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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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四百二十七章 セレスティシアの歓迎会 その1

四百二十七章 セレスティシアの歓迎会 その1


 お昼過ぎ、ヒラリー、デイブ、トムソンは宿屋の一階ホールでビールを飲みながら、暇を潰していた。

 トムソンが言った。

「あの女、改めてお礼を…とか言ってたが、やって来ないなぁ…。」

 ヒラリーがクスクス笑いながら答えた。

「トムソン、あんたが男だからだよ。」

「何だ、それはぁ〜〜っ⁉︎」

 その時、床屋の仕事から宿に戻ってきたサムをトムソンが見つけた。

「…あれ、サムか、サムじゃないかっ!」

 サムも驚きつつ、ヒラリーたちがビールを飲んでいるテーブルにやって来た。

「おやぁ〜〜…トムソンさん、ヒラリーさん、デイブさん、何でこんなところにいるんですかぁ〜〜っ⁉︎…お久しぶりですね。」

「サムゥ〜〜、元気にやってるかぁ?そろそろ、ティアークに戻ってこいよぉ〜〜!」

「あ…いや、僕はここで所帯を持っちゃったから…。」

「えっ…!」

 ヒラリーとデイブが嬉々として会話に参加してきた。

「おおっ…相手はもちろん、イェルメイドのダフネかっ⁉︎」

「ま…まぁ…」

「サムよ、今のうちにダフネとイチャイチャしとけよぉ…ガキができたら、女ってのはそっちの方が一番目になって、ダンナは二番目になるからのぉ…ほっほっほ。」

 サムはキグリとした。

「ほ…本当ですかぁ、それ…!」

 デイブは大家族を養っているので、デイブの言葉には真実味があった。ヒラリーが畳み掛けてきた。

「ぷぷぷ…聞いたよ、ダフネは妊娠してるんだってね、サムがお父さんかぁ〜〜…一年前は想像もしてなかったねぇ。」

「は…はぁ…」

 トムソンが大笑いして言った。

「そうかぁ〜〜…お祝いをせんといかんなぁ〜〜!結婚祝いと出産祝い、一緒でいいか?」

 するとそこに、白いローブを来た女が宿屋に入ってきた。

「私はイェルマの者です。セレスティシア様の歓迎会を催すこととなりましたので、ヒラリーさん、トムソンさん、デイブさん…謹んでイェルマに御招待いたします。」

 ヒラリーはからかい半分にトムソンに言った。

「おっ、トムソン…良かったなっ!」

「…何で?」

 女は魔道士でマーゴットの使いだった。彼女は自分が乗ってきた馬の他に三頭の馬を連れて来ていて、三人はその馬に乗ってイェルマを目指した。サムは別れ際に、「ダフネによろしく」と言って、手を振っていた。

 イェルマを初めて訪問するトムソンとデイブにとっては驚きの連続だった。峡谷に掛かるイェルマ橋、1.5kmも続くイェルマ回廊、そして城塞都市イェルマを象徴する巨大なイェルマ西城門…。

 四人が門をくぐると、イェルマ中広場でランサーが馬術訓練をしているのを見て、トムソンは周りをキョロキョロしながら言った。

「ここは…かなりの数の軍隊を持ってるんだな…。それにしても、女兵士がやけに多いな…。」

「ぷぷぷっ…トムソン、ここには女しかいないんだよ。」

「…ウソだろっ…‼︎」

 デイブは所帯持ちなのであまり関心がなかったが、トムソンは独身で三十代半ばなのだ。斜面を馬で登る道すがら、イェルメイドとすれ違うと、トムソンの目はそちらを追い、また、珍しい男の存在にイェルメイドもまたトムソンを目で追ってくるので…トムソンにしてみれば、「思わせぶり」のように感じた。

 女魔導士に先導されて、行き着いた場所は神官房だった。

 アナと八人の神官見習いがヒラリーたち三人を出迎えた。

「ヒラリーさんっ…!」

「アナァ〜〜ッ!」

 二人は抱き合って、再会を喜んだ。トムソンもアナを見て叫んだ。

「アナ〜〜…お前もここにいたのかぁ〜〜!…帰って来いよぉ〜〜‼︎」

「トムソンさん、お元気そうですね、相変わらず強引ですね。」

 三人をアナに引き渡すと、女魔道士は去っていった。アナは三人を神官房に招き入れ、それと同時に神官見習いのネルを戦士房に走らせた。

 厨房兼ダイニングで三人にお茶を振る舞いながら、アナは言った。

「歓迎会が始まるまで、ここで待機していてくださいね。時間になったら、魔導士が呼びにくる手筈になってます。」

 勘のいいヒラリーが言った。

「ふふふ…要するに、歓迎会が始まるまで、男どもはここに隔離ってことだね?」

「まぁ…そういう事です。」

 すると、男の声を聞きつけて二階からマックスが降りてきた。

「やぁ、こんにちわぁ〜〜。久しぶりに男の姿を見ましたよ。えっと…みなさんはどうして…どうやってイェルマに?」

 マックスの顔を見て、ヒラリーが叫んだ。

「おや、吟遊詩人のマックスじゃないか、お前、こんなところに…こんなところまで潜り込んでたのかぁっ!」

「あっ、ヒラリーさん?…ユニテ村ではお世話になりました。それにしても…その言い方酷いなぁ…まるで僕が野良猫みたいじゃないですかぁ…」

「はははは…似たようなもんだろうっ!」

 ヒラリーたちがイェルマにやって来た理由を、アナがマックスに詳しく説明した。

「ええええっ…今、セレスティシア様とエヴェレット様がイェルマに来ているんですかっ⁉︎…お会いしたいなぁ…!」

「でも、マックスさん、あなたは歓迎会に招待されてませんよ?」

「ううう…。」

「機会があれば、ヴィオレッタ…じゃなくて、セレスティシア様に神官房を訪ねて来るように言っておくから。」

「…お願いします。」


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