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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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四百二十二章 大脱出! その7

四百二十二章 大脱出! その7


 その日の夜、キャシィズカフェは夕食を食べに来たお客で大盛況だった。ビッキーの料理の腕は確かで、その上にビッキーが誰かさんの目を盗んで大サービスをするものだから…「キャシィズカフェのパンは美味い」とか「カエルの雑炊は絶品だ」とかの噂が広まって毎日のように忙しくしていた。

 中には宿屋や酒場でお酒を買って持ち込む客もいた。そんな客を見つけるとグレイスが爆発した。

「おいっ、そこのあんた…ここはお酒の持ち込みはお断りしてんだよっ!お酒を飲むなら宿屋か酒場に行っとくれっ‼︎」

「酒の肴が美味いから、ここに来てるんじゃないかぁ…!」

 そこに、こそこそっとキャシィがやって来て、その客に耳打ちした。

「ちょっとお高くなりますけど…デリバリーもしてますよ。宿屋に使いっぱしりの子供を置いときますので…これからもキャシィズカフェ、どうぞご贔屓に。」

 キャシィズカフェに顎鬚を蓄えた身なりの良い紳士風の客が入ってきた。

 偶然ではあるけれど、キャシィが応対した。

「いらっしゃぁ〜〜い…おっ、お久しぶりですねぇ。いつも朝ニでハーブティーを飲んでくれる…貿易商人の…何さんだっけ、名前聞いてないや。あひゃひゃひゃひゃ…」

 いつも朝イチは老夫婦だ。

「名前なんかいいよ…はぁ、疲れた。腹減った…ええと、ローストチキンのプレートを頼む、ご飯大盛りでな…ちっ、今日は踏んだり蹴ったりだったぁ…」

「何か、あったんですかぁ?」

「おっ、聞いてくれるか⁉︎…エステリックに品物を収めた帰り道で、馬車の車輪が外れたんだよ…。三時間掛けてやっと修理して走り出したら…後ろからたくさんの兵隊どもがもの凄い速さで追い抜いていきやがった。そのせいで馬が驚いちまって…また車輪が外れたんだよ。それでまた三時間…。」

「むむっ、それって東の街道?北の街道?」

「エステリックからの帰りだから、北の街道に決まってるじゃないか。」

 キャシィは客の応対をサシャに任せて、慌てて宿屋に走った。宿屋には…サムがいる。

 キャシィに呼ばれて、サムが宿屋の二階から降りてきた。

「キャシィ、こんな時間にどうしたんだい?」

「サムさん、聞いて聞いて…どう思う?」

 キャシィは貿易商人から聞いた話をサムに伝えた。

「…僕には判断できないなぁ…。でも、マーゴットさんは異変を感じたらどんな小さな事でも良いから『念話』して欲しいって言ってたから…『念話』してみようか。僕もたまにはマーゴットさんにちゃんと仕事をしてますってところを示しておかないといけなしね…。」


 サムからの「念話」を受けたマリアは、この事をすぐにマーゴットに伝えた。

 マーゴットはベロニカからの情報で、すぐに察した。ユグリウシアの姪であるヴィオレッタなる者がここイェルマに向かって逃走中で、その後を約600のティアークの兵隊が追いかけている…このタイミングで北の街道に兵隊、つまりエステリックから兵隊が出てこの辺りにいるということは…北の街道から東の街道に入ってヴィオレッタを挟み撃ちにするつもりだ。

 アンネリとジェニはイェルメイドだから絶対に見殺しにはできない。それに、ここで助け舟を出せば、ユグリウシアに大きな貸しを作ることができる…。

 マーゴットはマリアに言った。

「緊急の『四獣会議』を行う…すぐにボタン様、チェルシー、ライヤのもとに使いを出せっ!念のために…各房に非常呼集を掛けておけっ!それから…アナ殿にも随行してもらおう…‼︎」

 「四獣会議」で軍隊を派遣することが決定した。剣士房、戦士房、槍手房から各100名、武闘家房、射手房から各50名、魔導士房から30名…計430名の大部隊が編成された。

 夜九時頃、神官房に魔道士がやって来て、寝台の上で寝そべって本を読んでいたアナは叩き起こされた。

(私が呼ばれるってことは…また、血生臭い事が起こるってことね…。)

 イェルマの軍隊は二時間後には編成を終えてイェルマの西城門を出て東の街道を南下した。

 一時間ほどして…イェルメイドたちはエステリック王国騎士兵団に追いつき、戦端を開いた。


 イェルマ橋駐屯地の「夜番」へのデリバリーを終わらせて、キャシィが駆け込みカルテットと共に後片付けをしていると、お店の外でけたたましい馬の蹄の音を聞いた。

「おやおや?」

 キャシィがコッペリ村の大通りまで出てみると、イェルメイドの軍勢がちょうどコッペリ村を出ていくところだった。

 キャシィは思った。

(わあぁ…もしかして、サムさんの「念話」…大事おおごとになってない⁉︎)


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