五百四十三章 秘密結社
五百四十三章 秘密結社
集会が終わった後、ダスティンとグラントは酒場の二階の一室に案内された。
「おぉ〜〜い、デイヴィッド。ワインを持ってきてくれんかな。」
「すぐに持って参ります。」
ダスティン、グラント、ポットピットの三人はテーブルを囲んで座った。デイヴィッドが三人のコップにワインを注ぎ、そのボトルをテーブルに置いて部屋を出て行った。
ダスティンはワインをひと口飲んだ。
「うわっ、このワイン…うまっ!」
それを聞いたグラントはすぐにコップをあおった。
「うおおぃ…これ、もしかして一等級?」
「ほっほっほっ、それ…一等級のワインじゃ。カネはたんまりあるからな。」
ポットピットも一緒にワインを飲んだ。そして…
「ええと、ダスティンとか言ったかのぅ…。お主はどこで儂と会ったのじゃ?」
「ほら、去年の年末に…リーンでセレスティシア様を狙った刺客騒動があったじゃないですか、俺もその場にいたんですよ。」
「お…おお…おおおおっ、お前…セレスティシアが雇っている斥候たちの中のひとりか!」
「思い出してくれましたか?」
「いや…斥候はたくさんおったからなぁ…。」
「…あ、そ。」
「…ってことは、お主は儂が『スケアクロウ』の首領だという事も知っておろうなぁ。」
「もちろん、知っていますよ。それで…ポットピットさんはどうしてあの『反政府運動』の集会なんかにいたんですか?」
「いたも何も、あの集会は儂が計画したものじゃ。」
「えっ…あんたが『計画』した?」
「…お主たちなら喋っても良かろう…何せ、ラクスマンの敵側じゃからな。そうじゃ、『反政府運動』は儂ら『スケアクロウ』が煽動しておる…。」
「…なぜ?」
「ラクスマン王国を転覆させたいと思っているからじゃ。時間を掛けて反動勢力を育て、時期を見計らって…反乱、革命、そして王族貴族は皆殺しじゃ、ほおっほっほっほっほっ!」
「そうか…。そういう話なら、俺たちにも手伝わせてくれ。ラクスマン王国が滅んでくれりゃ…リーンにとって、これほどありがたい話はない。なぁ、グラント?」
「うはははは、そうだともっ!俺に任せとけぇ〜〜っ‼︎」
「…グラント?」
グラントはいつの間にか、一等級のワインのボトルを一本空けてしまっていた。
それを見たポットピットは言った。
「こいつは…使えるのかい?」
「いや、こいつは気にしないでくれ…雑魚だから。」
次の日の朝、四人は城下町の大通りを馬車を使って移動した。
到着した場所は城下町の目抜き通りに店を構える大きな粉屋…穀物問屋だった。馬車を店の前に横付けすると、四人の年若い奉公人が出てきた。
「ご隠居さん、デイヴィッドさん、お帰りなさい。」
「お客さんを連れてきました。三階の応接間を準備してください。」
「かしこまりました。」
ダスティンたちが馬車を降りると、その粉屋は思ったよりも大きく立派な外見だったのでダスティンは驚いた。
一階では多くの客が買い物をしていた。繁盛しているようだ。
三階の一室に入ったポットピット、ダスティン、グラントは革張りの立派なソファに座った。
ダスティンは言った。
「ここが…暗殺集団『スケアクロウ』の拠点なんですね?」
「その通りじゃ…だが今はもう、暗殺稼業はやめた。今は、昨日も言ったように…王国転覆の準備に注力しておるな。強いて言えば、反政府ギルドかな…いや、公式には存在せぬから、革命のための『秘密結社』じゃな。」
「しかし、よくこんな大きなお店が持てましたねぇ…。目立ちませんか?」
「そもそも、この店は二百年くらい前に建てた。『第四次人魔大戦』終結の頃かのう…暗殺の報酬を注ぎ込んでこの店を建てた。多くの孤児を拾って刺客として育てたが、中にはそう言った素質を持たぬ子供もいてな…そういう子の将来を考えてこの店を作ったのじゃ。デイヴィッドもその中のひとりじゃ。…だから、この粉屋は二百年の伝統を持つ老舗の穀物問屋なのだぞ。怪しむ者は誰もおらん。」
すると部屋の扉がノックされた。デイヴィッドだった。
「ご隠居さん…ウィリーさん、アンソニーさん、ボイドさんが来ましたよ。」
「うむ、通せ。」
三人が入って来て、ダスティンとグラントに軽く挨拶した。彼らはみんな、五十前後の初老に見えた。
「ウィリー、アンソニー、ボイド…以前話したじゃろ、このダスティンはパイクの後始末をした時の…ほれ、その…」
「ああ、リーンの斥候たちだな。その折は失礼した…俺たちも斥候だ、よろしくな。」
ポットピットはお茶を啜りながら言った。
「こいつらは『スケアクロウ』の最古参でな…儂とギガレス、そしてこいつらで『スケアクロウ』の最後のメンバーじゃ。こいつらにはそれぞれ、城下町の南部、西部、東部で反政府活動の組織作りを任せておる。」
「…本格的ですねぇ。」
「組織作りと言ってもな…貧民に食料の配布をしていおるだけだけどな!だが…これが大事なんじゃ。飯が食えない奴らに飯を食わせる…これだけで儂らに加担してくれる。裏を返せば、それだけこの国は病んでおると言う事じゃ。カネは暗殺稼業でため込んだし、穀物は売るほどあるからな!」
「それで…俺たちは何をしたらいい?」
不意に…ポットピットの表情が険しくなった。
「いざという時に…ベルデンとバーグの軍を動かして欲しい…」
「えっ!」
「儂らが蜂起して王城に詰めかけた時に、お主たちがラクスマンの国境を脅かしてくれれば…ラクスマンの守備力を分散させることができるじゃろ?」
「それはそうだが…俺の一存ではなぁ…。」
「セレスティシアに掛け合ってくれ。」
「いやぁ…そのセレスティシア様は現在、イェルマ渓谷におりまして…」
「イェルマ渓谷?あそこは今、戦争の真っ只中じゃぞ。」
「えええっ…まさか!…どうしてそんな事をあんたが知ってるんだ?」
「ラクスマンの貴族の中には、儂が鼻薬をたっぷり嗅がせた奴らもおるでなぁ…イェルマはなかなか、善戦しておるらしいぞ。」
「ううう…セレスティシア様…」
「もしかして、セレスティシアと連絡を取る方法はないのか?」
「あるにはあるが…」
「ならば、とにかく…セレスティシアにその旨を確認してくれ。」
ダスティンは隣に座っているグラントに言った。
「グラント、すぐにリーンに戻ってハヤブサ…『ヴィオレッタエクスプレス』でセレスティシア様と連絡を取ってくれ。」
「分かった…」
「それで…お前はエステリックとティアークは回らなくて良いから、俺とリーンの間を往復してくれないか。それで、新しい情報があったらすぐに俺に教えてくれ。」
「…今すぐ…?」
「今すぐだっ!」
「何か、僕ばっかりが忙しいなぁ…。」
「お…おいっ…!」
ポットピットがテーブルの上の呼び鈴を叩いた。するとデイヴィッドが部屋に入ってきた。
「お呼びで?」
「うむ、グラントくんにお土産を…一等級のワインを三本ほど持たせてやってくれ。」
グラントは立ち上がって言った。
「行きますっ!すぐにリーンに出発しますっ‼︎」




