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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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四百五十七章 謎の貿易商人

四百五十七章 謎の貿易商人


 朝九時頃、数騎の騎馬を連れた一台の馬車がキャシィズカフェを訪れた。コッペリ村の大通りから舗装された道に入って、そのままキャシィズカフェの前まで来て馬車を停めた。

 馬車から降りて来た男は看板を見上げると、その横の小さなユーレンベルグの紋章のプレートをじっと見つめていた。そして、馬車隊の十人近くの男がキャシィズカフェに入って来た。

「ここは食堂かい?」

 駆け込みカルテットが応対した。

「いらっしゃいませぇ〜〜。はい、ここは食堂ですよぉ〜〜。」

「我々は貿易商人でな…この辺りは初めて来たので勝手がわからないんだ。お薦めは何かな?それを人数分もらおう。」

「では…そぼろおにぎりとハーブティーを九人前でよろしいですか?」

「…おにぎり…何だい、それは?」

「お米という穀物を丸く握った料理です。」

「お米…知らんなぁ…。小麦粉のパンはないのかな?」

「ありますよ。じゃあ、チキンのプレートでご飯の代わりに小麦のパンを二個つけるってのはいかがですか?」

「うん、それでいいよ。」

 それを遠くから見ていたキャシィは少し違和感を覚えた。貿易商人でコッペリ村は初めてというのは変だ…貿易商人ビギナーで、今回初めてイェルマを通過するということなのだろうか?それに…九人が九人、みな同じ背格好で似通った年齢のように見える。中の何人かは護衛役のエステリックの冒険者なのかもしれないが、それにしても…。

 キャシィは駆け込みカルテットと共にこの貿易商人にチキンプレートを運んでいった。

「いらっしゃいませぇ〜〜!この辺じゃ見ない顔ですねぇ〜〜…コジョーに行くんですかぁ、それともマーラント?」

「あ、うん…コジョーに色んな食糧を運んで行くんだ。ええと、商人としてはまだ日が浅くてね…この先のイェルマっていう関所を通って行けば良いんだよな?」

「そうだよぉ〜〜。食糧って、穀物とかかな?」

「…小麦、大麦、ライ麦、トウモロコシ…かな。コジョーに持って行けば高く売れるからね。」

(ん…?今だと、小麦は高騰してるはずだから、コジョーやマーラントで売るより城下町で売った方がずっと儲かるんじゃないかな…?)

「なるほどぉ〜〜…帰りも寄ってってくださいねぇ〜〜、コッペリ村じゃ、うちが一番美味しい料理を出すお店だから!」

「うん、そうするよ。」

 …何かある、キャシィは思った。

 その貿易商人たちはキャシィズカフェで食事を済ませると、そのままイェルマ渓谷へと向かって行った。イェルマ橋を渡り、イェルマ回廊を抜け、イェルマ西城門を通過すると、そのまま丸一日掛けて東城門に到着し、コジョー村に向かって旅立っていった。

 次の日も、同じような馬車が二台、イェルマ西城門でイェルメイドたちの通関手続きを受けていた。

「お前たち…積荷は何だ、どこまで行く?」

「積荷は食糧です。コジョー村まで持って行って売ります。」

「おっ…小麦も積んでるな。全部、イェルマで高く買い取ってもいいぞ。それなら、積荷が軽くなって良いだろ⁉︎」

「うう、勘弁してくださいよ…。もう向こうと約束を取り交わしてるもんで…。」

「そうか…そっちの武器を携帯している奴は誰だ?」

「エステリックの冒険者ですよ、護衛に雇ってるんです。」

「そうか…よし、あそこのイェルメイドにひとり銀貨一枚を支払ったら行っていいぞ。東城門までイェルメイドがひとり同行するからな。」

 商人の馬車を見送ったイェルメイドは、真っ青な空を見上げて額の汗を拭った。

「ふぅっ…今日は暑くなりそうだな…もう、夏かぁ…。」


 謎の貿易商人たちはコジョー村に到着すると、石造りの宿屋に部屋をとり、そして九人で集まって相談した。

「お前はこの村で鍛冶屋を探して盾とショートソードを、お前は弓を調達してくれ。俺は防具を探す。他の者はじきにやって来る仲間のために宿を確保しておいてくれ。一個大隊が集まったら行動を起こすぞっ!」

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