修行をしないと無理なのか。


 熟練度を上げ、高クラスの召喚士になると上級モンスターであるドラゴンや、

 上位階級の悪魔などなど自由に出せるようになるという。

 そんなん憧れるんだが。俺はいつその境地に達するのだろう。

 なんだか気が遠くなるな。



「あれは……」


 何やら上空に差す、光の筋が見えた。

 どうやら向こうの方でも召喚をしているようだな。

 こんな辺境の森の中で、俺以外にも召喚術の練習をする人がいたとは。


 一体何を召喚しようとしているんだろう。

 あの量の光なら、もしかしたら……。

 俺は光が見えた、森の少し開けた場所に歩み寄ることにした。



「氷の魔女を、ここに召喚する」


 森一面に響く大きな声が聞こえ、呪文が飛び交い始めた。

 周りにいた鳥たちが驚いて、一斉に飛び始めた。


 どうやらちょうど詠唱を始めるところみたいだな。

 茂みの先に長い呪文を必死に唱えている少女がいた。

 あの女の子……できるな?


 その少女は立派な杖を持ち、魔力を高めるローブを身に着けていた。

 煌めく青い長髪は気迫で逆立っていた。


 装備も中々のものだし……。

 もしかして今ここに召喚されちゃうんですか?あの有名な氷の魔女が。


 氷の魔女といえば、炎氷雷の三大上級召喚術の一つで。

 もし呼び出すことができれば、召喚士としては一人前として認められる。

 そんな召喚士が今この森に?


 でも……こんな森に呼び出したら……。下手すればここら一帯が銀世界になるぞ。

 大丈夫なんだろうか?いや、信じたいけども。


 ……しかし詠唱が長いな。さすがは氷の魔女。呼ぶのにも時間がかかるらしい。



 ようやく終わったみたいだな。

 終わりの合図に魔法陣が光りを放ち、モヤのようなものが出ている。


 なんだろう、よく見えないな。

 青白いモヤモヤは魔法陣の中を隠すように、その場に長らく残っていた。


 うーん、あれは……?

 うっすら見えたけど、どうやら氷の世界の動物のようだな?


「また失敗しちゃった。やっぱり高レベルの上位魔族はさすがに無理か。

でもこの子可愛い。なんだかモフモフしているし」


 少女はペンギンじみた小動物を優しく撫でていた。


 どうやら召喚した小動物と戯れているようだが……声をかけるべきか否か。

 でもどうやら俺よりも先輩みたいな気もするし。うーむ……。


 声をかけるか悩んでうろうろしていたら、俺は足を踏み外して軽く転んだ。


「あっ」

 いてててて、小石にぶつかったのか。


「誰?」

 少女は物音に気付き、俺の元へと駆け寄ってきた。



「いや、たまたま通りかかった通りすがりのもので。魔法陣の光を見てちょっと気になって」


「そう、あなたも召喚士なの?クラスは?」


「まだ見習いです」


「そう。でも見たところ……あなたには不思議な何かを感じるわ」

 少女は返事にも動じず、俺の顔を見つめながらそう言った。


「ありがとうございます」


「そうだ。今ちょっと何か召喚してみてちょうだい」


「でも、俺さっき召喚したばかりで……」


「そうね、炎の魔神イフリートなんかどうかしら」


 この子、人の話全然聞いてないし。


「……そんなもの、俺召喚できませんよ。まだ見習いなんですから」


「いいから、その気持ちだけでもいいからやってみて。唱える呪文は簡単なもので。

ただ強く念じるだけでいいから」

 少女は俺に願うように言った。


 こんなに押されたら……男ならやるしかないよな。


「じゃあ……分かりました。やってみます」


 こうなればもうどうにでもなれだ。頭の雑念を捨て、一心に願う。


 イフリート……イフリート……イフリート!

 イフリート……イフリート……イフリート!


 念じて、軽く呪文を唱える。


「炎の魔神を、ここに召喚する」


 すると魔法陣が現れ、周辺に光りを放った。

 ひと際大きな魔方陣が俺の前に現れた。

 その光が赤黒く変わり、上空にすーっと伸びる。

 

 間違いない。これは炎の魔神イフリートの魔法陣の光だ。


 赤黒いモヤが魔方陣から溢れ出てきて、次第にその量を増す。


 これはまさか。まさか……?


 周囲では緊迫した空気が漂う。少女は隣で固唾を呑んで見守る。


 モヤの出現が終わりを告げるころ、俺はひたすらイフリートの出現を心で祈っていた。


 そのモヤが晴れていくとき……。

 魔法陣は再び光り、やがてどんどん黒くなり、その光りは空に去っていった。


 そして、そこには一人の人間が召喚されていた。


 ……えーっと、あなたは誰?


「パワー」


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