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【電子書籍〜4巻。コミカライズ予定】ダイアナマイト - 転生令嬢は政略結婚に夢を見る -  作者:
コランダム編

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これってさァッ。絶対アレじゃん!

「ジルコニア。……君は、僕に何か望んでることがあるんじゃないかな?」


「え? そんなものありませんよ」


「何もできない男を養うのは、君にとって大きな負担のはずだ。今の僕は、家のこともできなければ、力仕事もできない役立たずだ」


 経済的な面でもそうだが、生活面でも自分は足手まといだ。

 一般常識はあるようだが、何故か家事も野良仕事も全くできなかった。

 慣れてないとか、不器用とかの次元レベルではなく、道具の名前も手順も全くわからない。記憶を失う前はどうやって生きていたのか、信じられないくらい生活能力がない。


「内容次第では今すぐにとはいかないが、考えていることがあるなら素直に言ってほしい」


 体を打ちつけた際にできたのか、小さな擦り傷ができている手足は肉体労働者のものではなかった。

 ペンが当たる部分が若干硬くなっている程度の指は、職人という感じもしないので、記憶を失う前は知識を要求される類の専門職だったのかもしれない。


「わたしの自己満足でしてることなので、気にしないでください! 強いて言うなら、早く元気になってください! あっ、話し相手が欲しかったので、この先もウィンターと一緒に暮らせたら嬉しいです!」


「……そうか。ありがとう」



 パッと見だとジルコニアの言動は、まんま純真無垢な正統派ヒロインだよな。

 自立してて逞しいのに、行き倒れの男を拾ってしまうくらいお人好し。

 アレキサンダーとか、普通の男だったらコロッといってたぞ。


(金が目的じゃないなら、男にしかできない仕事ことをさせたいのかと思ったけど違うのか……)


 残念ながらジルコニアのヒロインムーブは、天女の羽衣ふくを発見済みのウィンターことサフィルスには効かないどころか、逆効果だった。


「熱がぶり返す様子もないし、いつまでも家にこもっているのは問題だと思う。近くの町へ仕事を探しに行こうと思うんだ」


「えっ、ちょっと待ってください! 移動時間が勿体ないです。仕事をしたいなら、わたしの調合を手伝ってください」


「住み込みの仕事を得ることができたら、君の家から出ることができる。未婚の女性の家に、僕のような男が居座るのは良くない」


「ダッ、ダメです! 身元不明の人を雇ってくれるところなんてありませんよ! わたしのことを思うなら、この先もここに居てください!」


「……なら職探しは諦めるよ。明日は町に行くんだろ? 僕が荷物持ちをしよう」


「え、ええーと……」


「暗算は得意みたいだ。荷物持ち以外にも、何か役に立つかもしれない」


「……そうですね。じゃあ、お願いしようかな」


 その日の晩、サフィルスは酷い腹痛に苛まれたため、翌日の外出は中止になった。

 タイミングからして寝る前に出されたスパイス入りのホットワインに、一服盛られた可能性が高かった。


 その後もなんだかんだと理由をつけて、サフィルスが家から出ないよう誘導するジルコニア。

 サフィルスに好意がある素振りを隠そうとしないわりに、彼が記憶を取り戻すのに非協力的だったり、外界と接触させないよう妨害する。


 好感度ではなく警戒心Max状態になったサフィルスは絆されることはなく、ある日の晩ジルコニアに「教会に行きたい」と言った。



 ジェンマ国の国教はコスモオラ教だ。

 ギャラン帝国を含め、東大陸の多くがコスモオラ教を国教に指定している。

 無神論者が多そうな帝国が採用している時点でお察しだが、コスモオラ教が多くの国に受けいれられている理由は便利だからだ。


 コスモオラ教は冠婚葬祭を取り仕切る為に、独自に信者のリスト──戸籍を作成をする。

 そして作成した戸籍を、処世術として国に提出しているのだ。

 国としては、戸籍管理を無償で外部委託できる形になるので凄く便利。


 しかもコスモオラ教は死因によって供養方法が変わるので、葬儀を頼めば簡単な検死をしてくれる。

 善行として古くから治療院を営んでいるので、その解剖学はお墨付きだ。

 埋葬前に検死が必要な宗教なので、人体に詳しくなり治療にも活かせるようになったのかもしれないけど。……鶏が先か、卵が先かでここまでダークになるケースある?


 さらにさらに。検死の結果、事件性があれば進んで捜査に協力してくれるんだぜ!

 至れり尽くせり過ぎるだろ。

 特にヤバい教義でもないし、多くの国は一度その便利さを知り手放せなくなっている。


 この辺りでコスモオラ教を国教にしていないのはコランダムだけだ。

 コランダムは祖先である遊牧民が部族単位で人を管理する習慣があり、今も昔も戸籍管理にそこまで困っていなかった。

 なおかつ家の中に祭壇を作って、地域や商売ごとに関連深い神を崇める多神教なので、教会で洗礼受けたり、わざわざ教会に祈りに行くという習慣がない。

 コランダムにもコスモオラ教の教会はいくつかあるが、どれも外国人向けのものなので基本的に閑散としている。


 そんなわけでジェンマ国で男女が連れ立って教会に行くのは、婚姻届とかその辺の手続きのためであることが多い。

 ジルコニアはサフィルスの言葉に歓喜し、二つ返事で彼を教会に連れて行った。

 そして紋章が刻印されたボタンを隠し持っていたサフィルスは、懺悔室で経緯を話して保護を求めたというのがことの次第だ──。


 リアル脱出ゲームじゃん。

 殿下視点だと、完全にホラーだったな。

 それにしてもダイアナお嬢様が強烈過ぎて隠れてたけど、サフィルス殿下も結構アレだよな。


 正直ここで殿下が致命的なやらかしをして婚約解消となったら、ダイアナお嬢様の物語は婚約者がコロコロ変わって、結局誰ともゴールインできないシリーズになっちゃうから安心したよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ある意味サフィルス殿下とってもダイアナと合ってる…というか、劇薬に曝されてるので逆に生き延びるために必要なスキル爆上がりしてるのが…立場からするといいことなんだけど、何故か目頭が熱くなるのは…
[一言] 読者さんの『トラップ全クリア』コメントに腹が震えた笑 殿下、すごい。 でも待って、記憶はまだ戻ってない。どうなるのー? わくわく
[一言] さすが殿下!!さすサフィ だから、怪しすぎるんだよ薬師。 しかも毒まで盛ったら例え下痢腹痛だとしても恐怖しかないわ。 だって、ヤバいヤンデレストーカーに監禁されて飼われるシチュエーションしか…
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