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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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五百四十四章 勝利へのパズル

五百四十四章 勝利へのパズル


 グラントはリーンの「セコイアの懐」の村に戻って来た。グラントはふもとまで馬車に乗って、それから馬車を曳いて「セコイアの懐」に続く小径を歩いていた。

 二十頭くらいの牛の群れがのどかに牧草を食べていて、その中心辺りに木造の小屋があった。ホイットニー一族の家だ。

 グラントの馬車を見つけて、小さな女の子がさらに小さな男の子をおんぶしてその家から凄い勢いで飛び出してきた。小さな男の子の頭は右に左に大きく揺れて、男の子は目と口を丸くしてびっくりしていた。

「グラントォ〜〜ッ!今度はどこ行って来たのぉ〜〜?」

 シーラとスタリーだった。グラントは言った。

「うん、ラクスマンのダスティンのところ…そうそう、スタリーのお父さんのところに行ってきたよ。」

「ええぇ〜〜…スタリー、あんたの父ちゃんのとこに行って来たってよ!」

「あうあうぅ…!」

 スタリーはまだ生後四ヶ月…シーラの言葉をニコニコして聞いているだけだった。

 グラントがシーラたちと別れて小径を進んでいると、小屋から血相を変えたルルブが走ってきて、スタリーを抱きかかえ…「おんぶして走っちゃだめ!」とシーラを叱っていた。

 小径を徒歩で登ったグラントは「セコイアの懐」のリーン会堂に到着した。そこでグラントは見慣れない物を見た。

「あれ?…会堂の隣に小屋が増えてる。いつの間に増築したんだろう…。」

 グラントはリーン会堂に入って行った。

「どうも、只今戻りました〜〜。」

「お、グラント。」

 リーン会堂にはティルムがいて、真ん中に置かれている書斎机で事務処理をしていた。本来ならヴィオレッタかエヴェレットの仕事だが、現在二人は不在なので仕方なくだ。

「グラント、何か情報はありましたか?」

「…エステリックは現在、戦時非常事態宣言が出されていて入れません…ティアークのレイモンドは行方知れずで、会えたのはラクスマンのダスティンだけでした…」

「ああ、レイモンドはコッペリ村にいるらしいよ。」

「…えっ、どうしてそれを?」

「セレスティシア様から連絡があってね…ほら、例のハヤブサ。それで、イェルマはエステリック軍と戦争をしているらしい…驚いたよ…何とか持ち堪えているらしいが…」

「それ、聞きました聞きました!ラクスマンにポットピットって人がいて…教えてもらいました!」

「ポットピット…『スケアクロウ』のボスかっ⁉︎…変な人が絡んできたなぁ…大丈夫なのか?」

「それがですねぇ…王国転覆を目論んでいるようで、セレスティシア様と連絡を取って欲しいと、それで…リーンにラクスマンを攻めて欲しいと…!」

「何だとっ!んんんん…私には判断のしようがないな…。早速、ヨワヒム殿に言って、セレスティシア様に報告しよう…。」

 そう言うと、スクルはグラントを連れ立って隣の新築の小屋に赴いた。

 グラントは不思議そうに言った。

「えっ、ここって…もしかして…ホイットニー家の隣に増築するんじゃなかったの?」

「色々と考えた結果、リーン会堂の近くが良いと言うことになった。ここならセレスティシア様の連絡をすぐに共有できるし…それに、近い方が監視しやすいしね、あの二人は何をしでかすか判らないから…。」

 二人が小屋の扉を開けると、そこは十二畳くらいの広さで右端と左端に寝台が置いてあり、南向きの大きな窓があった。真ん中には大きなテーブルが置いてあって、その上には多数の羊皮紙のスクロールが散乱していた。ここがヨワヒムとライバックの「研究室」である。

 ヨワヒムはトランス状態で、その横でライバックが羊皮紙に羽根ペンを走らせていた。

 ライバックは言った。

「おう、良いところに来たな。ちょうど、セレスティシア殿からの伝言を受信中じゃ。」

「…こ、れ、か、ら…毎朝…九時…定時…連絡…す、る…ふうっ、終わったぁ…!」

 ヨワヒムは両目を押さえて自分の寝台に倒れ込んだ。

「…『意識共有』と『テレヴィジョン』は体に堪えるのぉ〜〜…年々、きつくなって来たわい…。」

 ティルムが言った。

「ヨワヒムさん、お疲れのところすみませんが…すぐにセレスティシア様に伝言をお願いしたい。」

「…な、何じゃと!…明日にしてくれんか?」

「いや、今すぐです。」

「うくく…」


 ヴィオレッタエクスプレスが「ピィ〜〜」と鳴いた。

 ヴィオレッタはおや?っと思った。

「ん…もう返事が来たのかな?」

 ヴィオレッタは大きくアルファベットを書き込んだ羊皮紙をハヤブサの前に置いた。ハヤブサはそのアルファベットを嘴でツンツンと突いていった。

(ぽ…と…ぴ…と…ポットピット?だ…す…てぃん…と…ご…う…りゅ…う…合流?ダスティンさんは確か、ラクスマンにいたよね…ラクスマン城下町でポットピットさんと再会したってことかな…は…ん…ら…ん…反乱?)

 ヴィオレッタはヨワヒムからの伝言を受け取った。その直後、ヴィオレッタエクスプレスはその場を飛び去っていった。

 エヴェレットは言った。

「セレスティシア様、何か新しい情報はありましたか?」

「なんか…ラクスマン王国がきな臭い事になりそうです。それで、ポットピットさんが反乱を起こしたいので、リーンに手を貸せ…と。」

「いえいえ…こちらはこちらで手一杯ですよ!いざとなれば、リーン軍にはラクスマン王国じゃなくて、このイェルマ渓谷に応援に来てもらいたいくらいですよ‼︎」

 その時ヴィオレッタは…頭の中の常に流動して形を変えるジグゾーパズルをカチカチと整理していた。どうしても…うまくパズルが完成しない…。

(あと1ピース…決め手になるピースがあればなぁ…)

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