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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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三百七十六章 エビータの王宮参り その2

三百七十六章 エビータの王宮参り その2


 「風鈴」が飛来物を感知した。パトリックはそれを冷静にシールドで受けた。

カンッ…。

 飛来物はシールドに衝突すると…黒い煙となって消えていった。

(…ん、魔法の類か…?)

 パトリックは動かなかった。多分、賊は斥候で…「シャドウハイド」で闇のどこかに潜んでいる。こちらの技量を計っているのか、それとも誘っておいて扉の前から離したいのか…?

 すると…二人の女が暗闇から突然出現し、廊下の左と右からパトリックを挟んでゆっくりと間合いを詰めてきた。女は町女が着ているような普通の麻のワンピースを着ているように見えた。

(まさか「鐘楼の幽霊」ではあるまい…「デコイ」だな。両手にナイフとは…左右対称でどちらが本物が分からんな…。)

 パトリックは右側の女に、深度3の剣士スキル「遠当て:兜割り」を放ちつつ、反対側の女に「疾風改」で肉迫した。「遠当て:兜割り」は女をすり抜けて行って…「疾風改」からの袈裟の一撃が交差したナイフと壮絶に激突した。

ガキイィィンッ…!

(こちらが本物か…しかし、私のロングソードの一撃をナイフで受け切るとは…!)

 パトリックはすぐにラージシールドに肩口を当て全体重を乗せて、そのまま賊に体当たりした。シールドアタックだ。賊は後方に吹っ飛んだが、すぐに体勢を立て直した。

 パトリックは動きを停止して…扉の前に戻っていった。賊を倒す事よりも、ヴィオレッタを守る事を優先しているのである。

(もし…今一度、間合いを詰めて来るようであれば…次は仕留める…!)

 賊は二本のナイフを前に構えて、ゆっくりと近づいて来た。

(私の技量を見て、なおも来るか…!よほど、自分の腕に自信があるようだ…)

 今度はパトリックが仕掛けた。深度2の「研刃」を発動させると、賊めがけて「遠当て:兜割り」を放つと同時に「疾風改」で斬り掛かった。賊はスキルを発動させて「遠当て:兜割り」をひらりと避け、さらにはパトリックの「疾風改」からの一撃をも回避した。

(…何ぃっ、この連携技を回避するとは…「セカンドラッシュ」か⁉︎)

 パトリックはラージシールドの陰に身を潜めた…その瞬間、二秒に亘る賊の猛攻が始まった。

カカカカカカカンッ!

 パトリックは賊の「セカンドラッシュ」をシールドで受け切ると…一旦、賊から距離を取り、「紫電」を発動させた。高速で賊の左側に移動し、そこからすぐに右に折れて…賊の後ろをとった。そして、そこから振り向きざまの渾身の横薙ぎを…躱された。

(何という反射神経…こいつ、人間か⁉︎)

 お互いに手の内を晒して、なす術なしと分かって…二人はジリジリと再び間合いを詰めていった。次は乱打戦…本当の死闘になる…。

 その時、王妃の部屋の扉が静かに開いて…ヴィオレッタがひょっこり顔を出した。ヴィオレッタは剣撃の音で目を覚ましたのだ。

 パトリックは叫んだ。

「ヴィオレッタさん…賊だ、部屋に戻りなさいっ!」

「…ん⁉︎」

 すぐにヴィオレッタが頭を引っ込めようとすると…

「ヴィオレッタ様っ…私です、エビータですっ‼︎」

「えっ…エビータ?」

 エビータは二本のナイフを床に置き、片膝を突いてヴィオレッタに拝礼した。

 その様子を見ていたパトリックは状況が飲み込めなかった。

「ヴィオレッタさん、この賊と…知り合いですか?」

「この者は賊ではありません…私のしもべです…。」

「…何と…それは誠ですか⁉︎…しかし、この者はかなりの手練れ…刺客と見受けられるが…?」

 すると、エビータが言った。

「私はヴィオレッタ様の臣下…護衛役です。もし、それを疑うのでしたら…今、この場で私の首を跳ねてもらって結構です…。」

 確かに…この者はナイフを床に置いて首を晒してうなだれている。パトリックは、一応納得し、ロングソードを鞘に納めた。

「エビータ…よくぞここまで、やって来てくれましたねぇ…。」

「ヴィオレッタ様が拉致されたのは私の責任でございます。いても立ってもいられず…ヴィオレッタ様をお救い致したく、こうしてまかり越しました…。」

「…ありがとう。」

 パトリックは困惑した。このような鬼気迫る凄腕の斥候を飼っているヴィオレッタは…本当に奴隷なのか?もしかすると、それ相応のどこかの貴族…もしくは国主では…⁉︎


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