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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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五百六十六章 ラクスマンの内乱 その2

五百六十六章 ラクスマンの内乱 その2


 後発の3000の騎馬隊がラクスマン軍を蹂躙した。騎馬と歩兵では、高低差や機動性から騎馬の方が圧倒的に有利だ。

 リーン軍の騎馬隊はどんどんラクスマン軍を槍で突き、馬で体当たりして蹴散らしていった。

 この時にはすでに、ポットピットが率いていた550の反乱兵はほぼ全滅していて、ポットピットとギガレスが城門付近で孤軍奮闘していた。

 そこに東門と西門を制圧していた950の反乱兵たちもやって来て戦闘に加わった。それぞれの門を頑丈に封鎖して、ポットピットたちが王城に侵入するまでの時間稼ぎをするのが彼らの役目なので、一定時間が経過した後、助勢に来たのである。それぞれの門はしばらくすれば破られて、城下町の外にいた一万のラクスマン軍が駆けつけてくるだろう…それでも良かった、主力部隊が王城に侵入できさえすれば…。

「親父いぃ〜〜っ!」

 その中には各部隊を指揮していたウィリー、アンソニー、ボイドもいた。凄腕の斥候であり暗殺者でもある彼らは、夜の闇に紛れて…人影の中を出たり消えたりしながらラクスマン軍をナイフで切り裂いていった。

 ジャクリーヌは時間を気にしていた。

(そろそろリーン軍を撤退させないと…袋のネズミになってしまう…)

 ポットピットたちは「決死隊」だが…ジャクリーヌたちはそうではない。あくまでも、ポットピットたちが王城に侵入するまでの「手助け」だ。無為な時間の経過を許すと…ラクスマンの全軍二万と戦うことになって、結果、ジャクリーヌたちも全滅してしまうのだ。

 ジャクリーヌはポットピットの近くまで行って叫んだ。

「そろそろ我らは帰投するぞっ!」

「おうっ、ご苦労じゃったな…セレスティシアによろしく言っといてくれぃっ‼︎」

 そう言うと…ポットピットとギガレスはウィリー、アンソニー、ボイドと残存兵を引き連れて王城の中に消えていった。

 リーン軍がベルデン領の緩衝地帯に大挙して布陣したせいで、夜にもかかわらず王城の中には非常呼集を掛けられたかなりの数の兵士とそれを指揮する軍閥貴族たちが集まっていた。これも…王城に殺したい連中を集めて一網打尽にするというポットピットの狙い通りである。

 後ろ髪を引かれながらも…ジャクリーヌたちはもと来た道を撤退していった。

 東門付近でも、門を占拠して退路を確保していたリーン兵1000と城下町の外から駆けつけてきたラクスマン兵が小競り合いをしていた。だが、戻ってきた3000のリーン兵の圧力でラクスマン兵を退けていって、ジャクリーヌたちはバーグ領への撤退を成功させた。

 この戦闘で、ジャクリーヌ率いるバーグ、ドルイン連合軍の損耗は74人で100人に満たなかった。

(風神軽騎兵も失ったのはたったの6人…強行した割には大成功じゃないか…?)

 そう思っているジャクリーヌの騎馬にダスティンが馬で駆け寄ってきた。

「おぉ〜〜い、俺も連れていってくれぇ〜〜っ!」

「ダスティン、お前はポットピットたちと一緒に玉砕するんじゃなかったのか?」

「そんな訳ないだろ、何でポットピットの老いぼれのためにこの命をくれてやらにゃならんのだ⁉︎俺が命を賭すとしたら…それは、セレスティシア様をお守りする時だけだ!」

「ははははは、殊勝な心掛けだな。」

 ダスティンは心の中で…もう二人、ルルブとまだ顔も見ていない自分の子供をその中に付け加えた。

 ジャクリーヌはバーグ領で連合軍を再編成して再び布陣した。

「二週間後、我々はもう一度行くぞ。今度はエステリック王国だっ!」

「おおぉ〜〜っ‼︎」


 「&%$**+、=@@><=&#$%+%#&#$%&。(地の精霊ノームたちよ、我の視線の先の地面に槍を作れ。)」

 床に嵌め込まれた大理石の板を跳ね上げて、幾つもの岩の槍が下から突き上げて昇降階段を守る騎士兵や近衛兵を天井に叩きつけた。

「おぉ〜〜い、王族どもはこの上じゃ…急げ急げ。」

 深度4の「遠当て:草薙ぎ」で、10人単位で敵を屠っていたギガレスは、ポットピットの意を理解して二階に続く階段に向かった。そのギガレスに「ヒール」を掛けながら…

「お前らも急げよ…お…ウィリー、アンソニー、ボイド?…もう、いなくなったのか…」

 ポットピットとギガレス以外はもう、みな斃れていた…。

 三階に登り、謁見の間の近衛兵たちを一蹴し、宰相の執務室を通り、国王の居室に飛び込んだ。そこにも数十人の近衛兵たちが待ち構えていた。

「ギガレスよ、もう魔力がない…ちょいと頑張ってくれ…。」

 ギガレスは深度4の「紫電改」でその数十人も一蹴した。しかし、そのギガレスも無数の切り傷や刺し傷を受けていて満身創痍の状態だった。

 ポットピットは倒れた近衛兵の顔を確認しながら…言った。

「おかしいのぉ…王族がどこにもおらん…。」

 ポットピットは地の精霊を纏って「地走り」状態になった。ポットピットの頭の中に王城の三次元見取り図が描き出された。

「そうかぁ…しもうたっ!隠し扉と隠し通路があったのか…王城にはお決まりじゃな。」

 ポットピットは国王の居室の壁の一角を右足で蹴り飛ばすと、壁の一部がスライドして隠し通路が現れた。

「行くぞぃ、ギガレス!」

 ポットピットとギガレスはその隠し通路の中に消えていった。

 結果から言うと…ポットピットたちはラクスマンの王族を討ち滅ぼすことはできなかった。


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