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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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二百四十四章 ゴブリン襲来

 今朝は早起きして病院に行ったのでとても眠いです。

 なので、ちょっと早いですが…「投稿」します。…ポチッとな。

二百四十四章 ゴブリン襲来


 雪が降ったその日、魔道士房の情報担当のマリアはエルフのユグリウシアからの「念話」でゴブリンの襲来を知った。

 マリアはすぐに「念話」でその旨をマーゴットに報告すると、マーゴットは魔道士たちを各方面に走らせ、「四獣会議」を招集した。

 「北の五段目」の「鳳凰宮」の最上階の一室に、赤鳳元帥のボタン、白虎将軍のライヤ、蒼龍将軍のマーゴット、黒亀大臣のチェルシーが集まって対ゴブリン、対トロルの議論が交わされた。

 ボタンが切り出した。

「今年もまたゴブリンが来た訳だが…今回はトロルが目撃された。第一発見者のエルフの話だと、トロルはゴブリンと行動を共にしているらしい…」

 経済活動以外には予備知識を持たないチェルシーが言った。

「そもそも、トロルのような巨大で凶暴な怪物がゴブリンの仲間になるなんてことがあるのか…?」

 マーゴットが自分の専門分野だと判断して、蘊蓄うんちくを垂れ始めた。

「…では、チェルシーのためにトロルについていちから説明しましょう…


 トロルは「妖精」に分類される。「妖精」は、ほんのわずかの有機物…例えば、草花の花粉や腐敗した葉、生き物の死骸などに自然系の四精霊と大気中の魔力が融合して生まれる。この意味では、「妖精は木の股の間から生まれる」というのは、あながち嘘ではない。

 しかし、妖精の誕生は容易なことではない。有機物と自然系四精霊はどこにでも存在するが、大気中の魔力というのは微々たるもので、通常では融合しても、妖精を形成するまでに至らない。

 だが、世界には大気中の魔力が濃い場所がある。世界創生以来の大規模な地殻変動でも環境が変わらなかった場所…太古の原生林、ドラゴンの棲家、神の祠などだ。そこでは、大気中の濃い魔力が長年の間に有機物に蓄積して、妖精の誕生を助長している。

 風の精霊シルフィと融合した妖精は多くの場合は「フェアリー」の形をとる。わずかな有機物を依代よりしろとしているので、基本的に妖精は小さいのが普通だ。蝶の鱗粉や死骸から生まれたフェアリーは蝶の形を、花粉から生まれたフェアリーは花の形をとるようだ。

 地の精霊ノームと融合した妖精は「ノッカー」となるし、火の精霊サラマンダーと融合した妖精は「ウィルオウィプス」、水の精霊ウンディーネと融合した妖精は「ミズホタル」となる。

 妖精は外界や環境の影響を受けやすい。フェアリーを例にとってみると、フェアリーの自我は非常に脆弱なので、自分の持っている有機物の記憶を模倣して必要もないのに花の蜜や花粉を食したりする。フェアリーの仲間同士でいるうちは何も起こらず未来永劫、フェアリーのままである。

 だが、身近に他の動物がいてその動物が敵ではないと分かると、その動物を「仲間」と認識してその行動や思考を模倣するようになり、形もその動物に近いものになっていく。逆に、「敵」と認識すると、姿を隠したり「悪戯」を仕掛けたりする。環境で「性向」が「善」になったり「悪」になったりするのである。性向が極端に悪に傾いたフェアリーは時に「変質」し、「ピクシー」へと姿を変えることもある。

 その逆パターンで、こんな逸話もある。あるフェアリーが人間と仲良くなった。フェアリーはその人間から大変可愛がられて、「ティタニア」という名前までもらった。長年の間にティタニアは人間から知恵と知識を学び、数百年後には変質して…「フェアリークィーン」となった。

 フェアリー以外にも、人間の生活圏に住む地属性の「ノッカー」は、性向が善である「ブラウニー」などに変質して人間に対して非常に友好的だったり、人間にいじめられて性向が悪になると「レッドキャップ」や「インプ」などに変質して…人間に対して非常に残虐になる。

 トロルも分類上は「妖精」である。前段階では小さな妖精だったのだ。しかし、環境からの影響…何かのきっかけで、有機物を大量に体内に取り込むようになり、「変質」して巨大な体を持つトロルとなったと推測される。

 トロルもまた、環境に影響されて性向が善になったり悪になったりするので、人間を仲間としたトロルは人間に対して友好的だし、逆にゴブリンやオークを仲間としたトロルは人間を襲う。

 トロルは有機物…肉の塊だが基本は妖精なので、脳や心臓といった弱点となる器官や臓器が存在しない。なので、結果的に物理攻撃が効きにくい。首を切り落としたとしても…体の一部を削ぎ落としたというだけで致命傷にはならない。


 …これはあくまでも、魔道士の賢者、魔法学者の見解じゃ。本当のところは判らん。…で、じゃ。何をどう間違えたのか、このトロルはゴブリンを仲間と思っているらしい…チェルシー、判ったかえ?」

「…さっぱり判らん。」

 ライヤが提案した。

「とりあえず、去年と同様にゴブリンが出現しそうな場所に、斥候隊を出しましょう…それで、トロルの出現を確認したら、一点集中で…。」

 ボタンはライアの案を了承した。

「よし、それで行こう。みんな、よろしく頼む。」

 イェルメイドにとって、オークやゴブリンはさほど問題にはならない。しかし、的確な布陣を敷くことで効率よく処理することができる。イェルメイドは組織…軍隊なのだから。

 マーゴットは斥候二名と魔道士一名をひとつのユニットとし、「北の五段目」から1000mほど登ったエルフの里の少し上の十箇所に派遣して、ゴブリンの動向を探る定点観測を始めることにした。

 イェルマ渓谷は、一万m級の山脈に挟まれている。頂上付近は低気圧と低酸素と万年雪でモンスターといえども生息は困難…その上に、山の護り神のドラゴンと遭遇してしまう危険もある。なので、東世界から山を越えて西世界に侵入することはほぼ不可能なのだ。

 ゴブリンは山脈の中腹に沿って移動してくるしかなく、山頂から降りてくることは絶対にあり得ない。マーゴットはゴブリンの生息限界高度を意識して山脈西側に集中して観測点を設けるつもりだ。

 山脈東側にゴブリンやオークのコロニーはない。また、生産部がある「南の斜面」側の山脈にも多数のオークやゴブリンのコロニーは存在するが、それはずっとはるか南にあって…そう、「シーグアの洞窟」や牛の畜産で成功した「ステメント村」の辺りに集中しているので…全く心配はなかった。


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