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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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二十八章 ガルディン公爵

二十八章 ガルディン公爵


 ティアーク王国城謁見の間は30m四方の大広間で、大理石の床とティアーク王国の紋章であるグリフォンの旗幟が掲げられている六本の支柱、そして紋章をあしらった分厚いカーペットが王族の鎮座する五段階段の高台まで続いていた。

「陛下、王妃陛下、皇太子殿下。本日もご機嫌麗しゅう。」

 三人の王族は参議諸侯の朝の挨拶を受けていた。高台の中央には国王のビヨルム=ティアーク、右には王妃のエヴァンジェリン=ローレシアス、そして左には長男でまだ八歳のウィルヘルム=ティアーク皇太子が重厚な黒檀の椅子に座っていた。

 朝の挨拶が終わると、エヴァンジェリン王妃は参議諸侯に軽く会釈をして、船を漕いで今にも寝落ちしそうなウィルヘルムを王妃付きのメイドに抱かせて謁見の間を退室した。

「それでは、御前会議を始める。」

 レイデン=ガルディン公爵の進行で定例の朝議が始まった。ガルディン公爵は前国王の実弟である。現国王の実の伯父に当たり、「太公」とも呼ばれる。兄の長男、ビヨルムが皇太子に指名された折、ガルディン家に養子に出されたため苗字が違う。王族の血族ゆえ公爵位を得た。

 現在、宰相の地位にあり、御前会議の取りまとめ役兼国王の相談役である。

「奏上された議題はひとつである。ロットマイヤー伯爵邸襲撃事件について…辛くも難を逃れたロットマイヤー伯爵本人が直々に陛下に陳情したきことがあるとか。ここに呼んでおります…ロットマイヤー伯爵、前へ。」

 ロットマイヤーは参議ではないので本来ならばこの会議に出席することはできない。出席できるのは、宰相、文務尚書、法務尚書、軍務尚書、商務尚書、財務尚書だけである。

 頭に包帯を巻いたロットマイヤー伯爵が歩み出た。

「陛下、本日もご機嫌…」

「それはもうよい。此度は難儀であったな。大した怪我ではないと聞いている。思うところを話せ。」

「はい…我が伯爵家へ盗賊が押し入り、召使い十人が惨殺されました…。」

「それは酷い!」

 参議達がざわついた。

「このように…昨今は王国の治安が乱れ、わたくしは国民の平穏な生活を憂いております…。」

「うむ、そなたの心遣い、国民に代わって感謝する。」

「是非とも、早急に賊を捕らえ厳罰に処し、国王陛下の威厳と御威光をお示しください。」

「法務尚書、どうなっておる?」

 法務尚書が歩み出た。

「目下のところ、憲兵隊が総力を挙げて賊を捜索しております。」

 ガルディン太公が苦言を呈した。

「生ぬるいな。懸賞金をつけて手配書を作成し配布せよ。」

「はっ!」

 ガルディン公爵は高台の国王に向き直り意見を述べた。

「陛下、賊は…冒険者とのことです。」

「何⁉︎そうなのか?…前の園遊会でユーレンベルグ男爵と話をしたが、冒険者は我々の手の届かぬ民間の問題を解決する『王国の潤滑油』と評しておった。なくてはならぬ存在だとも。現に今、王国領に侵入したオーク共を討伐しておるそうではないか?義士好漢の集まりだと思っていたのだがなぁ…。」

「陛下、義士とは言っても所詮は平民、切羽詰まれば盗賊と同じ。我々貴族と違って、国への忠誠心や節制など横に置いてしまう連中なのでございます。裏では何をやっていることやら…。」

「で、どうするのだ?」

「もし、今回の事件に冒険者が関わっておるなら、襲撃者は無論として…調子に乗っておる冒険者達にも多少の灸を据える必要はあると。」

「どうしたら良いだろう?」

「このガルディンにお任せを…。」

「…任せる。」

「御意。」


 朝議が終わり、ガルディン公爵が謁見の間を退出すると、ロットマイヤー伯爵もそれに続いた。二人は廊下を歩きながら小声で会話をした。

「バカ者め、ひとりの女をほんの五日も足止めできんのか。」

「申し訳ございません…。」

「まぁ、よい。この儂が必ず探し出してやる。」

「よろしくお願い致します…。」

「それにしても…そんなに似ておるのか?」

「それはもうっ、そっくりでございます!初めてあの女を…オリヴィアを見た時、わたくしも我と我が目を疑った程でございます‼︎この世には自分とそっくりな者が…」

「講釈を垂れるなっ!」

「申し訳ございません…太公閣下のコレクションに是非お加えください。それだけの価値がある女でございますよ。」

「…そんなにか!期待して良いだろうな⁉︎」

「勿論でございます!」

 ガルディン公爵は好色家だった。幾人もの女奴隷を囲った別邸は巷では「色魔殿」と呼ばれ、毎夜、言葉にできないような淫らな行為が行われているとのもっぱらの噂だった。そして時折、夜更けに女奴隷の死体が運び出されるとも…。

 公爵は宰相という立場を利用して国政を我が物にし、ありとあらゆる甘い汁を吸っていた。それによって築いた莫大な財産に、おこぼれを頂戴しようと堕落した貴族や商人達が蟻のように群がっていた。

(…義姪にそっくりな女か。早く会ってみたいものだ。)

 義理の姪…エヴァンジェリン王妃のことである。


丸ごとぼやき その3


 オリヴィアの職種は武術家。最初は「モンク」にしようかと思いました。いくつかのRPG系ゲームやアニメで素手で闘う職業をモンクと呼称していたからです。英語でmonk、辞書で調べると修道士とか修行僧とか出てくる。修道士?

 多分、こういうことです。英語圏の人が徒手格闘家に少林寺の拳法家のイメージを重ねて近い言葉を探した。それで少林寺の拳法家も、「仏教の修行僧」だから「モンク」だと、違うかな?

 英語圏の国で本物のモンクと喧嘩したら、めちゃ弱いんじゃないかな。今なら、武術は「マーシャルアーツ martial arts」だから、「マーシャルアーティスト」かな?

 話は90度変わります。「修道士」で思い出すのは「薔薇の名前」という映画。ショーンコネリー主演で、とある修道院で起きた不可解な殺人事件を解決するミステリー?映画です。雰囲気が「犬神家の一族」みたいで面白いです。名作だと思います。

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