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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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四百九十四章 最強武器完成…目前!

四百九十四章 最強武器完成…目前!


 オリヴィアは三日ぶりに鍛治工房に顔を出した。

「ふぃ〜〜…お腹すいたぁ…おばちゃん、何か食べる物なぁ〜〜い?」

 ボタンの母アヤメは、驚いた顔をして言った。

「オリヴィア…今まで何をしてたんだいっ!」

「ん…山に籠ってずっとかいの猛特訓よ。おかげでさぁ…深度3の『梅花掌』ってのを会得しちゃった、あひゃひゃひゃひゃっ!…ただね、覚えたはいいけど、どんなスキルなのかさっぱり分かりゃん。」

「剣士の私に訊かれたってねぇ…じゃなくて、東城門が襲撃されたんだよ!」

「何ですとぉっ⁉︎…一大事じゃないかぁ〜〜っ‼︎」

「それで、ボタンが援軍に行ったらしい。近々…非常事態宣言が出るかもしれない…」

「風雲、急を告げる…ってヤツか。」

「うまい事言うねぇ…じゃなくて、鍛治工房は忙しくなるから…お前のオリヴィアナントカカントカに構ってられないんだよ。…悪いけど、武器の製作は一時中断だ。」

「ええええぇ〜〜っ⁉︎」

 オリヴィアが鍛治工房の奥を覗いてみると…何と、夜番の戦士房OGのドミニク、ラムジィ、ミカエラもいて、五人掛かりで鉄槌で鉄を打っていた。本当に忙しいようだ…。

 ドミニクがオリヴィアに気付いて手を止め、何かを抱えて持って来た。

「オリヴィア、すまないねぇ…。何とか、ここまでは作ったんだけど…」

 ドミニクは作り掛けの武器をオリヴィアに手渡した。それは…一見、すでに完成しているようにも見えた。

「んん…軽い。これって、木製なのね?…あれ、本体部分が少し平たくなってる?」

「うん、理由は三つ…『砂蟲の歯』の幅に合わせた。それから攻撃を受けた時に前腕の衝撃を少なくするためだ。それと平たい方が攻撃した時に相手によりダメージが伝わる。」

「…『砂蟲の歯』はどこ行ったの?」

「それは鋳造するための『雛形』だよ。木工職人に設計図を渡して削り出してもらった。」

「…ヒナガタ?」

 例えば、人形の銅像を作る時、まず、木材を削って人形そっくりの「雛形」を作る。次に、木製の箱に鋳物用の砂を詰め、そこに人形の「雛形」を埋めて型を取る。「雛形」の上下でそれぞれ型を取って「雛形」を取り出し、上下の木箱を合わせると砂の中に「雛形」分の空洞ができて「鋳型」ができる。そこに溶けた銅を流し込んでしばらく放置すると…銅は固まって、銅製の人形ができるのである。上下の箱を外し、鋳物用の砂を取り払うと人形の銅像だけが残り、後はヤスリなどで表面を仕上げると完成だ。

 オリヴィアは何とか…ギリギリ…理解できた。

「な…なるほどぉ〜〜…」

「…『鋳型』を作った後に、『砂蟲の歯』をその中に埋め込んで溶けた鋼を流し込むつもりだった…『砂蟲の歯』は鋼の融解温度でも溶けないからな。」

「おおっ…オリヴィアスペシャルマークⅡはオール鋼製なのねっ⁉︎」

「樫の木のかいより重たくなるが…攻撃力と耐久性は格段に上がるよ。」

 オリヴィアはしばらく考え込んで…そして言った。

「ねぇねぇ、ドミニクゥ…全部の作業を止めて、オリヴィアスペシャルマークⅡを最優先で作ってよっ!」

「うおぉっ…お前、話を聞いていたか?『大侵攻』だぞ、剣やら防具やら…装備がたくさん必要になるんだぞっ⁉︎」

 オリヴィアはキッパリと断言した。

「むしろ逆でそっ!…オリヴィアスペシャルマークⅡが完成したら、わたしひとりで敵を1000人ぶっ殺せる…絶対ぶっ殺すっ‼︎…だからこっちが先ですっ‼︎」

 ドミニクは呆れた。

「…んもぉ〜〜。お前のその自信はどっから来るんだぁ〜〜?」

 アヤメは…オリヴィアの言葉を聞いて、胸に何か込み上げてくるものを感じた。

 それで…アヤメは叫んだ。

「おぉ〜〜い、みんな集まれっ!今から、全力でオリヴィアナントカカントカを完成させるぞっ‼︎」

「…おお、アヤメさん?」

「私たちは『武人』だ。オリヴィアが敵を1000人倒すと意気を発しているのに…それに応えない訳にはいくまいっ⁉︎…オリヴィア、すぐに完成させてやるっ‼︎」

「おばちゃん大好きぃ〜〜っ!」

 間違いなく…ボタンは母親似だった。

 みんなはすぐに鋳型作りに着手した。かいの雛形を砂の箱で挟み、鋳型が出来るとその先端に慎重に「砂蟲の歯」を配置した。かいは二本あるのでこの工程を二回続けて、「鋳型」を二つ作った。

 同時進行で、鉄材を坩堝るつぼに入れ炉で溶かすと、その中にほんの少し木片を落とした。こうする事によって、溶解した鉄に僅かに炭素が混じり…「鉄」は強靭な「鋼」へと変わる。

 こうして、溶けた鋼を四人がかりで二つの閉じた箱の小さな穴に慎重に流し込んだ。後は自然冷却で鋼が固まるのを待つだけだ。

 オリヴィアは言った。

「どのくらい待つのぉ〜〜?」

 アヤメが答えた。

「…半日ぐらいかな、真夏だからな…。」

「うげぇ…」

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