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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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三百八十章 訳ありの行商人

三百八十章 訳ありの行商人


 グラントが小さな馬車に乗って、ティアーク城下町の南門にお昼前に到着した。南門は、普段は人通りが少ないのだが…この日は行列を作っていた。

 グラントは馬車を降りて、行列を作る人々の噂話に耳を傾けた。

「急に検問が厳しくなったらしい…何か、王宮であったのかな?」

 そんな会話が聞こえてきた。グラントはラクスマン王国発行の偽の行商人の身分証を持っている。グラントは顔には出さないが…内心ドキドキしていた。

 それでも、夕方の閉門ギリギリに南門を通過することができた。そして、ヴィオレッタの指示通り、冒険者ギルド会館へとやって来た。

 ラクスマンのレイモンド、エステリックのダスティンと回り、ティアークが最終地点…ここでヴィオレッタとガレルを拾ってリーンに帰る予定だった。

 グラントは、とりあえず一階ホールのカウンターバーで大ジョッキのビールを注文し、それを半分ほど飲んでひと息ついた。そして、ギルド会館のホールを見回した。

(…いる訳ないか。みんな偽名を使っているだろうし、受付けで聞いてもわからないだろうなぁ…。まぁ、いいや、急ぐ旅でもないし…待つだけ、待つだけ。)

 すると、二階から数人の冒険者たちが降りてきた。それは、ヴィオレッタ救出チーム…ヒラリー、デイブ、トムソン、ベロニカたちだった。今までヴィオレッタ救出の定例ミーティングをしていたのだ。ホーキンズとユーレンベルグ男爵はギルマスの部屋でまだ話をしている。

 ヒラリーがベロニカに言った。

「なんか、警戒が厳重になったらしいぞ。最近、男爵が王宮を日参してくれてるんだけど…なかなか会えないらしい。近衛団長のパトリックさんがヴィオレッタの護衛に付いてくれたのは朗報だな。…安心は安心だけど、悪いけどベロニカ…例のヤツ、頼まれてくんない?」

「いいよぉ〜〜。」

「…ヴィオレッタからも…こっちに飛ばせたら良いんだけどなぁ。」

「色々とねぇ…必要条件があるのよぉ…。」

 グラントはビールをカウンターに置いて…ヒラリーの方に歩いていった。

「あの、もしもし…今、『ヴィオレッタ』とか言いました?」

「…ん?見ない顔だね…あんた、誰?」

「ええと…単なる行商人でして…知り合いの名前が出たもんで…」

「単なる行商人だとぉ〜〜?普通の行商人は、『単なる』…とか、絶対に言わない。お前…『訳あり』の行商人だろう…怪しい。」

 ベロニカが不気味な笑みを浮かべて…言った。

「…吊そうぜぇ〜〜。」

「や…やめてくださいっ!」

 ヒラリーがグラントの胸ぐらを掴んで凄んだ。

「お前…ヴィオレッタの何を知ってる?知り合い…っていう証拠を見せてみろ。」

「ええと、ええと…銀色の髪で…青い目をしてて…」

「バカヤロオォ〜〜ッ!そのくらい、誰でも知ってるんだよぉ〜〜っ‼︎」

「…俺はただ、ヴィオレッタ様にここに来いって言われただけで…」

「…ヴィオレッタ『様』…だって?」

「…あ?」

「お前…ティモシーとかエビータとか…そんな名前に心当たりはあるかっ⁉︎」

 グラントの目はぐるぐると回り、口角は引き攣っていた。

「お前もヴィオレッタのしもべだな?…そうなら、本当の事を言ってくれっ!今、ヴィオレッタが危ないんだよっ‼︎」

「えっ…ヴィオレッタ様が危ない⁉︎…一体、何があったんですかっ?」

 ベロニカはその会話を聞いていて、ちょっと思った。

(ヴィオレッタのしもべの中で…こいつが一番雑魚だな…。)


 グラントを交えて…再びミーティングとなった。状況説明を受けたグラントは飛び上がるほどに驚いた。

「えええっ…ヤバいじゃないですかっ!…何とかならないんですかっ?」

 ヒラリーが言った。

「それはこっちのセリフだよ…あんたが来たから、何か状況に変化が生まれると期待したのにさぁ〜〜…。」

 ベロニカは思った。

(雑魚だ…やっぱり、雑魚だ。)

 ホーキンズが言った。

「グラント君、君はここに何しに来たんだ…君の役割は?」

「んと…ラクスマンとエステリックで仲間と会って、ここでヴィオレッタ様と落ち合う予定でした…。」

 ヒラリーが激高して言った。

「ラクスマンとエステリックに仲間がいるのかっ?連れて来いよぉ〜〜っ‼︎」

「あっ…そうか!」

 グラントはその日は極楽亭に泊まり、城下町の門が開くと同時に馬車で出発した。

 レイモンドとダスティンをティアーク城下町まで連れてくるのに五日の時間を費やした。


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