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【電子書籍〜4巻。コミカライズ予定】ダイアナマイト - 転生令嬢は政略結婚に夢を見る -  作者:
ギャラン帝国編

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ごくごく普通の女の子

 約束通りメルランは朝一番にヴィヴィアン公爵家を訪れ、イグとエクターの実家関連の情報を持ってきた。

 両家の持つ権力を把握したダイアナは早速作戦を立てた。


 失った富を補充すると同時に、アナスタシア・ヴィヴィアンが二度と今回のように陥れられないようにするため力をつける必要がある。

 単に公爵家の当主となるだけでは弱い。ダイアナはアナスタシアの損失が、国益を損なうレベルに引き上げるつもりだ。


(今回は時間との勝負だから、少々強引な手段を使っても早急に成果を出さないと)


 ダイアナお嬢様には前世の知識があるが、他作品の転生者達のように譜面無しで名曲を完コピ演奏したり、大ヒット漫画を手書きで再現したりとかはできない。

 ダイアナお嬢様に、チート級の特殊技能はない。今まで言っていなかったが能力は平均値だ。

 彼女は()()結婚願望が強くて頭がキレるだけの、いたってフツーの女の子なのだ。


 今回は商品開発に費やす時間も金銭的余裕も無いし、そもそも物作りに真摯に取り組むつもりがない。なので酒とか調味料といった、元日本人ならではの発酵食品を作って売るなんてこともない。

 まあ菌類の取り扱いは一歩間違えると大惨事になるので、きっとこの先もダイアナお嬢様が醸す事はないだろう。


 彼女はサクッと金儲けして、権力を手に入れたい()()だ。

 領地の発展とか、国の繁栄とかは全く考えていない。

 生きたいように生き、勝ちたいように勝つ。どこかのエゴイストなストライカーのようなスタイルだが、これがウチのお嬢様だ。


 今回ダイアナは富、名声、力の他に身の安全も確保したいので、残る不穏分子達(ロト、アーロン、ラストロトシックス)の対処も絡めた策を講じた。というか、計画に王子達を組み込まないと、ダイアナお嬢様のお金儲けは、カヴァスジャッジに引っ掛かりかねないので、そうする必要があった。


「──御長男のレイン様が監督されている砦で、()()()()()()試みをしたいのです」

「いや、国の定めた訓練内容に手を加えることは……」

「訓練内容はそのまま、教本の内容もそのままです。()()やり方と、書き方を変えるだけですよ」


 イグの父親に詰め寄るダイアナお嬢様。

 俺それ知ってる。絶対ちょっとじゃないヤツじゃん。いつものパターンじゃん。


「わ、私は聞かなかったことに。息子は勘当いたしますので何卒」


 不穏な空気を感じてエクターの父親が逃げようとするが、ダイアナは逃さなかった。


「息子を勘当することで私に何の得が? 貴方が監督責任を放棄して、楽になるだけですよね。逆に私にとっては、自分に敵意を持つ人間を野放しにされて迷惑です」


 失うものが無くなったイグ達が、ダイアナに報復しようとする可能性がある。


「そ、そんなつもりでは!」

「勘当しても構いませんが、身ひとつで放り出すのは却下です。贖罪というなら私の監視下で働いてもらいます。もちろん慰謝料もいただきます」 


 継母に続き、タダで酷使できる若者達という駒を手に入れたダイアナお嬢様。

 奴隷(スタッフ)と資金ゲットだぜ!


 彼女に笑顔で詰め寄られた二人の男は、過去に浮気がバレた際、妻に生命保険への加入を迫られた時の事を思い出した。





「大将閣下。至急のお手紙が届いております」


 秘書のベディ中尉が差し出した手紙の束に、ユーウェはあからさまにうんざりした顔をした。


「馬鹿親共か……大人しく二年我慢すれば良いものを。どう足掻こうと例外など作れんのだ、下手な抵抗しよって」


 帝国には徴兵制度がある。

 十七歳から二十五歳までの間に、身分関係なく一度は軍に入隊し規定の期間軍属になる。帝国がこの制度を採用しているのは様々な理由があるのだが、その理由を真面目に語ると一話では済まないので割愛する。


 ただでさえ想定よりも文字数が増えているのだ、これ以上増やしてたまるか。そして丁寧な描写は、前話までの謎解きパートでもう充分だ。

 そもそも、ウチはそういう芸風じゃないんだって! どうでも良い設定語りして、離脱者増やしたくないの!

 この先はいつものスキップ連打だ。オラ行くぞ!


 少し脱線してしまったが兎に角、帝国男児は二十歳前後で二年間、強制的に軍人になる。

 軍人になると言っても、そこまでハードな内容ではない。

 基本は配属先の砦で訓練を受けて過ごすだけだ。出動することがあっても後方支援メインで、補給や衛生班が精々。ぶっちゃけ腰掛け兵士に前に出てこられても邪魔なだけだ。前線で侵攻してきた蛮族と戦ったりはしない。


 それでも兵役を嫌がる人間は多い。

 特に有力貴族や金持ちは、自分の跡取りが二年も手元を離れるのを嫌がる。

 当の本人達も、貴重な青春の一部を無駄にしたくないと嫌がる。

 故にあの手この手を使って、兵役逃れしようとする輩が後を絶たない。


「ん? 息子が退役を拒否する……?」


 手紙の主は外務大臣と、財務大臣。

 どちらの息子も今月満期を迎え、晴れて自由の身になるのだが、今後の進路について親が連絡したところ「兵役延長を望む」と返ってきたらしい。


「彼等の息子の配属は、あの『保育園』だったな」

「ええ、ウーサー砦です」


 取扱注意な要人の息子を各砦にばら撒くと、現場の士気を下げかねない。

 大きな戦のない時代だが、今も国防のために日夜奮闘している砦は多い。

 良家の子息達の身の安全も大事だが、何より国の為に真面目に働いている現役の兵士達に、お坊ちゃんの面倒を見ろというのは酷というものだ。


 また配属先について選択肢があると、親が色々希望を出してくるので、一定以上の身分を持つ者達はまとめて一箇所に放り込んでいる──それがウーサー砦だ。


 ウーサー砦は国境ではなく都市部にある。

 帝国がまだ小さかった頃には国境線を守っていた。

 領土拡大と共に国防の要所としての役割は終えたが、災害時の避難場所として今も現役だ。


「あそこは決して良い場所とは言えんのだがな」


 休日は外出が認められているが、日帰り厳守で付近の街は酒場と娼館だらけだ。

 他に娯楽のない彼等が金を落とすので、まあまあ潤っているのだが、それ以上に面倒ごとが多いので街が栄えているかと言われればノーだ。

 それなりに店はあるのだが、休みの兵士が一斉に押し寄せるので混雑して常にトラブルが多発するのだ。


 砦の上層部も休みをバラけさせる等して、外出者のコントロールを試みるのだが、基本的に彼等は酒場か娼館にしか行かない。どうしても回転率が悪くなるし、ピーク時だけドバッと来られるので店側に負担がかかる。

 ピークに合わせて営業しようにも、特に後者は娼婦の人数も部屋数も決まっているので難しい。

 かち合った兵士同士で諍いが起きることも多々あり、ユーウェとしても何とか解決策はないものかと悩ましく思っていた。


「レイン少佐から報告が上がっておりますが、店でのトラブルや、市民からのクレームが激減しております。しかも先日の合同演習ではウーサー側が模擬戦で勝利しています」

「何じゃと!?」


 ウーサー砦は過去一度も模擬戦で勝利したことがない。

 学校行事に興味の無い進学科の生徒が、合唱コンクールで普通科に負けるような感じだ。もしくは体育祭。

 活気のある学校であれば科を問わずに盛り上がるのだろうが、兵役を課せられた子息達は渋々やってきた者達だ。活気など生まれようがない。

 仮令他砦の連中に馬鹿にされようが、そもそも自分達は勝ち組なので悔しいとは思わない。

 はいはい、良かったですね。その思い出を一生大事にしてくださいね、俺達はお前らの顔なんて明日には忘れてるけどな。


「閣下の視察を望むと書いてありますし、一度砦に赴いて、ご自身の目で確かめられてはいかがでしょうか?」

「ううむ……わしも暇ではないのだが、仕方ない。時間を作ろう」

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― 新着の感想 ―
軍部掌握かぁヽ(*゜ー゜*)ノふつう?…う、ううーん ⊂(•‿•⊂;)まぁ得てして天才は周囲の観察はできても分析に齟齬が生じるものですし、うん
[一言] フツーの令嬢は思いついても実行いたしませんw フツーの貴族令嬢は一族のことを… あれ…正しいのか… じゃぁフツーだな(錯乱)
[良い点] トゥーオブシックスの父ちゃんズ、揃って浮気してんのか。ギャランの男もクズ率高いのかドゥ皇帝さんよォオ! D導師、ここもサロンの狙い目立地ですね!CEOはA.V.嬢ってイニシャルにしたらアレ…
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