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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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二百六十二章 結婚式 その1

二百六十二章 結婚式 その1


 その日の朝、射手房のジェニとサリーは護衛の仕事をすべく、コッペリ村へと出発しようとしていた。

 すると、房主のジェシカが言った。

「弓はいらないよ、置いていきなさい。中央通りまで降りたら馬車が待っているから、それに乗りなさい。」

「ええ…房主様、護衛の仕事で弓が要らないなんて…どういうことですかぁ?」

 食いついてきたサリーをジェシカは笑顔で、右の手のひらでシッシッと払うような仕草をした。サリーは訳が分からないという顔で、ジェニと一緒に「北の二段目」のうっすらと雪が積もった道を降りていった。

 サリーは言った。

「四日前に『北の三段目』に空飛ぶ怪物が出たでしょう?今回の護衛の仕事はそれに関係していると思ったんだけど…アーチャーの私たちに弓の必要がない護衛の仕事させるって、変な話ですよね…絶対変ですよね。」

「うう〜〜ん…サリーに判らない事は私にも判らないわ…。」

 中央通りまで降りると、大きな馬車が待っていた。馬車の御者台にはアンネリが座っていて、馬を操っていた。

「あ、アンネリ!…アンネリもエルフの村から帰ってきてたんだ。」

「うん、早く乗って乗って。いっぱい人を拾わないといけないから、すぐ出発するよ。」

「もしかして、アンネリもコッペリ村の護衛の仕事…?」

 アンネリはニタっと笑って言った。

「あはっ、ジェニたちは知らされてないんだ⁉︎」

「…へ?」

 アンネリの操る馬車は出発して、イェルマ渓谷の中央通りを軽快に走っていった。

 しばらく走って馬車が停まると、なんとそこには戦士房の房主ライヤと武闘家房の房主ジル、そして「オリヴィア愚連隊」のリューズ、ドーラ、ベラが待っていた。

 五人がドカドカと馬車に乗り込んで来たので、サリーはびっくりした。ジェニは「オリヴィア愚連隊」とは会ったことがあるが、ライヤとジルとは初対面で…サリーに小声で「誰?」と尋ねた。しかしサリーはそれを無視して…

「ひぃ…ライヤ房主、ジル房主…えと…今日はお日柄も良く…」

 ライヤが言った。

「うむ…確かに今日は結婚式日和だな。」

「…今日は…みなさん、どちらへ…?」

「結婚式だよ。」

「結婚式…はぁぁ…そうですか。」

 馬車はしばらく走って再び停まり、今度は神官房のアナとメイ、それとマックスを乗せた。

 驚いたジェニは叫んだ。

「ああぁ〜〜、アナスタシアァ〜〜…!」

「ジェニファー、お久しぶりね、元気だったぁ⁉︎…同じイェルマにいても、こんな事でもないと、なかなか会えないわねぇ〜〜。」

「…こんな事って…?」


 キャシズカフェは人だかりだった。結婚式の噂を聞きつけた村人たちが集まってきて…新郎新婦を祝福したいという人が半分、お酒や料理の振る舞いを期待している人が半分だ。

 キャシィズカフェの二階のグレイスの部屋では、セドリックに褒められたピンクのシルクのドレスの着付けを済ませたオリヴィアが有頂天ではしゃぎ回っていた。そしてダフネは白いシルクのドレスの着付けをグレイスに手伝ってもらっていた。

 オリヴィアとダフネは前の晩に前乗りしていた。魚璽を持っていないオリヴィアも「護衛」という表向きの理由でイェルマから出ることを許されていた。

 オーレリィは幼子のジェイムズとオリバー、そしてグレイスの養い子のジョフリーを夫のダンに預けて結婚式に参加していた。

 落ち着きのないオリヴィアをオーレリィは叱った。

「こらっ、はしゃぐんじゃないっ!ダフネがまだ終わってないだろ?」

「うひゃひゃひゃひゃぁ…ごみんっ!」

「ホント…気持ちの悪い子だねぇ…。」

 すると、グレイスの部屋にグレイスの養い子のパティとカリンがやって来て、着付けが終わった二人のドレスの裾を持ち上げた。

「それじゃぁ、オリヴィア、ダフネ…行くよ!」

 二人が一階に降りると、オリヴィアの育ての親であるオーレリィがオリヴィアの手を引き、戦士房の房主のライヤが親代わりとなってダフネの手を引いた。

 その様子をキャシィズカフェのダイニングで見ていたアナとメイは、二人の晴れ姿に感嘆の声を上げた。

「わっ、メイ、見て見て!花嫁さん綺麗ねぇ〜〜、あれはシルクのドレスよ‼︎…ユニテ村でゲットしたヤツだわ。」

 メイの感想は少し違っていた。

「…花嫁さん、凄く嬉しそう…それで、凄く幸せそう…!」

 二人はオーレリィとライヤに引かれて、しずしずと会場となる養蚕小屋へと歩いて行き…キャシィズカフェから養蚕小屋へ移動する花嫁を見ようと集まっていた観客が盛大に囃し立てた。オリヴィアは観客に手を振りながら…ダフネははにかみながら…養蚕小屋に入っていった。

 それをダイニングで見届けたキャシィは雇い入れた村の女たちに大号令を発した。

「はいっ、それではみなさん、お料理作りを開始してくださぁ〜〜いっ!」

 女たちは、昨日引き取って解体したヤギの肉を焼き、ブタのミンチの腸詰を茹で始めた。そして、腹に香味野菜を詰めた鶏丸ごと一羽を石窯オーブンに突っ込んだ。

 養蚕小屋の中には壁際に二つの長テーブルが置いてあって、招待客がずらりと座っていた。ダフネとサムの招待客はアンネリ、ジェニ、サリー…オリヴィアとセドリックの招待客はジル、リューズ、ドーラ、ベラ…。

 オーレリィとライヤが招待客の席に着くと、小屋の入り口からサムとセドリックが入ってきた。


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