権力三銃士を連れてきたよ
学生だったら三者面談。会社だったらキャリア面談。
犯人グループから一名ずつ呼び出し、聞き取りするのはダイアナwith王太子(女)×3。
社長、役員揃った面接よりもエグいメンバーだな。プレッシャー半端ないんだけど、帰っていい?
次期国主達の立会はネタでも、嫌がらせでもなく、それぞれ理由がある。
まずルベルは依頼主であり、自国民のことなので立ち会うのは当たり前。
次にサフィルスはダイアナの婚約者だ。
ダイアナは賓客として招かれているので、母国ほど勝手な真似はできないし、まだ婚約者でしかない身ではできることが限られている。
同席した王太子に許可をとれば、その点がカバーできる。
最後がアルチュール。
結局意味なかったが、ダイアナ救出のためにヴァルを呼び寄せたので一応協力者だ。
『俺は傷ついてる。構って』オーラ全開で特級呪物と化していたので呼んだが、一応メリットは有る。
シンプルにこの中で、一番手札が多いのはアルチュールだ。
足元が不安定なルベルと違い、男二人は立場が安定している。
更に国力の差で、アルチュールは頭一つ抜けている。
ぶっちゃけダイアナは、コランダムとジェンマの手に余るようだったら、帝国に押し付けようと考えている。
うん、知ってた。今日もダイアナお嬢様は平常運転だ。
ちなみに犯人グループと関わりの深いヴァルは、この場にいない。
確かにヴァルはトラブルを解消するが、人の心を置き去りにするきらいがある。
無自覚に他人の神経を逆撫でするので、犯人グループとは隔離した方が良い。完全不燃焼気味の彼等を刺激し続けたら、マジで刺されかねない。
アルチュールと一緒に帰国しなければいけないので、手持ち無沙汰になったヴァルは新聞を読み漁っている。
今も図書館にこもって、情報をアップデート中だ。
コイツはコイツでブレねぇな。
*
「結婚したいですか?」
「は?」
「貴方はプレーズ家によって結婚が難しくなりましたが、そのことについてどう考えていますか?」
面談の一番手はシスト。
先日は空気を呼んだダイアナお嬢様だったが、開始と同時にアクセル踏みこんだ。
平常に見えていたけど、ちょっと危険運転に片足突っ込んでいる。
シストはポカーン状態だ。
「結婚したいけど諦めているのか、元々あまり興味がないのか。貴方の結婚願望を教えて下さい」
「その情報必要ですか?」
「大事なことです!」
あのー。ダイアナお嬢様。全員から希望聞こうと提案したの、理不尽な理由で結婚が難しくなったシストを気にかけたからじゃないよね?
ラズリの方がオマケなんてことないよね?
「ええと、この場の主旨がよく分からないんですが……」
「皆さんの今後について、希望を聞いた上で対応することにしました。導師は、アンダルサイト子息の将来についての率直な気持ちを聞きたいようです」
師匠の暴走を、弟子のルベルがフォローした。
「ああ、そうでしたか。確かに上流階級相手に、僕の結婚は難しいでしょう。家に迷惑かけたのは申し訳ないと思っています」
「できるなら結婚したいですか? 譲れない条件はありますか?」
ちょっ、おちつけ。
営業成績に焦る結婚相談所の社員じゃないんだからさあ!
「いい人が居れば結婚したい程度で、別に生涯独身でも構いません。成り行きでコランダムに一時帰国してしまったけど、クォーツの件が終わったら留学先に戻るつもりでした。新しい相手とかは考えず、大学を卒業するのが目下の目標です」
「そうですか」
被害者のシストに結婚願望がないと分かり、ダイアナお嬢様は安全運転に戻った。
「医師になられたら、コランダムに戻る予定ですか?」
「状況次第ですね。数年でどこまで変わるかわかりませんが、肩身狭い思いをするなら戻らないつもりです」
本場で学んだ医師を獲得できるチャンスに、ダイアナお嬢様の目がキラリと光った。
「……それよりも、僕の希望はラズリが立ち直ることです。身分の方はなんとかなりましたが、今の状態でフロレンス商会を継ぐのは難しいと思います」
アメトリンは、独身のアルマが才能のある孤児を養子に迎えたという設定だ。
二年前に当主教育、淑女教育を終えたラズリは、商業についても学んでいる。
商売に関わることもあるかもしれない、というこれまたこじつけのような理由によるスパルタ教育が、ここにきて役に立った。
「能力はあるけど、本人に生きる意志がない。復讐を終えたら、なにか変わるかと期待していましたが……」
「ラズリ様を気にかけていることは分かりました。彼ではなく、ご自身について助けは必要ですか?」
「ありません。と言いたいところですが、実家がプレーズ家と揉めている状況はなんとかしたいです。でも親に自分のしようとした事を告白する勇気がありません」
「その辺は和解が成立するよう、とりなした方が良いかもしれないね」
「では私が。『ラピス』とは長い付き合いですし、アンダルサイト家の次男は補佐官の一人です。子息の帰国は城の者に知られています。それを実家を心配して、私に仲裁を直訴しに来たことにしましょう」
サフィルスの提案に、ルベルが手を挙げた。
親が組んだ縁談だが、資金援助や共同経営などは行っていない。
シストは三男で元々独立予定だった。
ラピス失踪によるアンダルサイト家の被害は、シストが婚期を逃す可能性がある程度で、当の本人は結婚願望が薄い。
体面を保つため、振り上げた拳を下ろせなくなっている可能性が高い。
ルベルが間に入れば、おそらく相場の慰謝料で手打ちにできるだろう。
「そうですね。和解できれば、親御さんに打ち明ける必要はないでしょう」
なんとかして勧誘できないかな、と思いながらダイアナは頷いた。
気がかりなことが一つ減ったからか、シストは安堵の表情を浮かべた。
*
「あたしの希望……」
面談二番手はカイヤだ。
短時間で終わりそうな人間から済ませている。
「貴女は今、無職です。この先どうしたいか言ってください」
「……」
「この場にいるのは部外者の私達だけです、正直な気持ちを言って大丈夫です」
シストの時とは違い、ダイアナは前のめりにならなかった。
「……これ以上あたしの所為で酷い事態になるのが嫌でした。ラズリ様の為だと、罪に問われないようにするからと。そう言われて協力しました……」
その先を口にするのに抵抗があるのか、カイヤは言葉を詰まらせた。
しばらく沈黙した後、彼女はポツリとこぼした。
「……もう嫌です。どこか別の場所で、自分の人生を生きたいです」
「やりたいこととか、働くならどんな仕事がしたいとか希望はありますか?」
「……今までと全然関係のない仕事がしたいです……」
「ラピスを介して貴女とは面識があったから、私の側仕えとして採用する手があるけど、それだと今までと似たような仕事になるわね」
ルベルの提案に、一瞬カイヤは迷う仕草をしたが首を振った。
名誉な仕事で給料も良いが、今の彼女が求めているのはもっと新しい環境だ。
「アダマス家はコランダムでアパレル産業も手掛けています。そちらであれば、この国の女性でも活躍できるかと。ドレスの制作や、販売が主な業務ですが興味ありますか? コランダムを出たければ、ジェンマで働くことも可能です」
「!? はい!」
「父が会社に顔を出すと言っていたので、同行させてもらいましょう。見学して問題なさそうであれば、採用ということで」
ダイアナは女装したラズリを見ていないが、長年王宮に通い続けて誰にもバレていない。
素材の良さもあるだろうが、カイヤの腕が良いのだ。
勉強漬けだったラズリがメイクのテクニックや、ファッションセンスを磨いていたとは思えないので、カイヤの努力の賜物だろう。
製造よりも、販売の方で力を発揮しそうだ。
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