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【電子書籍〜4巻。コミカライズ予定】ダイアナマイト - 転生令嬢は政略結婚に夢を見る -  作者:
ギャラン帝国編

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全力で弟を遂行する

「最初の違和感は、私に接触した理由を『心配した』と語ったことです」


 ダイアナも、メルランと同じ部分に着目した。

 弟を心配したのならロトの所へ向かうはず。

 公爵家にやってきたのなら、アナスタシアを心配したと考えられるが、彼の態度はどう見ても気遣っているようには見えなかった。

 あれは想定外の質問をされた為に咄嗟に本音が出てしまい、チャラ男演技と齟齬が生じたのだとダイアナは推理した。


「失礼ですが、ロトやアナスタシア個人を案じている風には見えませんでした。おおかた弟と繋がりのあるヴィヴィアン公爵令嬢が、皇位継承戦に影響を与えるんじゃないかと心配になって探りを入れにきたんでしょう」


 図星だったのか、ギャラハッドの表情が決まり悪そうなものに変わる。


「それでいながら、殿下に皇帝になりたいのか確認したところ『陣営の方針次第』と答え、ヴィヴィアン公爵家にエレイン妃陣営に属するよう促した際には、自分か兄の後押しをするよう告げましたね」


 エレイン妃陣営の本命はギャラハッドなので、矛盾している。

 公爵家に乗り込んで偵察するくらいなのに、意気込みを隠す。言動がチグハグだ。


「自分が皇帝の座を求めていると断言するのは、嘘であっても気が引けたのでしょうが……半端に誠実な態度をとったことで、私だけじゃなくケイも腑に落ちない様子でしたよ」


「……」


 返事がない。ただの屍のようだ。


「決定打はガレス様の件ですね」


 宰相は中立で、ボーマンは第一王子の側近。ガレスの犯した罪が明るみになれば、第一王子の力を削ぐことができるのに、ギャラハッドは秘密裏に処理することを選んだ。

 ガレスを材料に宰相と交渉するつもりなのかと思ったが、それにしては表情が硬かったのでダイアナは困惑した。


「てっきり喜ぶと思ったのに浮かない顔をされたから、あの時はリアクションに困りました」


 アルチュールにとって、長年自分を支え続けてきたボーマンの存在は非常に大きい。

 あれは大事になる前に対処できること感謝しつつ、どう穏便に処理するか頭を悩ませていたからこその反応だったのだろう。


「……アナは、母上から何を聞いたんだ?」


「次男を皇帝にし、長男をその後ろ盾にするつもりだと。その言葉を裏付けるように、彼女は第三王子の支援者には、ギャラハッド殿下の勢力としてアルチュール殿下を組み込むと表明していますね」


 ギャラハッドの政権を盤石にするため、アルチュールは重要なピースなのだとエレインは自陣に再三アピールしている。

 ギャラハッドの方が適性があると言うのは、エレインの中で揺らぎない事実だ。その上で彼女は、長男の身の安全を最優先に考えて動いているのだ。


「でも、それではあまりに……」


 エスメラルダが言い淀んだ言葉を、ギャラハッドは引き継いだ。


「兄貴の気持ちを蔑ろにしてる。母上は兄貴が死にかけたことで、視界が狭くなっているんだ」


 ギャラハッドは自分が皇帝になれば、兄の心にとどめを刺すと理解している。


「いくら言葉を尽くしたところで、勝手に忖度して動く輩を根絶するのは不可能です。周囲を出し抜いて新皇帝(ギャラハッド殿下)の寵愛を得ようと、アルチュール殿下を暗殺しようとする人間が出てくる可能性はゼロでありません」


「アナの言う通りだ。他の兄弟に比べれば暗殺の危険は減るが、完全になくなるわけじゃ無い」


 二人の王子にとって最善なのは、アルチュールが皇太子になるルートだ。

 だがメンタルを損なった状態のアルチュールを皇帝に据えることは、本人の為にも、国民の為にも却下だ。

 兄がメンタルの回復に専念できるよう、ギャラハッドは他の候補者を蹴落とし、皇位継承戦をギリギリまで長引かせる道を選んだ。


 アルチュール視点だと、ギャラハッドは両親の期待を一身に背負った存在だ。

 そんな彼が兄に直接関与するのは死体蹴りにしかならないので、ギャラハッドは間接的に手助けするのが精一杯だった。


「ギャラハッド殿下は王族です。兄のことだけ考えるわけにはいきません。アルチュール殿下がタイムリミットまでに回復しなければ、自分が皇帝になるつもりで候補として残っているんですよね?」


「……悔しいな、全部お見通しか。そうだよ。でもそれは最悪よりはマシってだけだ」


 限界まで待つつもりだが、いざとなれば母親と同様に、心よりも身の安全を優先するつもりだ。

 次善策だが、最善策との隔たりが凄まじいので、叶うことなら避けたい。


「素行不良や、女癖が悪いキャラにしてしまうとリカバリーが難しいので軽薄設定なんでしょうが、漠然としたイメージで演じているので、所々でボロが出るんです」


「初対面のわたくしが見抜けたくらいよ。選帝侯の目を欺けるとは到底思えないわ」


「言っておくけど、二人が異常なんだからね! カヴァスだって俺の目的までは把握してなかったから!!」


「──そうでしたか。殿下が皇太子に選ばれないのは、軽薄だからではなく、演技しているのがバレていたからなんですね」


 どんなに素質があろうと、覚悟が伴わない者は皇帝として不適格。

 本気で皇帝になろうとしていない時点で、カヴァスは第三王子を選ばない。


「母親の真意を知ったことで、アルチュール殿下の情緒は改善傾向にありますが、完全に落ち着いたわけではありません。兄が皇太子になっても問題ない程度に回復したと判断したのか、自分が皇太子になる覚悟を決めたのか……。結局どちらを選んだんですか?」


「それは──」


 くしゃりと顔を歪め、ギャラハッドは言葉を詰まらせた。


「アナには申し訳ないと思ってる。いい加減向き合わないといけないって、頭では分かってるんだ。でも……!」


「……はあ。取り敢えず私への説明義務と、安全確保の為に訪問しただけなんですね」


 被害者であり中心人物でもあるダイアナに、状況を知らせないわけにはいかない。

 だが全て知ってしまえば、その環境で放置するのは問題なので避難させる。

 その後どうするかは、追々考えるつもりだったのだろう。呆れるほど行き当たりばったりだが、それだけ切羽詰まっていたのか、それとも危機感が足りないのか。


「仕方ありません。エスメラルダ様には、少々ハードなことをお願いしますが大丈夫ですか?」

「任せて頂戴。わたくし、こう見えて結構タフなのよ?」


 ダイアナはあっさり引き下がると、別方向に舵を切った。


「現時点で解決策を持たないなら、そちらに任せるのは無しです。今後は私の指示に従ってください」


 今回の件は帝国の不始末なので、彼等が率先して解決するなら任せようと思ったが、この期に及んでまだウダウダ言っているとは。他人に迷惑をかけている自覚が薄いのか、大国故の傲慢か。


(我慢の限界。もうウンザリ)


 身内でグダグダするのは勝手だが、付き合わされる方はたまったものではない。


「──傍迷惑な連中の目を覚ますくらい朝飯前です。正攻法で聖杯吐き出させてやりますよ」

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― 新着の感想 ―
つよっヽ(*゜ー゜*)ノ
[一言] なにげに一番めちゃくちゃにされそうなカヴァスの皆さんに合掌
[一言] あっ、なんかこの段階でダイアナちゃんの相手認定されたみなさんの姿が走馬灯のように…に、逃げて……! 逃げられないと思うけど…
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