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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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四百五十一章 大精霊と遊ぼう!

四百五十一章 大精霊と遊ぼう!


 セシルはセイラムを捕まえると、セイラムに言った。

「ほらっ、おはじきを出しなさいっ!」

ポンッ…ペッ…

 セシルがセイラムの頭をポンと軽く叩くと、セイラムは口からおはじきをぺッと吐き出した。

 セシルはそのおはじきを空き地の真ん中に置いた。

 その時、マーゴットが馬に乗って駆けつけて来た。

「ふうぅ〜〜っ…間に合った…。」

 ボタンがマーゴットに歩み寄って、馬の手綱を取った。

「マーゴットさんも来たのかぁ。」

「…ヴィオレッタ殿をまじえて、大精霊の召喚をするようだと…魔道士が『念話』で知らせてきまして…慌ててやって参りました。」

 果たして、念話ネットワークの魔導士たちは…一体どこに潜んでいるのやら?

 みんなの注目の中、セイラムはセシルの手を握って、神代語呪文を唱え始めた。

「%#=@<>?=&#&>@#$@#&==?+*&$#@…‼︎(創造神ジグルマリオンの名において命じる…水の精霊ウンディーネよ、大軍勢を率いて布陣せよ、しかして水の軍神を召喚せよ!その肢体は形はあって形なく、個は全てで全ては個なり…水を統べる深淵わだつみの王にして全てを覆い尽くす者…その名はレヴィアタン‼︎)」

 突然、小雨が降り止んだ。みんながそう思ったのは勘違いで…「核」のおはじきは空中の雨を全て取り込んで大きな水柱となり、それは空中で水の球体となった。球体はなおも周辺の雨を取り込んでどんどん巨大に成長していき、そしてそれはヘビのように長くなり…尾ビレがつき、胸ビレがつき、形作られたドラゴンのような頭には幾本もの角と幾本もの牙が生えていた。

 およそ体長20mの巨大なレヴィアタンが地上に降りて来たので、みんな慌てて逃げ惑った。

 ボタンが叫んだ。

「で…デカすぎる、これは暴走かっ⁉︎」

 ユグリウシアが叫んだ。

「…せ、正常です…これは水の大精霊の上位格の『レヴィアタン』です…まさか、上位格を召喚するとは…!」

 セシルも驚いて逃げようとしたが、セイラムが腕を掴んで離さなかったので、セイラムごと抱きかかえて逃げた。

「きゃはははははぁ〜〜っ!」

「こら、セイラムちゃん…笑うなあぁ〜〜っ‼︎」

 セイラムが飲み込んだリール女史が水の精霊を大量に呼び集め、その上、消費した魔力を劇的に回復させている事、セイラムが変質して魔力量が大幅に増えた事、そしてセシルが水の精霊と相性が良かった事…この三つが上位格の大精霊の召喚を成功させたのだ。

 レヴィアタンは地面に着地すると、もんどり打って鳳凰宮の方に少し傾き、屋根を少し破壊してバラバラと屋根瓦を落とした。

 危険と判断したタチアナは弓に矢をつがえてレヴィアタンの頭部を射った。しかし、矢はレヴィアタンの半透明の体に奥深く刺さったが、そのままレヴィアタンの体の中で勢いを失いくるくると回っていた。

 セシルはセイラムに向かって叫んだ。

「セ…セイラムちゃん、何とかしなさいっ!」

 セイラムはレヴィアタンに命令した。

「@&#*$%*+=&%@&#@+*==&#$%@&!(レヴィアタン、ちっちゃくなれぇ〜〜っ!)」

 すると…レヴィアタンは分裂を始め、百以上の小さな個体になり…北の五段目の高台に収まり切れなかった個体は傾斜地をゴロゴロと転がって、北の四段目まで転げ落ちていった。それでも、鳳凰宮の空き地には数十匹のレヴィアタンが残っていて、セイラムの命令をじっと待っていた。

 とりあえず危機は去ったと感じたみんなはセシルとセイラムの周りに集まってきた。

 ボタンが言った。

「鳳凰宮が少し壊れてしまった…凄すぎる…!タチアナの矢が全く効いていないってことは…この大精霊は物理攻撃が効かないってことか…?」

 ユグリウシアが言った。

「水の大精霊は初期格で『ミヅチ』、中位格で『ミドガルド』、そしてこの『レヴィアタン』です。みなヘビの様な姿をしていて、違うのは大きさだけですね…。体が水でできているので物理攻撃は効きません。水属性の魔法を得意とする大精霊ですね…。」

 ヴィオレッタが言った。

「大精霊は…神代語で召喚し制御するんですね…。もし、この大精霊をイェルマの国防に利用できたら…。いや、イェルマに限らずリーンでも…本当に素晴らしい…!しかし…それをこの妖精の少女がやってしまうなんて…。」

 それを聞いたセイラムは自分が褒められたと思って…調子に乗った。

「@$*%$#=*〜&#@@〜=%$@&#@!(レヴィアタン、空に向かって水を吐けぇ〜〜っ!)」

 数十のレヴィアタンが空に向かって、口から一斉に放水した。みんながしばらく空を見上げていると…みんなの上に滝のような雨が降ってきて、ずぶ濡れになってしまった。

 ボタンが言った。

「まぁ…さっきから、雨は降ってたし、もう夏だし…いいけどね…。」

 ずぶ濡れになったみんなを見渡したヴィオレッタは、約一名を見て「おっ!」と思った。ユグリウシアの薄いシルクのワンピースが透けていた。

(まぁ…叔母様、エロティックです…。)

 するとまたセイラムが調子に乗って…

「@&*%$**@$#&%&#$@〜=$&!(レヴィアタン、くるくる回ってっ!)」

 レヴィアタンが一斉に回転し始めた。「くるくる回って」…命令が不明瞭だったせいか、レヴィアタンは軸回転をする者、その場でデングリ返しをする者、円を描いて移動する者など様々で…それは遠目に見ると、数十匹のレヴィアタンがダンスを踊っているかのように見えた。

 強面こわもてのレヴィアタンが踊っているのが滑稽に思えたのか、ライラックに抱っこされていたリグレットがゲラゲラと笑い始めた。

 気を良くしたセイラムはセシルの手を握ったまま、近くにいたレヴィアタンに体当たりしていった。

ザブンッ…

 二人はレヴィアタンの体の中にめり込んで、その水の中でバタバタと両手両足を動かした。カナヅチのセシルは死に物狂いで犬かきをして、レヴィアタンの体の外に顔だけを出して、息継ぎをしながら悲鳴を上げた。

「うぷっ、ぷはぁっ…た、助けてぇ〜〜…ぶぶっ、ぷっ…」

 それを見たリグレットが母親ライラックの腕から飛び降りて、自分もレヴィアタンの体の中にダイブしようとしたので…ライラックはさすがにそれを止めた。

 セシルが溺れないように必死で犬かきをしていたので…握っていたセイラムの手が離れて、その瞬間…全てのレヴィアタンが崩れ落ちて水に還っていった。


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