五百二章 最強武器完成…目前?
五百二章 最強武器完成…目前?
「鋳型」に溶けた鋼を流し込んで十二時間が経った。
箱の留め金を外して木槌でコンッと叩くと、箱は左右に割れ砂がこぼれ落ち、中に砂の塊が残った。さらにそれを木槌で丁寧に叩いていくと…鋼製の銀色の鋳造物が少しずつ姿を現した。
完成目前のオリヴィアスペシャルマークⅡが二本揃った。オリヴィアはその取っ手を持ってみて、歓喜の叫びを上げた。
「うおおぉ〜〜…最強の武器、わたしのオリヴィアスペシャルマークⅡ…!」
だが…よくよく見ると、「砂蟲の歯」がどこにもない!
「あれれん、『砂蟲の歯』はあぁ〜〜?」
「ちょっと待ってな…」
そう言って、アヤメとドミニクはそれぞれヤットコで鋼の枴を掴むと、その先端を炉の中に突っ込んだ。
しばらくして、枴の先端が真っ赤になっているのを確認すると、鉄槌を持ち出して枴の先端を縦にしたり横にしたりしながら細かく叩き始めた。
すると、真っ赤な鋼の中から白い物が見えてきた。アヤメとドミニクは鉄槌を小さいものに変えて、なおも叩き続け…少しずつ枴の先端を成形していった。
鋼は冷えていって、小さな鉄槌でも鋼部分を削ることができるようになり…鮮やかな白い刃が銀色の鋼の枴の先端で鈍い光を放った。
カキィィィン…
「あっ…と…」
アヤメが誤って鉄槌で白い刃を打ってしまい…鉄槌が綺麗に真っ二つに割れた。恐ろしい切れ味だ。
ある程度出来上がって、アヤメは二本の枴をオリヴィアに持たせた。
オリヴィアが取っ手を握ってみると、重心のある長い部分が下を向き、短い部分が上を向いた。この短い部分に『砂蟲の歯』が埋め込まれているのだ。
オリヴィアはまじまじと眺めて、それから言った。
「あのさぁ、『砂蟲の歯』はさぁ…下に付けた方が良かったかなぁ…?それだったら、ぶん回して敵をスパスパ斬れるじゃん?」
すると、アヤメが言った。
「絶対ダメだ。その『歯』を下に付けたら…いつか必ず誤って自分で自分の腹を切ってしまうぞ。」
ロングソードやショートソードなどの両刃剣を多用する剣士アヤメの…経験者の貴重な言だった。これが通常の鋼の刃であれば、体に接触しても皮が一枚切れるぐらいで済むが…『砂蟲の歯』だと掠っただけでも致命傷になりかねない。
「そ…そうか、確かに…。練習してたら、樫の木の枴でも…何度も自分のお腹にぶち当たってたもんね…。」
「全体的な重さはどうだい、重くないかい?重心の位置はいい具合か?」
「ちょっと重い感じもするけど…慣れたら大丈夫そう。ありゃっ…取っ手が手のひらに引っ掛かってクルクル回らなぁ〜〜い…。」
「鋳型から出したばっかりだから、表面がザラザラしてるんだよ。砥石で磨かないと…まだまだ微調整が必要だよ…」
するとそこに、鍛治工房に女魔導士がやって来た。
「アヤメ様…あっ!」
女魔導士はアヤメたちと一緒にいるオリヴィアを発見して絶句した。アヤメは右の手のひらで女魔導士を制しつつ言った。
「オリヴィアの件は後だ…報告を頼む。」
アヤメは引退したとはいえ…いまだにイェルマに影響力を持ち、「念話」ネットワークの魔導士から逐一情報を得ている。
「えと…じきにボタン様が戻られると、帯同していた魔導士から『念話』がありました。それから、エステリック軍がイェルマ回廊に侵入したため…回廊が封鎖されました。」
「そうか、分かった…ありがとう。」
オリヴィアは女魔導士からイェルマの危機を知って激怒した。
「ぬおおおぉ〜〜っ…同盟国めっ!…何としてくれようぅ〜〜っ…!このオリヴィアさんが今すぐにでも正義の鉄拳を見舞ってくれようぞ…」
オリヴィアの悪魔の如き形相を見た女魔導士は恐れ慄きながらも…呪文を唱え始めた。
「美徳と祝福の神ベネトネリスの名において命じる…地の精霊ノームよ、冥府より這い出でて敵をその虎バサミで…」
女魔導士は脱獄したオリヴィアを「アーストラップ」の魔法で捕縛するつもりだ。
「…待て。」
アヤメがそれを止めた。
「今、ここに至って…オリヴィアを懲罰房に戻してどうなる…。エステリックに我が領土を脅かされているというのに、貴重な戦力はひとりでも多い方が良いだろう…。」
「し…しかし…」
「その旨…私が女王に具申する。今の言葉をありのまま女王に伝えておくれ。」
「わ…分かりました。」
アヤメはオリヴィアの方に向き直って言った。
「…で、オリヴィアはどうする?」
オリヴィアは言った。
「オリヴィアスペシャルマークⅡが完成するのを待ってられない…すぐに参戦したいっ!」
「ふふふ、武人だねぇ…。オリヴィアナントカカントカは責任を持って完成させておくから…行ってきなさい。」
「行ってくるぅ〜〜っ‼︎」




