四百七十三章 工場完成
…眠い。
寝落ちする前にアップロードしときます@@;
四百七十三章 工場完成
お昼過ぎ、棟梁のリューズがキャシィズカフェに入って来た。
「セドリックはいるかい?」
ワイン倉庫でセドリックと一緒に蚕の蛹から絹糸を巻き取っていたオリヴィアが口をクチャクチャ言わせながら応えた。
「リューズゥ〜〜、こっちこっち!」
リューズはワイン倉庫の方に移動して、オリヴィアを見て言った。
「オリヴィア、何食べてるんだ?」
「…乾燥させた蚕の蛹。」
「それって美味いのか?」
「うぅ〜〜ん、微妙…。なんかね、これ食べてるとお腹が緩くなるみたい…」
「じゃ、食うなよっ!鉄の胃袋か、お前はっ‼︎」
気を取り直して…リューズは隣のセドリックに言った。
「工場だけどさ…一階は簡単な厨房があるから良いんだが、二階、三階はどうする?工場が冬も稼働するようなら、暖房設備が必要になるんじゃないか?持ち運びができる鉄製の小さな釜戸があるんだけど…?」
家屋に釜戸や暖炉を設置する場合、基礎となる石の土台から石や煉瓦を組んでいき、煙突も石造りの大掛かりなものとなる。
しかし、最近では木造の家に後付けできる鉄製の釜戸が普及していた。縦横約50cmで高さ約1m…四本の猫足と2枚の鉄の扉が付いていて、真ん中より少し下のあたりに幾本かの三角形の断面の鉄の棒が渡してある。上の扉を開いて薪をくべると、燃えかすや灰だけが三角形の断面の棒の下に落ちて下の扉を開けて掻き出す事ができる。上部には穴が開いており、鍋やフライパンなどを置く事ができてお湯を沸かしたり簡単な料理を作る事もできる。注意点は一酸化炭素中毒を防ぐために煙突が必要であるという事だ。
「ああ、そうですね…それを二階と三階に二基ずつ、都合四基取り付けてもらおうかな…。」
「分かった。じゃぁ、それはイェルマの工房に発注して後で取り付けるとして…煙突窓を付けよう。それで…工場は完成だよ。」
セドリックはリューズの言葉を聞いて、一瞬呆気に取られた。
「えっ…今、完成…って言いました?」
「ああ、言ったよ。竣工からほぼひと月…予定通りだ。明日、精査して明細と請求書を作って持ってくるよ。」
「リューズさん、ありがとうっ!」
セドリックはオリヴィアの方に向き直り、糸巻きを放り出して思いっきり抱きついた。
「やったあぁ〜〜っ!オリヴィアさん、完成だってさ…僕らのシルク工場がついに完成したよっ‼︎」
「まあっ!ついに完成したのね…セドリック、おめでとうっ‼︎」
オリヴィアはセドリックを腕の中にひしと抱き寄せ、唇を奪いにいった。
「うっ…ちょっと、蚕を食べた口で…それはやめて…!」
するとそこにハインツがやって来た。
「やぁ、みなさん…」
ハインツを見るや、オリヴィアはセドリックを放り出して…言い放った。
「あんた、キャシィと結婚するんだって⁉︎」
「はぁ…はい。結婚します。」
「な…何ぃっ⁉︎」←リューズ
「…げっ‼︎」←工場建設の手伝いに来ていた剣士房のイェルメイド
「うそっ…‼︎」←同上
「な…何でキャシィなの?」← 工場建設の手伝いに来ていた戦士房のイェルメイド
「う…嘘でしょぉ〜〜…?」←同上
「くっ…やられた…!」←同上
後片付けをしながら聞き耳を立てていた大工職のイェルメイドの数人がその場で崩れ落ちていった。
リューズが言った。
「うひょっ、キャシィやるなあぁ〜〜。おぉ〜〜い、ベラ…」
ベラがやって来た。
「どしたぁ〜〜?」
「キャシィとハインツが結婚するんだとさ。」
「何ですとぉ〜〜っ⁉︎」
ベラがツカツカとハインツのそばまで行って、妖艶な笑みを浮かべて言った。
「ハインツ…分からない事があったらお義姉さんが教えてあげるから、何でも言ってちょうだいねぇ〜〜…」
「え…お義姉さん…?」
オリヴィアが得意げに言った。
「ベラはねぇ、キャシィの実のお姉さんですよぉ〜〜!」
「ええっ!…初耳です…よ、よろしくお願いします…。」
「いいよいいよ、身内になるんだから気兼ねなしで行こうよ!」
ハインツは二十六歳、ベラは二十一歳…年下の姉である。しきたりとは不条理なものだ。
ハインツはベラの秋波から顔を逸らしながら話題を変えた。
「えっと…リューズさん。ここの工場の仕事はいつ終わりますか?」
「もう、ほぼ終わったよ。」
「ああ、それは丁度良かった。粉屋の改築をしたいんですが相談に乗ってもらえませんか?」
「おっ、新婚さんの新居は粉屋って訳だね?いいよ。」
ハインツはリューズを連れて、五軒先の粉屋に向かった。ベラもホイホイと着いていった。
しばらくして…粉屋の方角からキャシィの絶叫がかすかに聞こえてきた。
「こらあぁ〜〜っ、ベラ姉ぇっ!ハインツに触るなあぁ〜〜っ…引っ付くなあぁ〜〜っ‼︎」
「ああぁ〜〜ん…妹のモノは姉のモノでしょう…?」
「…んなワケあるかあぁ〜〜っ‼︎」




