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【電子書籍〜4巻。コミカライズ予定】ダイアナマイト - 転生令嬢は政略結婚に夢を見る -  作者:
帝国編SS

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それほどでも(前編)

ヴァルによる公開プロポーズのあと。

 ヴァルがアナスタシアに求婚する姿を見せつけられ、著しく機能低下したダイアナは、追いついたサフィルスに回収された。


 二人は現在、イベント会場から離れた川沿いの公園をぶらぶら歩いている。


「ここはカフェにもなってるんですね」

「通りから丸見えだけど、あまり気にならない上手い造りだね」


 誰もが自由に歩ける公園でありながら、数カ所テーブルセットが設置されており、道を挟んだ建物から給仕が盆に乗せた料理を運んでいる。

 オープンカフェの孤島バージョンだ。

 手間がかかるので別途席料を徴収していそうだが、人気があるようでどのテーブルも埋まっていた。


「興味ある? 吹きさらしだから、今日みたいに風が強いと長居するのは辛いだろう。少し待ったら席が空くと思うけど……」

「うーん、興味はありますが、利用したいのではなく、婚活サロンの参考としてです」


 婚活サロンは王家主催だが、その利用を無理強いするのはよろしくない。

 結婚はプライベートな問題でもあるので、必要以上に干渉したら王家に対する反発を生む。

 貴族の成婚率を上げるのは、国家の礎を盤石にするためなので、王家の求心力を低下させては本末転倒なのだ。

 ダイアナとアリアネルは、恋愛結婚に憧れる若者に受け入れやすい形で婚活サロンを作ろうとしている。


「旧劇場の跡地に、カフェと公園を合体させたものを建設予定なんです」

「此処のような感じになるのかな……?」

「雰囲気は似ていますがセキュリティを強化して、外から丸見えにならないよう配慮します。営業時間内であれば自由に出入りできて、恋愛的な出会いを求めることができる場所です。最初に本人達の相性を取っ掛かりにするので、恋愛結婚要素を与えつつ効率的に婚約できるシステムです」


 自由とは言ったが、貴族の子女をくっつけるのが目的なので入場は厳しく規制する。

 利用者の身元確認を徹底しないといけないので、入場時は当主がしたためた書類が必要となる。

 貴族の婚姻は当主の承認ありきなので、別に難しいことは求めていない。


 更にジェンマ国において貴族は婚約時に国に届出する義務があるので、受付には最新のリストを常備することができる。

 既に婚約を結んでいる人間が入場しようとすれば、門前払いの上に当主に警告文が発行される。


 速やかな成婚率改善が目的なので、カップル成立した際は「後は当人同士で仲を深めて……」ではなく、サロンから両家にマッチング相手の通達をして親同士が話し合う流れになる。

 双方合意できれば、晴れて婚約成立。


 各段階に当主を巻き込むのは、家ぐるみにすることで遊び目的や貢がせる相手を物色する輩を防ぐためでもある。絶対頂かせねーよ!

 それでも悪質な輩は出てくるに違いない。その時はしっかりペナルティを発動するつもりだ。


「野外だと季節の影響を受けるけど、見通しを良くすることで気軽さと安心感を与えたいのかな」

「そうです。背の低い植物で区切ったり、テーブルの配置を工夫することで、姿は見えるけど話は聞こえない状態にしたいので、この距離感は参考になります。……どのくらい距離が空いているのか測ってきますね」


 言うな否やサフィルスから離れると、ダイアナは歩幅でカウントを始めた。

 小走りで自分の元に戻ってくる婚約者を、サフィルスは眩しいものでも見るかのように目を細めた。



「公爵家の事業もだけど、ディはこういったことを考えるのが得意だよね。男爵の影響なのかな?」

「最近まで父の仕事に触れる機会は無かったので、違うと思います」


 十代の学生とは思えない婚約者の仕事ぶりを、サフィルスは父親譲りと解釈していたようだが、ダイアナはやんわり否定した。

 彼女の場合は、前世で十数年社会人として働いていた経験があるからだ。


 前世の婚活では、人として当たり障りのない言動を心がけていた故に、本音を打ち明けることのなかったダイアナ。それは自分を売り込む必要があったからだ。……結局売れることはなかったが。


 今世はもう婚約しているので、営業する必要はない。

 今のダイアナは無難な反応ではなく、素直な反応を心がけている。

 シルバーの時もそうだったが、彼女は婚約者には正直な気持ちを伝えて、極力嘘をつかないようにしている。


 実はシルバーに対してダイアナが偽りを述べたのは、身辺調査を素行調査だと伝えた時だけである。

 スターリング家の悪評を流したことをしらばっくれたのは、婚約解消後なのでノーカウントだ。


 彼女なりに伴侶には誠実でありたいと考えているが、世の中には言わない方が良いこともある。

「ここはゲームの世界なの!」と言っちゃったり、誠実の意味を履き違えて初夜に余計な宣言しちゃうのとかがそうだ。

 ダイアナにとって、前世の記憶があると告げるのは同レベルの行為だ。

 彼女はこれからもサフィルスに前世のことを話すつもりはない。


「最近は違うんだね」

「万が一の事態に備えて、どのように事業展開しているのか定期的に確認しています。父に何かあれば、私が責任を持って処分しなければいけないので」


「親の仕事だから何も知りません」では、クレイに何かあった場合にメイジーと同じパターンになる。


 クレイの会社は、彼が作り上げた彼の作品。

 もしクレイが生前にセルアウトしなければ、ダイアナは遺産相続後に速やかに処分するつもりでいる。

 理由は簡単。

 父と違ってダイアナは仕事人間じゃない。

 結婚生活と引き換えに、王妃として働かなくてはいけないのに、副業までするのは真っ平ごめんなのだ。そんなに働きたくないでござる!!


 本人のスケールがデカすぎるのか、王家に嫁ぐことを自営業に嫁ぐくらいの認識でいるダイアナお嬢様。

 相変わらず認知がバグっていらっしゃる。

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― 新着の感想 ―
[一言] いけ!Dを赤面させるんだ!(無茶ぶり)
[良い点] 随分と規模のデカい自営業だなw [一言] 下手に畳んだり売却するよりは クレイは跡継ぎ用にもう一人養子を取ればいいじゃん
[良い点] 自営業…うん、何も間違ってないな。あれおっかしーなー?だんだん認識がダイアナライズされてきてる気がする。はっ!これが調教……! [一言] 後編がめっちゃ楽しみです!
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