表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
48/509

四十八章 当たった!

四十八章 当たった!


 ヴィオレッタはティアーク王国の南の街道をひとり歩いていた。街道のど真ん中を歩いたらさすがに目立つので、少し外れて林の中を移動した。

 1時間ほど歩いただろうか。ヴィオレッタは少し休憩しようと、木陰に腰を下ろしてかばんから最後に残ったパンを取り出した。朝は町を出ることにばたばたしていたので朝食を摂っていなかった。

 その時、肩に乗っていたメグミちゃんが飛び上がって大きな蚊を捕まえた。そしてもしゃもしゃと食べてしまった。

「おお、メグミちゃん凄い。役に立ってる!蜘蛛は益虫って言うし、その調子で私にたかってくる蚊とか蝿とか全部食べてちょうだいっ!」

 ヴィオレッタはパンを半分に切ろうと思って買ったばかりのナイフも取り出した。あっ!…これだったのね。ヴィオレッタが買ったのは銀製のナイフだった。

(普通のナイフなら銀貨1枚か2枚…きっとこの銀のナイフだけで銀貨40枚ぐらいだわ。どうしてあんな寂れた雑貨屋にこんな物が置いてあったんだろう。アンデッド狩りの予定なんかないのに…普通のナイフで良かったのに、とんだ無駄遣いをしてしまったわ。ステメント村に着いたら売ってしまおう。)

 ヴィオレッタはパンを半分に切った。銀製のナイフは切れ味は悪くなかった。

「あらっ?このパン…中に何か入ってる。」

 パンの中には茶色の餡が入っていた。食べてみると、何かの肉と野菜を細かく刻んで炒めたもののようだ。調理パンというやつか。まあ、そこそこの味だ。三口で半分を食べた。もう半分は残しておこう…。

 メグミちゃんが肩の上でぴょんぴょん跳ねていた。

(何だろう?このパンの餡が欲しいのかしら?)

 ちょっと指につけてあげてみた。しかし、メグミちゃんはそれを食べずに飛び跳ねるのをやめなかった。

 休憩を終えて、ヴィオレッタは残した半分のパンをかばんに入れ、銀のナイフは鞘に収めて腰帯に差して再び歩き始めた。銀のナイフがわずかに黒く変色していたことには気づかなかった。

 歩きながら地図を広げて現在位置を確認した。

(南門からまだ4kmぐらいか…私の足だとステメント村まで、ざっくり15時間くらいかなぁ…。上手くいけば夜の九時頃にはステメント村に着ける…街道は大きく曲がってラクスマン王国まで繋がっている…左に入る横道を見逃さないようにしなくちゃ…。)

 しばらく歩いていると、突然お腹が痛み出した。下痢も併発した。

(うっ、しまった…絶対…あの調理パンだわ…丸二日経ってるから…腐ってたんだわ…。)

 つい半年前まで愛玩用奴隷だったヴィオレッタは、今まで貴族の間で蝶よ花よともてはやされ可愛がられていた。読書家だったので雑学の大家ではあったが、一般的な常識となると欠けている部分があると言わざるを得なかった。

 ヴィオレッタは何度も何度も草むらにしゃがみ込んだ。それでも腹痛は治まらなかった。そのうちに嘔吐感にも襲われ、何度も戻した。

(…凄くやばい…とにかく脱水は避けないと…「ウォーター」を…)

 しかし、ヴィオレッタはとうとう林の中で気を失ってしまった。仰向けに倒れ込んでしまったヴィオレッタの顔の上でメグミちゃんがしきりに飛び跳ねていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ