表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
518/538

五百十八章 攻城戦 その1

ユニークがもうすぐ二万に達しようとしています。ほかの巨匠の方々に比べれば微々たる数字ですが、私の拙い小説を毎回読んでくださる方が二万人もいるということは個人としてはとても嬉しいです。ありがとうございます。

この物語もようやく終焉がみえてまいりました。…とは言ってもまだ続きます。

もうしばらくお付き合いくださいますよう、よろしくお願いいたします。

五百十八章 攻城戦 その1


 ヴィオレッタはエヴェレットと共に北の三段目にやって来た。降りて右に右に…城門側に進んでいくと、ひとつの大きな幕屋があってその入り口には射手房師範のタチアナが立っていた。

 ヴィオレッタは言った。

「あっ、多分、あそこですね。護衛のタチアナさんがいますよ。」

 タチアナはヴィオレッタを見とめると、幕屋に入って…そしてすぐに出てきて言った。

「セレスティシア様、どうぞ。」

 ヴィオレッタとエヴェレットが幕屋に入ってみると、中には簡易的な寝台と二人掛け用のテーブルと椅子が置いてあった。そのテーブルに着いて、ボタンはドンブリの中の雑炊を口に掻き込んでいる最中だった。

「ん…失礼。今、朝食を済ませた。何か、ご用かな?」

「ボタン殿が城壁で戦闘指揮を執っていると鳳凰宮で聞きまして…私も現地視察をしようと思いつきまして…。」

「そうか、それはありがたい。セレスティシア殿は敵の塹壕計画を看破していたとの事…イェルマの立派な軍師だな!」

 ヴィオレッタ、ボタンそしてエヴェレット、タチアナは揃って城壁の上に登っていった。

 すると城壁の上にはすでにペーテルギュントもいた。

「おはよう、セレスティシア。」

「おやっ、ペーテルギュントさん…野暮用とか言って、戻って来ないと思ったらこんな所にいたんですか…」

「うん、僕は射手房のイェルメイドとは大の仲良しだからね。」

 四人してイェルマ回廊の入り口付近を眺めた。

 ヴィオレッタが言った。

「…塹壕を掘っていたというのはあの辺りですかぁ。死体が放置されてますねぇ…いけませんねぇ。」

 ボタンは言った。

「仲間の死体を放置したままにするとは…エステリック、許せんな。」

 ヴィオレッタは城門前広場を見て思った。

(…塹壕だけではこのイェルマ城門は攻略できないな。私なら…ん…もしかして…?)

 昔読んだ「図解 戦争兵器の歴史と発展」の本のページのイラストがヴィオレッタの脳裏をチラリと横切った。

「セレスティシア殿、どうされましたか?」

「ああ…ボタン殿は怪しげな大型荷馬車の話は聞き及んでいますか?」

「マーゴットの魔導士から聞きました。…一体何を運んでいたんでしょうねぇ…?」

 その時だった。イェルマ回廊から…前回と同じように金属鎧の騎士兵がタワーシールドを前に構えて進軍してきた。騎士兵たちはずらっと横に並んで、やはりタワーシールドで壁を作った。その数はどんどん増えていき…イェルマ回廊の入り口に四列横隊を作った。

 それを見たボタンは言った。

「うお…昨日の倍の数だな。性懲りも無く同じ手で来るとはな…」

 すぐにボタンは城壁下で待機しているイェルメイドたちに出撃命令を出した。城門が開いて、昨日と同様に300余りのイェルメイドたちが「蜂矢ほうし」の陣で出撃した。

 ペーテルギュントが異変に気付いた。

「おや…敵のタワーシールドがどんどんこっちに進んできてますね。」

「…何!あいつら、戦術を変えてきたのか…?」

 タワーシールドを掲げた騎士兵団は四列横隊でどんどん前進してきて、昨日は10m程進んで止まったのに…今朝は50m近く進んで城門の前方150m近くまで迫ってきた。それと同時に、イェルマ回廊から義勇兵団もどんどんと湧いて出てきて、騎士兵団の後方に溜まっていった。遠目に見ても…その数は裕に500を超えていた。

 するとペーテルギュントが叫んだ。

「…まずい!皮鎧の兵士の中に…ローブを着た者がいる!」

 一瞬の事でボタンには理解が追いつかなかったが…すぐにヴィオレッタは理解してボタンに大声で言った。

「魔法攻撃が来ます…軍を下げてっ!」

 間に合わなかった。エステリック軍のあちらこちらからタワーシールド越しに火球が飛んだ。火球はイェルマ軍の先端…大三角形で爆裂した。

「うわあぁっ…!」

「ぎゃっ!」

「…はううぅっ!」

 直撃を受けた剣士と戦士の先鋒隊は散り散りに四散した。蜂矢の陣が崩れると…騎士兵のタワーシールドの列が割れて無数の義勇兵を吐き出した。

 その状況を城壁上から見ていたアルテミスは、ボタンの命令を待たずしてアーチャーに命令を発した。

「魔導士を狙って矢を放てっ!」

 城壁上から雨のような矢が降って義勇兵団を襲った。それでも…イェルマ回廊からの義勇兵の供給は止まらず、押し出されるようにして彼らはイェルメイドに向かって突進していった。

 矢が飛び、「ファイヤーボール」が飛び…そんな中でも接敵した兵士たちは目の前の敵を剣、槍、斧で叩いていた。大混戦となった。

 イェルメイドと義勇兵が接敵したにも拘らず魔法攻撃は止まず、味方の義勇兵を巻き添いにして「ファイヤーボール」が炸裂していた。

 ベレッタの騎馬隊は「ファイヤーボール」に馬が怯えてなかなか近寄る事ができなかった。

 馬上の中堅のケリーが叫んだ。

「ベレッタ師範、危険です…お下がりくださいっ!」

「うおおぉ〜〜っ‼︎…な…仲間が燃えているぅ〜〜…」

 魔導士の騎馬隊は仲間に「ヒール」を掛けて走り回っていたが、すぐに魔力を使い果たして沈黙した。

 ボタンは撤退命令を出すかどうか迷った。しかし、次の光景を見た時…その迷いは消え失せた。

 義勇兵がイェルマ回廊から巨大な車輪を転がしながら運んできた。イェルマ回廊から車輪、角材、鉄製の金具などの資材が運ばれてきて…この乱戦の中、イェルマ回廊の入り口の前でエステリック軍は何かを組み立て始めたのだった。

 すぐに気が付いたヴィオレッタは叫んだ。

「あれは…『投石機』ですっ!アレを作らせてはダメですっ‼︎」

 イェルマ城門を攻略するには「投石機」が必要だろう…そう思っていたヴィオレッタの戦術をエステリック軍は実行してきたのだ。

 通常であれば、投石機は安全な自陣で建造し、それを敵陣近くまで牽引していって使用するものだが、イェルマ回廊は狭すぎて投石機は通過できない。そこで、投石機を小さく分解できる組み立て式にしてここまで運搬してきたのだ。それでも、まさか…この戦闘の最中さなか、この戦場のど真ん中で投石機の組み立てを始めるとは…!

 ボタンは叫んだ。

「投石機を作らせるなぁ〜〜っ!第二陣、出撃せよぉ〜〜っ‼︎」

 先に「蜂矢ほうし」の陣で投入していた300に加え、さらに300のイェルメイドたちが城門から出撃していった。その上に魔法攻撃を想定して20人の魔導士の騎馬隊も加わった。


 中広場の後方に控えているオリヴィアは仲間の再度の出撃を見て、タマラとペトラに詰め寄って大声で叫んだ。

「どうなってるのおぉ〜〜っ⁉︎うちらは勝ってるの、負けてるのおぉ〜〜っ?」

「そんなの分かるかぁ〜〜っ!…だが、兵の追加投入をしたって事は…旗色が悪いのかも…。」

 タビサもオリヴィアに同調して文句を言った。興奮しているせいか人語になっていなかった。

「ふみゃああぁ〜〜っ!…みゃうみゃう、うわぁ〜〜う…‼︎」

 城壁からのアーチャーの一斉射撃はそれなりに功奏していた。敵軍が150m付近まで寄ってきていたおかげで、城壁と敵との角度が増してアーチャーの矢はタワーシールドを飛び越して義勇兵の群れに命中した。少しづつではあるが、魔法攻撃の頻度が減ってきていた。

 ジェニが叫んでいた。

「み…見えない、見えないっ!私の『イーグルアイ』じゃ…魔導士の判別なんかできないよぉ〜〜っ‼︎」

 サリーが言った。

「ジェニさん、とにかく射ちまくってっ!…外れたって、隣の兵隊に当たるんだからっ!…あっ、こら、クレア…もっと頭下げろっ‼︎」

「ぴえぇ〜〜ん…」

 アルテミスはタチアナに目配せして、二人して投石機を組み立てている騎士兵を狙撃した。二人の正確な狙撃で、資材を運ぶ者、ハンマーで金具に釘を打ち付ける者などの金属鎧を貫通して矢が突き刺さり…ひとり、二人と投石機の組み立て作業をしている騎士兵は倒れていったが…すぐに、タワーシールドを掲げた騎士兵が複数人集まってきて盾の壁を作った。

「…くっ!」

 鋼板を貼り付けたタワーシールドは、アルテミス、タチアナの矢では貫通させる事はできない。

 そこで、アルテミスはスキル「アジャスト」を使って矢を射った。放たれた矢はタワーシールドに向かって飛んでいったが途中で僅かに軌道を変え、矢は投石機の大きな車輪に突き刺さった。

「ちっ、作業兵を狙ったが…外れた。」

 アーチャーのスキル「アジャスト」は放った矢の軌道を補正するスキルである。しかし、距離が200mも離れると、軌道を補正した矢を目標に命中させるのは非常に難しくなる。

 すると…ペーテルギュントがおもむろに矢筒から数本の矢を抜いて、弓につがえて放った。その瞬間、アルテミスとタチアナはペーテルギュントの強烈なスキル発動を感じた。

 放たれた矢はいとも簡単にタワーシールドを貫通して、さらに金属鎧すらも貫いて騎士兵の体に突き刺さった。アーチャーの深度4のスキル「アーマーピアシング」だ。

 アルテミスとタチアナは歓声を上げた。

「うおおおぉっ…師匠、凄いっ‼︎」

 しかし、数人倒した時点で…騎士兵はタワーシールドを二枚重ねて対抗してきた。さすがにこれはペーテルギュントでも貫通させる事はできなかった。

「…僕ができるのはここまでのようだね。」

 タチアナが言った。

「…あれだけペーテルギュントさんにやられたら、普通は逃げていくのに…こいつら、何が何でもって感じだな…。」

 タチアナの言葉通り…カイルは「投石機死守」を騎士兵団に厳命していたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ