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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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四百十五章 大脱出! その1

四百十五章 大脱出! その1


 騎士兵たちは明らかに躊躇していた。自分たちの目の前にいるオリヴィアを王妃陛下だと思っているからだ。

「王妃陛下…どうぞ、お鎮まりください。さもなければ…我々は実力行使をせねばなりません…。」

「実力行使…してみなさいよぉ〜〜っ!」

 オリヴィアは右足を一歩強く踏み込んだ。

ズドオォ〜〜ンッ!

 オリヴィアの「大震脚」が炸裂し、近接していた数人の騎士兵が直撃を食らって昏倒した。金属鎧を装備していると体の柔軟性が失われてしまうので、金属鎧の兵士には「震脚」系スキルの効果は絶大だった。

 オリヴィアの後方にいたレイモンドとダスティンは、踵から脳天へと激震が走り脳震盪を起こしかけた。

「うおっ…何だ、今のは…⁉︎あの女のスキルか?」

 アンネリが叫んだ。

「オリヴィアさんの近くで戦闘しちゃだめっ!巻き添い食うよっ‼︎」

 アンネリがふと周りを見渡すと…すでに巻き添えを食った者がいた。黒いモヤがベタァ〜〜っと地面に横たわっていた。アンネリが駆け寄っていって、モヤを払いティモシーの頬を叩いた。

パンッパンッパン…

「おいっ、ティモシー!しっかりしろっ‼︎」

「う…ううぅ〜〜ん…」

 レイモンドとダスティンは戦慄した。

(…ティモシーがやられたっ…人妻、怖えぇ〜〜っ…!)

 オリヴィアは槍をブンブン振り回して、騎士兵を追い散らした。すると、王宮前の大通りを四頭の馬を連れた二頭曳きの小さめのワゴン馬車が乗り付けてきた。

「お待たせぇ〜〜っ!」

 そう叫んだのは馬車の御者台に座っていたジェニだった。

 馬車の到着を確認して、ヴィオレッタは馬車から馬車へ乗り換えた。その時、大きな蜘蛛が肩掛け鞄を引き摺りながらやって来て…ヴィオレッタの背中にしがみついた。

ズシッ…

 ヴィオレッタは以前にも増して…重みを感じた。メグミちゃんとは約一ヶ月ぶりの再会である…。

(メグミちゃん…何を食べてたの…?)

(ネズミィ…スズメェ…ハトォ〜〜…)

 メグミちゃん、またひと回り大きくなったかも…とヴィオレッタは思った。

 馬車にはエヴェレットが乗っていた。

「セレスティシア様ぁ…よくご無事で…!」

「エヴェレットさん、お手数をお掛けしました…」

「本当に…たくさんの人に迷惑をかけて…あなたと言う人は…」

「あああ…お叱りは後でたっぷり聞きますので…今は急いでいますので…!」

 馬車が曵いてきた馬にレイモンド、ダスティン、そして意識を取り戻したティモシーが跨った。アンネリはジェニの隣の御者台に飛び乗った。

 それを見たまだ健在な騎士兵たちはその馬車を止めようとして、大挙して詰め寄ってきた。そうはさせまいと、オリヴィアは槍で騎士兵を攻撃した。砂蟲の歯で作った槍先を振るうと、騎士兵の盾や金属鎧はパカッと綺麗に割れた。騎士兵たちは恐れ慄いて近づかなくなった。

(怖ええぇ〜〜…人妻、ハンパねぇ〜〜っ…!)

 騎士兵を散らしたオリヴィアは、自分も馬に跨ってみんなして城門前から走り去った。

 ヴィオレッタが乗った馬車は御者二人を含めて四人乗りの二頭曳きのワゴン馬車だった。本体を軽量化することでスピードが出る仕様の馬車だ。

 アンネリは馬を操るジェニに言った。

「ジェニ、大丈夫かい?」

「な…なんとか…えっと、突き当たりを左に曲がったらそのまままっすぐね⁉︎」

「うんっ!」

 ヴィオレッタのワゴン馬車を追って、オリヴィアたちの馬も疾走した。

 しばらく走ると、ティアーク城下町の南門が見えてきた。ここで、今まで馬車の後ろを走っていたオリヴィアたちの馬が馬車を追い抜いて前に出た。

 オリヴィアたちの馬を見つけた門番が大声で叫んだ。

「おぉ〜〜い、止まれぇ〜〜っ!」

 馬が停まってオリヴィアが降りて来ると、門番はドレス姿のオリヴィアを見て貴族だと思った。

「あっ…失礼ですが…どちらの貴族…」

 門番が言い切るのを待たずに…オリヴィアはその門番の横っ面を右拳でぶん殴った。門番はその場に崩れ落ちた。

 ティモシー、レイモンド、ダスティンも馬から降りてきて…あっという間に南門を制圧した。そして…ヴィオレッタの馬車は、オリヴィアたち四人が乗っていた馬を拾って、そのまま南門を通過していった。

 オリヴィアは南門のど真ん中に立って、他の三人と共に息巻いた。

「いいことぉ〜〜⁉︎…ここはわたしたちが死守するわよぉ〜〜っ!兵隊さんは、人っ子ひとり、猫一匹…絶対に通さないわよぉ〜〜っ‼︎」

「おおうっ!」


 騎士兵団の伝令が報告を入れてきた。

「宰相殿、正面城門が使えなくなりました!」

「…やりおったな…。騎士兵一個大隊を西城門から出せ。そして、ラクスマンへ至る街道を封鎖するのじゃっ!」 

 西側城門は、南の正面城門の半分くらいの大きさの小さな城門だ。西側にあるため、門を出てまっすぐ進めばラクスマンに繋がる西の街道に出る。

「宰相殿、ラクスマンの軍務尚書殿から軍鳩が参りましたっ!現在、リーンの兵隊約1000が国境付近に集結しつつあるとのことですっ!」

「やはりな…!奴らはリーンに向かう腹じゃ、こちらからも軍鳩を飛ばせ…背後の敵に注意されたし…となっ!」

 しばらくして、再び騎士兵団の伝令が報告を入れてきた。

「宰相殿、ヴィオレッタの馬車は城門前通りから東の街道に進んでいった模様っ!」

「な…何じゃとっ、奴らはリーンを目指していたのではないのか…?どこに向かっておるのだ⁉︎…とにかく、すぐに西の街道を封鎖しておる騎士兵を移動させて追わせろ、それから、もう一個大体も東城門から出して追わせるのじゃっ!」


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